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叔父と姪の手紙のやりとりを通して、あくまでも論理的に、哲学的にそれでいて結束の強さを感じる。どこか俯瞰した感じがあって姪の成長もうかがわせる。
もう一編のよい夜を待っているもいい余韻を残した。
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いずれも「小説新潮」に掲載された中編二作。
著者ならではの文字や言葉にこだわった二作品だが、一作目のタイトル作「これはペンです」は、やや難解。小説に一定のストーリー性や何らかの感動を求める向きにはまったく不向きな作品だ。
その点、二作目の「良い夜を持っている」は秀作。個人的にはぜひこちらを読むことをお勧めしたい。
夏目漱石の文体を思わせるように、たたみかけるように書き出される物語は、「超記憶者」であった父の来歴、そしてその能力の根源を解明していく壮大な思考実験のようだ。
我々読み手は、息子である著者と共に、同時進行的にそれを追体験していくのだが、この流れは実にユニーク。難解なパズルやミステリの謎を、共に解き明していくような楽しみがある。
そして驚かされるが最後の真実という趣向。
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様々なものに文章をしたためて送られててくる叔父からの手紙をもとに、その姿を探ろうとする姪を描いた表題作。
そして、夢と記憶の世界をさまよっていた亡き父親の軌跡を追う息子の物語の2編の連作です。
つかみきれないものを追い求め、なんとかつかもうとするそのさまは、形而上学的であり、哲学的であります。
純文学的なようで少しSF的でもある、不思議でつかみどころのない作品です。
タイトルも絶妙で、表紙の写真も面白い。思わずある単語(読むとわかります)を探してしましました。
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小説とは何か。言葉とは何か。文字とは何か。そういうことについての小説。
小説というよりも論文的な文章で、論文とはそこに何が書かれているかが重要な文章で、そういう意味では、これは純文学というよりは大衆文学に分類されそうにも思える。ただ、大衆文学が好きな人にとっては、こういう作品を純文学と分類するのだろうけれど。
いや、分類の話などはどうでもいい。重要なのは言葉なのだ。この作品がどんな言葉によって書かれているか。
先ほど「論文的な文章」と表現したことにも通じるのだけれど、私はここに無味乾燥な文章を感じた。この人の他の作品を読んだことが無いので、いつもこういう文章を書く人なのかどうか判断が付かないが、あえてこういう言葉を選んだということも考えられる。
たとえば、キャンバスとは何か、絵を描くとはどういうことか、ということについて考え続けた現代美術家たち。その系譜に繋がるのではないかとさえ思える作品だ。
言ってしまえば、私はこの作品に対して何らかの結論めいたものを下すことが出来ないでいる。小説とは何か。言葉とは何か。文字とは何か。その問いが深遠であるように、その答え(そんなものが存在するとして)もまた深遠なのだ。ただ一つ言えるのは、書き手にとって、それはとても重要な問いであるということだ。
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円城塔「これはペンです」読了!!なんだかよくわからない小説だった。2話収録の本単行本は、頭の血管をぶちぶちと引きちぎっていくような感じ。人の夢想を理解しようとするとこうなるのかなと…しかし、この世界観は圧倒的なパワーをもっておしよせてくるなぁ~。短いはずなのに読みごたえ満点♪
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表紙の写真はIBMのタイプボール~叔父は文字だ。文字通り。超記憶者の父が教授の研究対象になっていたのは死んでから知った~これは・・は難解,良い夜・・は馴染めると思ったが駄目
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本の雑誌で著者の名前は見ていた。SF作家らしい。そのうちに機会があったらと思っていた。
「これはペンです。」
叔父との手紙のやり取りと姪である少女の独白。
論文を自動作成するプログラム、またそのプログラムで作成された論文を判別するプログラムを作った叔父。手紙を難しい制限を設けて書いているという叔父。文章に意思を排除したいのか。よく判らない。
幾つか?マークが頭に浮かぶが、兎も角読めてしまう。逆にひっかりが無さ過ぎか。
読んでいるときはそれなりに面白いのに、読み終えて何にも残らないような感想。
少年って何だ。最終部を読み返す。もしかしたら、ロマンスの予兆?。でも叔父の影から出られないのじゃないのか。つくづく読みきれてないのかもと思う。
「良い夜を持っている」
奇妙な記憶の症候群を持つ父の物語。記憶を現実と似た都市の形で持つ。夢の中の水辺で会って無いはずの母と会ったという。記憶は改竄され、何時の時点の話だか判りづらい。この小説も殆ど息子である主人公のモノローグで、一本調子なので、判らないことだらけでも読めてしまう。
最後の主人公の幻視は、なんのことやら。つまり、読み切れてないということだろうな~。
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新しいカタチを生み出すことに意義がある。
理系と文系の融合。
能無し文系は理系にすべての分野で乗っ取られてしまう。
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なんか面白いんだよねえ、嫌いじゃないなあ、こういう屁理屈ごねてるみたいの。
