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紙の本
江戸っ子料理人の昔語り
2008/02/09 16:27
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mikimaru - この投稿者のレビュー一覧を見る
初代たいめいけん店主が長年にわたり書きためたものを中心として、没後に発見された草稿をもとに二代目が当時の食べもの屋を紹介する数ページが加筆された一冊。
昭和初期に店をひらいた著者の修業時代は、冷蔵庫もない大正にあたる。牛や豚は無理でも床下に天然の鶏肉と卵を貯蔵(つまり鶏を飼育)していた洋食屋があったと記し、冬の皿洗いでひび割れた指に、研いでいる米粒がはいりこむような苦労があったことをさらりと書く。下町育ちでダジャレがお好きだが銀座のお嬢さん方に料理講習をしても浮いてしまったこと、なにげなくテレビで「料理の電話相談をいたします」と言ったばかりに電話が鳴りっぱなしになったことなど、店でのことや視察旅行に出かけたフランスでのできごとを、ユーモアたっぷりに記している。
古きよき昭和に、職人であり江戸っ子だった著者のような人がいた。何でも便利になったいまの世の中だが、ノウハウではなく思いをつづってくれる職人は、あまり多くないかもしれない。
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