紙の本
美女と殺人鬼。
2002/02/10 23:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
盲目の男が美女たちを罠に嵌め、次々と殺害してゆく物語。言ってしまえばそれだけで、「触覚芸術」という尤もらしいくだりはあるものの、決して深い内容を持つ作品ではない。しかし、それゆえにあざとさが無く、面白く読むことが出来る。乱歩自身はこの作品を嫌っていたようだが、それほど酷いものではない。とはいえ、乱歩がこの作品を嫌ったのは、自身の矜持にもよるだろう。乱歩としては、盲獣のような作品を歓ばれても、嬉しくなかったのだ。乱歩の内心の葛藤を鑑みると、また違ったものが見えてくる。
他に「地獄風景」を併録。
投稿元:
レビューを見る
『盲獣』
盲目の殺人淫楽者による殺人事件。レビュー団女優・水木蘭子、彼女をモデルにした彫刻を怪しく触る盲人。盲人による蘭子誘拐事件。地下のアトリエに監禁される蘭子。蘭子の変貌と死。真珠夫人と呼ばれる未亡人の誘拐と死。未亡人クラブのマダム・大内麗子、ゴムの人形で盲人に対するが・・・。漁村の海女の死。バラバラにされた被害者たち。死後の盲人が美術評論家に送った手紙。
『地獄風景』
喜多川治良右衛門の作り上げたパノラマの遊園地。彼の島に住む友人たち。迷宮の中で刺殺された喜多川の恋人・諸口マチ子。殺害された恋人原田麗子をスケッチする前科者・湯本譲二。事件に関する何かをつかんだ少年・二郎の死と気球の縄が切れ転落死した人見折枝。100人の客を呼んで開催された治良右衛門のパーティー。大砲による的当て。パーティーの惨劇。木島刑事の推理。
2010年12月29日再読
投稿元:
レビューを見る
盲目の男が、触覚での美しさを求めて女性を次々と殺害していく。
乱歩すごい。けれども読後も不快感。
投稿元:
レビューを見る
何故か無性に読みたくなった江戸川乱歩。
その中でも群を抜いた変態小説が恐らく今作。
盲目の怪人がその猟期趣味を全開にした
倒錯した「見えない側」の世界観を圧倒的かつ
一方的に書きまくった力のある作品。
勿論現代の小説スタイルからしたら
おかしな部分や荒唐無稽な展開なのですが
ディティールなどに拘らず初速からラストまで
同じスピードで一気に読ませるのは、やはり
この作品の妖しさと如何わしさに取り込まれた
証拠なのかも。
3人目の殺人事件の件においては、猟奇的な
怖さと滑稽で下らなさとが同居していて、この
感覚とセンスは他の誰もが出来るものでは
ないような「差」を感じます。
投稿元:
レビューを見る
江戸川乱歩で一番好き
エロティックで残酷でまさに猟奇
同時収録の「地獄風景」も気味悪いのに
ばかばかしく、なぜがすがすがしい
この2篇は最強の組み合わせだ
傑作
投稿元:
レビューを見る
絶対に子供向けにはできない作品。乱歩自身が書いているように名探偵も犯人も出てこない。触覚の作品と言っているように主人公は盲目の殺人鬼。自分の世界に獲物を引きずり込む蟻地獄の如き犯罪がいくつも続く。理屈もへったくれもなくただただ狂気を紡ぐ文章に付き合うだけの作品と言ってしまえばそれまでだが、一片の理性も感じさせない世界観がこの作品を忘れがたいものとしている。そここそが触覚の世界なのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
《未購入》『盲獣』は読み手を選ぶ作品だと思う。江戸川乱歩を初めて読む人は、間違ってもこの小説から読んではいけない。エログロへの嫌悪感より、まるで喜劇を見ているような笑いが込み上げて来るから不思議だ。
投稿元:
レビューを見る
『盲獣』は大衆雑誌に昭和6年から翌7年にかけて連載。
作者自身、読み直して「ひどい変態もの」とびっくりしているという、読者も驚きの犯罪小説。
主人公・盲獣は盲目の猟奇殺人者。
狙われるのはレビューの女王だとかカフェのマダムだとか冒険大好き未亡人。この顔ぶれが既に艶っぽい。いずれもかなりの美女だそうですが、盲獣には顔の造形はさして問題ではないのです(見えないから)。
では、なぜ彼女たちに白羽の矢が立ったのか?
答え.触り心地が良かったから。
驚愕のド直球。
レビューガールは盲獣の罠にはまってアジトに監禁されてしまうんですが、このアジトもヤバい。作り物の女体のパーツがびっしり並んだ(むしろパーツで構成された)真っ暗な部屋で、この部屋の描写を読んだ時はガチで引きました。
で、そこで盲獣に触ったり触られたりする内に順応しちゃったりして、触覚だけの世界もいいなあとか考え始めちゃうレビューガール。
ああ、じゃあ良かったじゃん。一生2人で触ったり触られたりして暮らせばいいと思うよ。
と思ったのも束の間、盲獣、レビューガールにあっさり飽きる。
そして殺害。バラバラにして風船にくくりつけて飛ばしたりする。
やりたい放題だな盲獣!!
