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育児中の母を主役にしながら、一歩視点を掘り下げて読めば、
現代日本社会がかかえるジェンダー(性差)問題をつきつけている傑作だと思いました。
私は現在、主人公たちと同じように2歳の子どもを育児中です。
本には、出産・育児生活のなかで悩み、苦しみ、もがき続けてきた自分の
日常が描かれているようでした。(小説のような過激なことには手を出しませんが)
自分を俯瞰しているような気持ちで一気に読了しました。
読みながら、主人公の3人それぞれに苛立ち、共感し、同情し、何度も涙が出ました。
それ以上に、夫や親たち、周囲の理解のなさに情けなさを覚えました。
母親になれば誰もが聖母に変身するかのような、日本に根強い「母性神話」。
右肩上がりの豊かな時代の日本に育ち、便利さで孤立した社会で突然、
「密室育児」の激しいプレッシャーに晒される母親たち。
「時代の変化」を理解できない親とのジェネレーションギャップ。
終身雇用も安定収入も崩れ去った社会で、男は仕事、女は家事・育児・介護、という
「固定観念」だけが残像を落としている現実。
私自身は、個人の育児の悩みが、男女が平等に生きられない社会の問題と切り離せない、
と気付くのに数年かかりました。ですが、男女共同参画社会、と声高に叫ぶ以上に、
金原さんのような現代を代表する作家が、このようにリアルな視点から「物語」として提示するからこそ、
多くの人の心に問いかけるものがあるように感じました。
すべての世代の人に、読んで、そして考えていただきたい「物語」です。
最後に・・ラストを読み終えて、私は泣きながら、眠っている我が子を抱きしめました。
どんな事があっても、わが子が生きていてくれるだけで幸福なのだ、
という強烈な想いを湧き立たせてくれた、この本を書いて下さった金原さんに感謝します。そして、レビューに「子ども生みたくなくなった」という声が多かったので、苦しいだけではない、子育ての無上の喜びや、金原さんだから可能な、社会を動かすくらいプラスのエネルギーにあふれた作品を書いて欲しいと願います。
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始めての、金原ひとみ。 面白かった。
妊娠、出産、そして育児が3人の女性の人生をがらりと変える話。
とにかく、オンナってやつはヤッパリサッパリよくわからない深遠な存在であるということが良く分かった。表面的な些事や体面にこだわる小さな存在である我々オトコは、ただ振り回されるよりホカにありません。
子宮という「絶対的なもの」を持つ女性と持たない男性。だからオトコは幻想を追い続ける。
女性の捉える「真実」と男性のそれとは異なるのだろうか。移ろいゆく「自分」に正直である女性と、対外的な「自分」の連続性を意識する男性。
女性がキレた時の、句読点なく言葉が滝のように流れ落ちてくる表現方法が斬新で上手いと思った。
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託児所「ドリーズ」に子どもをあずける3人の母が主人公。作家のユカ、モデルの五月、専業主婦の涼子。
母であることの閉塞感や孤独、それを打破し、自らを救済するためにそれぞれが 選ぶ道がドラッグ、不倫、我が子への虐待。
子育て経験はないが、女性であることの苦しさがこんなにリアルに感じられたことはない。ずっと息を止めて読んだ。
読むのにとても体力がいったが、読み進まずにはいられない力がこの本にはあった。
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私の想像する育児といっても、乳幼児の育児に限るのだが、の嫌な感じのすべてが書かれているような気がした。まあ、もっと嫌なこともよいこともあるのだろうけれど。
閉塞的な環境の中で、子どもを育てるとお母さんが精神的に参ってしまうというのは、よく言われることだが、「母親」になる前に、それほど社交的に暮らしている女性がいったいどれぐらいいるのだろう。と思うと、やはりなかなか「開かれた育児」は難しい。
「人に頼る」ということを自分自身も周囲もネガティブにとらえないようにする。ことが、育児に限らず、追い詰められる人間を救うには、必要なのではないかと思う。のだが、なかなかなー。
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彼女の作品は、
どうしてこんなに自分とリンクしてしまうのだろう。
あんまりにも自分と思ってること、思うだろうことがここに書かれすぎて、
むむむと唸りながら読みました。
子供も恋も仕事も死も、
生活と地続きで在って、
しかもぜんぶがごちゃごちゃに迫ってくる。
そこを、何とか生き抜かなければね。
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母親としての悩み・幸せ・家族の在り方、色んな角度から見ていて深いと思った。結婚して尚、女として生きるには多少なりとも犠牲を伴うのかも知れない。
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現実にこのような母親もいるのかもしれない。
親になるということ、子育てというものは決して楽しいことばかりではないだろうし、苦しみながらも子と向き合い、愛する母親が描かれている、という気もする。
だけど、自分の気持ちとかけ離れていてとても切なくなったし、読み終わって苦しくなった。まだ母親になって2年の自分は未熟だとは自覚している。だけど、毎日子がいることが私にとっては奇跡的で、有難くて時折泣きそうなほど幸せを日々感じていて、心から信頼する夫とともに子育てをしているので、3人の母親から共感するものが何もなく、ただただ苦しかった。
まだこれから自分が思いもしない苦労があるのかもしれないが、今の自分にとっては読んで切なさだけが残った。
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作家、モデル、専業主婦の子育てをひん剥くと、クスリ、不倫、虐待、そして子供がいない私でさえ号泣してしまうような出来事。
子育てを疑似体験したいという軽い気持ちで手に取ったけどきつかった。
必死で読んだ。きっと筆者も必死で捻り出してこの小説を書いてくれたと思う。
日本中の育児経験女性に最敬礼。
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作家の由佳、専業主婦の涼子、モデルの皐月。
同じ保育園に子供を預けている母親たち。
みんなストレスのはけ口を見つけられないまま孤独の中で育児をしている様子がえがかれています。
由佳はドラッグに、涼子は子供の虐待に、皐月は不倫へと逃げていく。
そんな母親たちの心の様子が痛々しく、でも読んでいる私が共感出来る部分もたくさん描かれていました。
小説の中に出て来るちょっとした部分、たとえば子供のマグマグを洗うシーン、
おもいっきり息を吸い込んで子供が絶叫する瞬間、
子供がグチャグチャにした食事をかたずけているところ…。
分かる分かる!
