紙の本
滅びゆく暴力団
2012/03/28 13:45
13人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
溝口敦さんの記事は、別冊宝島などで良く読んでいた。暴力団に関する鋭い分析記事に舌を巻いていたが、その鋭い分析故に暴力団から恨みを買い、本人はもちろん長男までが暴力団に襲撃され重傷を負ったりしている。それでも溝口さんは書くことを止めない。彼こそ「ペンは剣より強し」を地で行くジャーナリストの中のジャーナリストと言っていい。
そのジャーナリストが「暴力団」という名の新書を出した。本書はいわば幅広い読者層をターゲットにした「暴力団」入門書である。本書を読むと、暴力団とはどういう団体で、どういう人間が暴力団員となり、今、この団体がどういう状況にあるのかが手に取るように分かる。一言でいえば、暴力団とは斜陽産業であり、高齢化が進み若い新人のリクルートが進まず、組織が硬直化し活力を失いつつあるということだ。バブルの時は地上げや株式相場で相当儲けた暴力団もあったようだが、今や彼らも風前の灯。失われた20年の直撃をもろに受け、財布は限りなく軽くなり、昔のように派手な生活は出来なくなっているそうな。かわって出てきたのが暴走族上がりの半ぐれ集団だが、彼らとて置かれた状況は同じ。「つっぱり」が持て囃された30年前は遠い過去で、今や「暴走族はカッコ悪い」が若者の共通認識で、暴走族そのものが全国的に「絶滅危惧種」状態になっているという。
本書には「政治家には悪い政治家もいれば良い政治家もいる。警察官にも悪い警察官もいれば良い警察官もいる。しかし暴力団だけは悪い暴力団だけで、良い暴力団はいません」と書いてある。暴力団として求められる資質は、他の職業にも言えることだが、空気を読むこと、相手の顔色をうかがうことなのだという。少しでも怯んだ様子を見せれば、たちどころに暴力団は居丈高になり、あなたの弱みを突いてくる。だから、もちろん暴力団とは関わりを持たないのが一番なのだが、万が一運悪く暴力団と関わるようなことになったら絶対に妥協せず、ガツンと勝負に出るしかないと著者は言い切ります。
印象深かったのは著者による暴力団の特色の指摘だ。「暴力団とは額に汗する労働を嫌い、軽蔑している人たちです。彼らの悪口に「市場のマークが入った帽子でもかぶり、大根でも売りやがれ」という言葉があります。八百屋さんや青果商が聞いたら激怒するでしょうが、これが彼らの感覚なのです。暴力団から見ると、まともに働く人たちは、自分たちの食い物になるしかないバカであり、落ちぶれた人たちなのです。
紙の本
衰退していく、構造不況業種の暴力団。
2012/01/27 23:33
2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今や構造不況業種となり、その行く末が案じられる暴力団について、わかりやすく解説している内容です。「絶滅は時間の問題」なのだそうですが、如何せんまだ全国には3万6000人の組員の方々がおられるそうです。係わり合いになりませんように。
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内容的には軽いが、ちょこちょこパンチラインが繰り出され、膝を打ちたくなる。
暴力団は構造不況業種で、これからはマフィア化すると見ているがそれでも各国それなりに対処しているのだからと。暴力団を温存することは、結局現状の肯定でしかないと。
溝口敦はヤクザ社会が不況であると見るが、若手のライターやジャーナリストは今のヤクザ社会がどういう状況にあるのか知りたい。
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暴力団の基礎知識。わかりやすく書いてるので初心者向けでしょう。てか、溝口敦って暴力団に批判的なのに組員の取材先があるなんてすげえな。
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ですます調で、とても読みやすかった。
結論としては、暴力団は消滅していくという話。
某司会者の引退報道を受けて急遽発売した感じがしないでもないが、中国マフィアの話もそれなりに詳しく載っていて、暴力団についての一般常識的なものは特に不足なく書かれていると思う。
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口述筆記と思うんですが、担当編集者の腕の冴えが無い様に思います。
著者の経歴からは、設問の設定やインタビュアー?の腕次第では、もっともっと興味深い内容になったと思えます。
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・従来言われてきた暴力団必要悪説を真っ向から否定した主張。これまでいろいろな書物を読んでもやもやしてきた部分が吹っ切れた気がする。
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紳助引退を機に、何も知らなかったので知っておこうと購入。
暴力団の存在を一応は認めているのは日本だけなんだそうです。他の国は(一応法律上は)組織員だというだけで捕まえられるのに、日本だけそうではない。仮想敵が必要なのは古今東西同じだという実態も描かれています。ただ「暴力団排除条例」は銀行口座も作れずかなりきついとか。
本筋とは関係ないけど、大阪府警の暴力的な取り調べに対して暴力団が訴訟を起こし勝訴したばかりか、当て付けとばかりにせしめた罰金を「東海交通遺児を励ます会」に寄付したというくだりには思わず笑ってしまいました。
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当たり前のように感じていたが、暴力団が世間から半分認められている存在っていうのは、改めて気がついた。確かに映画等であこがれるところがあるから。
まぁ根絶しないでしょうね。
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最近いろいろあったからね。明日から東京では暴力団排除条例が施行。少しはしておいても損はないと思います。
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「指定暴力団」ということは、存在を認めてしまっているんですね。ここがマフィアと違うところ。まあ、勉強になりました。怖いもの見たさの軽い興味なら、立ち読みかwikipediaで十分です。
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どうせ世間の関心に合わせて出したのだろうと軽い気持ちで購入したが、どうしてこうして。暴力団についての常識?が分かりやすくまとまっている。
ヤクザの語源から、暴力団の衰退と半グレ集団の増殖という将来予測まで。こうした反社会的勢力と一切関わらないとは断言出来ない、そんな職業を志した身としては読んで損はなかった。
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この本は極端な見方ではなく、なるべく客観的に暴力団について書かれた本だと思う。
今までは暴力団は必要悪だと思っていたが、世界の状況と比べると日本は暴力団の存在が許されており、特殊な状況であることを知った。
10月1日から東京都と沖縄で暴力団排除条例が施行されるのに合わせて書かれた本だが、内容的には暴力団について普遍的なものである。
暴力団についてざっくりと一通り学びたかったら読めばよい。
自分も一通り知りたかったから予定通りだった。
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衝動買いしました。面白かったです。
新潮新書お得意の口述筆記、、、だと予想しています。でも作るプロセスより結果が大事なので、それがいけないとは思いません。タイムリーに芸能人の引退に合わせてよくこの本を出せたと感心します。
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暴力団についての概略を知るには極めて優れたバランスを持った良書。
最近新書は発行されすぎで、内容の非常に薄いものばかりでしばらく読まなかったが、久しぶりに内容の濃い本だった。
現状の紹介に留まらず、将来の趨勢や、今後の対応方針について、筆者自らの提言を織り込んでいるところが評価できる。