頭おかしくなりそうです。自分の子供には読ませたくない度、かなり高し。まあ勝手に見つけて来ちゃったんならその時はしょうがない。読むがいい。
しかし本編にあった言葉、「吹き出したいほど残酷」には深く頷きました。
それほど多くはない自分の読書経験を振り返ってみても、奇を衒いすぎてあざとさが鼻についたり、ただ単に不愉快になるような残酷描写はあれど、馬鹿馬鹿しい残酷さにはなかなか出会えません。残酷すぎて笑っちゃうって、それ完全に「残酷さ」がレッドゾーンを振り切ってるって事ですよね。いや、確かに怖いよ。すげー怖いよ。
『人でなしの恋』所収の短編「踊る一寸法師」もそうですが、乱歩という人は”この人から見た世界ってどんなだろう”という事についての想像力がハンパなかったんだろうなあと思います。
自分とは違う世界(例えば視力に頼らない世界であったり、両手足を失った状態で生きなければならない世界であったり、明晰な探偵の頭脳をもって挑む世界であったり、肉体的苦痛がそのまま快楽になる世界であったり)を、実際に見てきたかのように語る想像力。
その突き詰め方が尋常ではないから、狙ってる感を感じる間もなく怖がれるのではなかろうか。
「乱歩」って聞いただけで、なんか怖い気がする。後ろめたい感じがする。
でも見たい。できれば何かの隙間から。
最近ではすっかりお目にかかる事のなくなった心霊特番やUFO番組、あるいは深夜のピンク映画のようなドキドキ感を感じつつ、しかしやっぱり日本ってこういう国だったんだよなあと思うと、また趣き深い。
「エー、ここもと御覧に供しまするは、神変不思議の大魔術、・・・・・・」なんて見世物屋の口上、今では日本全国どこに行っても聞けないだろうけど、それでもやはりワクワクします。日本語としてしびれるぜ。
投稿元:
レビューを見る
●盲獣
こんな世界観があったとは、、、
ぐろく、エロく、純粋、触感芸術
最近のサクリクを繰り返す探偵ものより、わかりやすい。
●地獄風景
これもまた、、、変わった趣向の殺人。
それにしても、江戸川乱歩さんのこの本は自由な思考で好きなだけ書いていた。
そんな本を書く環境があったんだと思う
投稿元:
レビューを見る
積ん読本の中から引っ張り出し、ハテ、どうしてこれを買ったろう?
と、我ながら首を傾げてしまったのだが、ともかくも読んでみた。
タイトルは盲目のケダモノ(=人面獣心)の意。
欲望のまま女を漁っては非道の限りを尽くす男の話で、
好みのタイプについて、見えないから顔の造作は関係ない、
肌触りの善し悪しが一番肝心と宣う。
で、目が不自由なので、拉致監禁その他一切、
まさかそんな手の込んだ犯罪など不可能だろうという先入観でもって、
長らく容疑者リスト入りを免れるといった塩梅。
ちなみに、この版では、
乱歩自身が読み返して「吐き気を催す」とて削除された部分が復元されている。
ご愁傷様である。
見えないと触覚が鋭敏になって、
見えている人には体感できない愉悦を味わうことが出来る――というのは、
谷崎潤一郎『春琴抄』にも通じると言えるけれど、
しかし、これはエロいのグロいのって(笑)
同時収録「地獄風景」は既読で
タイトルを目にしただけでお腹いっぱいなので割愛。
でも、雑誌連載時の犯人当てクイズ結果発表まで採録されているのが愉快。
投稿元:
レビューを見る
目の見えない盲獣は触覚のみの快楽を求める。そしてそれを追求して出来た奇妙な部屋。江戸川乱歩全集じゃ乱歩自身がグロすぎると判断して削除された部分もバッチリ収録。「スパイラル」で鎌倉ハムってキーワードが気になった方は読んでみると良い
投稿元:
レビューを見る
犯人当て懸賞小説「地獄風景」も同時収録。作者本人もあとがきに書いてるが、「道化版パノラマ島」に納得w
「盲獣」は、触覚に注目した変態的で猟奇な世界観は面白かったんだけど、後半、書くのに飽きちゃったのか、怒濤の急展開で終わらせててちょいと残念。
投稿元:
レビューを見る
密かに江戸川乱歩小説の「変態度ランキング」なるものを作っている。やばい性癖や嗜好や行動規範を持った人物が数多く登場する乱歩作品にはタガが外れたようなすごい人たちがあちこの作品で出てくるのだ。この『盲獣』の主人公はそんな歴戦の変態たちの中でもかなり上位に食い込んでくるであろう変態で、最高に最低。タイトル通り盲目な男の物語であり、按摩師でもある彼が気に入った女性を次々と手にかけ残虐な方法で見世物にするという内容の中短編。なんでこんな男にほいほい美人な女性がひっかかるの?という疑問は出てきたりもしつつ、そこら辺は「そういうこともあるっしょ」くらいのテンションで適当に流されます。本作において重要なのはそんな部分には無くて、いかに男が狂っているのか、そして彼が最後に到達する地点がどこなのかを描こうとしているのだ。うん、あんたは本物だ。本物の変態だ。そしてこの無邪気なほどエログロに塗れた小説を書いた乱歩さん、あなたがナンバーワンだ。