でも今は読み続けられない。
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「これはペンです」と「良い夜を持っている」の2編からなる。
どちらも少々、難儀な肉親を描こうとする物語。
「これはペンです」では姪が叔父を、「良い夜を持っている」は、その叔父が自分の父親について描いている。
ただし、描こうとしている当人の内面に迫ろう、としているのではなく、客観的に分析しようとしているかのようだ。
意地の悪い例えになってしまうかもしれないが、サルの群れの中の特定のサルの行動を追っているかのよう。
どちらの話でも具体的な人物の名前は出ず、「姪」「叔父」「父」「母」としか呼ばれない。
そういう点からも普通の小説、というより論文でも読んでいる感じがする。
「これはペンです」に出てくる叔父は、本の中の表現を借りれば「書く動機を欠き、書く方法だけを探し続ける」
(一見、意味があるようで、まるで意味がない)論文を自動生成するプログラムを作ったり、ケガをしたらしたで、自分の血をインク代わりに
手紙を書いたり、と捉えどころがない。
様々な手段で書く事により、それらの中に自分自身が現れてくるのでは、と信じているようだ。
そして、姪は、それより早く叔父を見出そうとしている。
やっていることからすると、この叔父は天才なのだが、自分の肉親にはいてほしくないタイプ。
離れた所から観察する分には面白いかもしれないが、近くにいると迷惑な気がする。
「良い夜を持っている」は「これはペンです」に出てきた叔父が主人公。
ある教授が父親の症候群を研究した結果をまとめた本を自分(叔父)なりに「翻訳」して、父親を描こうとしている。
叔父が描こうとしている父親は、異常な記憶力の持ち主。ただ、その記憶の方法は、一般人とはかなり異なっており、時系列がゴチャゴチャだったりする。
会社員として、普通の会社では仕事はできないが、子供の面倒を見たりなど、親として役割は(おおむねだが)果たす事はできる。
叔父は意図的に奇妙な行動をしているが、父親は自分にしてみれば、ごく当たり前の行動をしているだけで罪はないが、近くにいたら扱いにくいという点では変わらない。
この父親にして、この子供あり、というところだろうか。
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極めて理系的な短編2本からなる。表題作は、論文を自動生成するプログラムを開発した「叔父」をテーマにしたもの。論文の自動生成や、自動生成した文章を判別するプログラムなど、文章の自動生成にまつわるさまざまな「ネタ」が登場する。チューリングテストなど人工知能の基礎知識やコンピュータ・サイエンスの基礎知識がないと読むのがつらそうな気がする。
もう一編は仮想的な街にすべての記憶をマッチしていった「父」の話。これも「連想記憶」などを思い起こさせる。
一般受けはしないだろうが、こういう小説があってもいい。
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「これはペンです」「良い夜を持っている」の2編。
どちらも円城塔らしい自己言及的な言語SF。
言葉を、言語を、文章を生み出すことの面白さ(興味深さ)をある種の奇怪さを持って提示してくれる。
タイトルが英直訳で"This is a pen.""Have a good night."になるセンスは最高。
独特の難解さはあるものの、これまでの円城塔作品より幾分読みやすい。
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きっとこれは単語の置き換えをしながら読まなきゃいけないんだろう。歩いは文中にある論文の解読法を用いて、物語の中で示された手続きを物語自身に施す必要があるのかも…と邪推をさせるだけで、実はこのまま読んで終わりでもいいのかも。姪が叔父の手紙を読み流したように。言葉とは、文章とはそういうものだと暗に示されていることが解ったのでそれでいいのだと思う。
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「これはペンです」「良い夜を持っている」の2作品。
初の円城塔さん。
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了との事。
読んでる間ずっと、
「どんだけ頭いい人が書いてんだ?」
って自分の馬鹿さ加減を嫌と言うほど感じさせられる。
難解。
普段小説を読まない超理系の人が読んだらどんな反応するのかな。
意地で読んだ。
でも、文章の切り貼りでレポートなどををこなす人っていっぱいいるよね。
怒ってるのかな。
お門違いだろうけれども想像するのはちょっと面白かった。
それから、叔父・姪の繋がり方にはぐっと来た。
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「これはペンです」「良い夜を待っている」の2篇。小説です。
私なんかは小説に「今の弱い自分に何かサプリとなる言葉を」なんて求めてしまうので、その心づもりで読もうとすると、まず読み進められません。
けれど、そういう効果を持つ作品だけが小説じゃないんだよ、と切り替えると、途端に面白くなりました。
内容云々というより、自分の既存を良い意味で変えてくれた、という面に星4つです。
要所要所で「ここの文章は円城さん、ニヤニヤしながら書いたんじゃなかろうか?」と疑うほど彼自身の哲学を散りばめてる箇所があって、こうやって自慰的に文章を書く人、嫌いじゃないな、と思いました。
内容についてのレビューは正直できません。結局何も残らないんだもの笑