- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
クラシックでモダン、そしてリリカル。
2009/05/10 03:09
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
幻想とかホラーとか苦手で、夢野久作の名前だけは知っていたのですが
江戸川乱歩とか横溝正史とかと一緒で、おどろおどろしくて
読む気にはなれなかったのです。
きっかけは桜庭一樹が角川文庫でお奨めしていたから。
おそるおそるページをめくりましたが
予想ほどにはグロくなかったです。
むしろ繊細な女性の心理がよく描けていると思いました。
ストーリーは三話のオムニバス形式です。
一話ごとの関連性はありません。
特に面白かったのは一番はじめの「何んでもない」でした。
姫草ユリ子というなんともいえない名前の女性が
じぶんでつくりあげた虚構に苦悩する話です。
ひとつの嘘を守るためにどんどんハリボテの嘘を重ねてしまい
嘘で固めた城が、どんどん彼女を追い込んでいく。
読み出したら止まらない、ちょっと癖になる文体。
「ドンナ」「アンナ」など奇妙なカタカナ使いも新鮮。
とりあえず一番最初の夢野作品なら断然これが読みやすいです。
先日ついに「ドグラマグラ」に手を出しました。
村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」みたいな中毒性があります。
濃厚な小説世界は他の追随を許しません。
ただ個性的なぶん、読み手を選ぶというか好き嫌いははっきり分かれそう。
確実に言えることは昭和初期に書かれたものなのに
いま読んでも新しさを見つけることができるということです。
紙の本
耳元で囁かれる独り言
2009/12/27 18:23
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:鯖カレー - この投稿者のレビュー一覧を見る
独白体と、書簡体。
夢野久作の作風として主にあげられるものだ。
それは、読者に語りかけるようであり、また独り言をぶつぶつとしゃべっているようでもある。
しかし、いずれも読者にごく近い距離で語りかけており、
読者は無意識に話の世界に誘われる。
「少女地獄」は女性に関する手紙を読む、
書簡体の文書であるが、やはり上記のような効果が読者に与えられる。
そして、そこから迫る人間の暗い部分……
狂気と呼ぶ場合もあるかもしれないが、そう言うものが迫りくるように感じられる。
「少女地獄」の話のうち、「何でもない」は書簡体という誰かの手を通して読者に伝えられる話として存在しており、話のテーマである「嘘」というものが、この話の本質的な所にも存在しているのではないかというウロボロスのような考えが頭をよぎった。
以上の話以外にも書簡体という事が巧みに使われ、
「書簡体による効果」以外に、ストーリー上のトリックとしてもその本領を発揮している。
耳元で囁かれる独り言は、時に戦慄を感じさせるが、
まさにこの本を読んでいると、そんな気分にさせられる。
紙の本
静かな恐怖
2023/03/30 05:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SH2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
女性の持つ底知れぬ力を感じるとともにその優秀さに男は敵わない。表向きは世間が気づかないような静かでよく気がつく女性が実は深謀遠慮を巡らせているということは周りでも多く行われているはずだがそのほんの一部にしか男達は気が付かない。あらためて静かな恐怖を感じる作品である。
紙の本
旧い詞も味
2016/12/19 17:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:瑠璃揚場 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在では滅多に使われないような詞により綴られている話もあれば、取っつきやすい普段の詞で綴られたものもある。
そのやや難しい詞を度外視してもこの本は見る価値があると思う一冊だった。
手紙やら新聞やらでの回想形式の小説が多く、普段はあまり見られないような特殊な文章形式を楽しめる一冊であった。