と納得しながら読み進められる場面もたくさんあった。
そして、流産する場面では自分の体験と重ねて泣き、
子供を亡くしてしまう場面では「もし自分だったら…」と思って泣いた。
これだけ母親の心理を細かに書いている金原ひとみという作家、すごいなぁと思う。
この作品を執筆しているとき、彼女は二人目の子供を妊娠中だったそうで。
どんな気持ちでこの作品を書いたんでしょうか。
この本の話からはそれますが「蛇にピアス」を読んでからもうずいぶん時間が経ってるけど、何となくのあらすじと印象に残るシーンがいくつかある。
「蛇にピアス」だけではないけど、こうやって何年経っても人の心に鮮烈に残る作品を書ける人ってすごい。
芥川賞受賞というので「蛇にピアス」を読んだ時に、もうこの作家は読まないと思った。
でも今回「マザーズ」を読んで、改めて金原ひとみの作品を読んでみようと思いました。
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2人の子持ちだけに、子育て中のさまざまな悩み、気持ちの変化などはよく分かりました。「分かる、分かる」と。
だけど、ちょっと私には重かった。
世の中いろんな人がいるからいいんだけど、もっと子育てを楽しんで幸せな気持ちでいる人もいるのだから、これから出産する人にはちょっとおすすめしないかな。
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それぞれ問題を抱えている3人の母たちを描いた力作です。かなり細かなところまで書かれているので読んでいて疲れるとこがあるけれど、ドラッグ、虐待、不倫などの問題点をリアルに感じさせるところはすごかった。
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どうしてこの本を借りたのでしょう?
どんなに読み進めても作者が何をいいたいのか分からなかった。
子供を産んだ人なら分かるのかな?
気持ち悪くて、何度も吐きそうになって、最後まで読むことはできませんでした。
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こんなに読み終わるまでに時間がかかった本は久しぶり。速読は得意なのに、全然ページが進まなかった。途中断念しそうになりましたが、なんとか読みきった、そんな感じです。
結婚と出産に憧れがある私ですが、ちょっと恐くなってしまいました。こんなに感情が揺さぶられることが日常的に起こり得るのでしょうか。
描写があまりにもリアルで細かいので途中気持ちが悪くなる箇所もあり。あまり好きにはなれなかった本。ただ、作者の文章力にはただただ脱帽。語彙を勉強させられました。
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久しぶりに一気に読んだ。
そして私の育児の日々を痛烈に思い出した。
今は大きくなったからずい分育児が楽になったけど、あの頃は本当に誰の助けもなくて大変だった。
虐待まではいかなかったが、虐待する人の気持ちは分かる。
当たり前に自分のことだけ考えて自由に生きてきたのに、小さな泣くことしかできない赤ちゃんに一日中振り回される。
それは経験した人しか分からないと思う。
生まれて数ヶ月で保育園に入れて仕事を始めた人は、本当には分かっていない。
3歳になるまで、どんな時もずっと一緒にいた場合のみ分かることがある。
ただ今となってはいい思い出で、子供は必ず大きくなるし、育児はどんどん楽になる。
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2012.03.05読了。
最近母親目線な本を手に取る率が高いような...(笑)
母は子どもと一緒に成長して行く。
母子の成長の話。
乳幼児期の子を持つ3人の母親たちの虐待や逃避、愛情不足?などそれぞれの苦悩を描いた話なんだけど、はじめは嫌悪感ばかりだった。
3人の母親の行動、気持ちが私の中にもあるような気がして、いつか子どもを産んだとき、自分が同じように思ったり、してしまうかもと不安になって。
嫌な気分を拭えないままどんどん加速していって一気にラスト。
結果的に子どもを通して成長した3人のラストにスッキリした。
けど、そうなるためには旦那の存在って本当に大事だとも思った。
3人とも旦那との関係が良くない。
話し合えてない、理解してもらえてない、非協力。
子どもにとって一番近い存在は母親だけど、だからと言って一人きりで誰にも頼らず育てて行くなんて無理。
涼子や五月の夫との関係の修復にほっこりしたなー。
母と子の話でもあり、夫婦の話でもあり、自分を見つめる話でもあった気がする。