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脚本家になる、という夢を
追うことも諦めることもできないまま自販機の飲み物補充のバイトで日銭を稼ぐ主人公。
バツイチの女性社員と、仕事の合間に
自身の結婚や離婚について語る。
妻だった女性への愛情や、
愛ゆえに切り離せない憎しみのようなもの
平坦でいられない、その「仕方なさ」は
すごくリアルでもの悲しくもあるし
客観を保ちさえすれば微笑ましくもある
灰色の日常、穏やかな寂寥、
その中の諦めと肯定。
必要にも邪魔にもならないかわり、
文章はさすがにさらさらと綺麗。
併載作には「鮎子」キャラ。レア!☺
三作ともただよう色は似てるけど
共感さえしなければ、
きっと平和で美しい小説だとおもう
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「八月の路上に捨てる」「貝からみる風景」「安定期つれづれ」の夫婦の形を描いた三篇。
芥川賞を受賞したらしい「八月の路上に捨てる」より
「貝からみる風景」が好きだった。
正座した後にビリビリビリと足に広がるような感じに好きが広がった。
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夫婦とはどういうものか
【内容】
芥川賞を受賞した表題作をふくむ、全2編の短編集。
離婚届の提出を翌日に控えた男性が、自動販売機にジュースを補充する仕事をしながら同僚の年上女性に結婚生活を振り返る。
【感想】
「結婚生活が破綻していくプロセス」のリアルさには、しみじみとせつない気持ちになります。どちらが悪いのではなく、ボタンの掛け違いが積み重なることによって、結婚生活は破綻していくものなのだろう。
タイトルのセンスは抜群だ。
ただ、個人的には文体がグッとこない。
芥川賞受賞作であるが、村上龍氏の選評が興味深かったので記載する。
***
『現代における生きにくさ』を描く小説はもううんざりだ。そんなことは小説が表現しなくても新聞の社会欄やテレビのドキュメンタリー番組で『自明のこと』として誰もが毎日目にしている
***
【引用】
東京で生きていくには、ただ息を吸うだけでも金が要る。
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うちの会社では自販機も作って売っているのだけれど、なかなかこの商売も大変。
で、この表題作の主人公は、そうして街に並んだ自販機に缶を詰めて回りお金を回収する人ね。
帯に「30歳、フリーター、明日離婚予定」とあるけれど、そんな敦の結婚と離婚の経緯が、一緒に回る女性ドライバーの水城さんとの会話から知れていく。
現代の若者の生活を覆う社会の歪みの中で掛け違っていく男女、みたいな話で、芥川賞受賞作の離婚話なんて、普通を描いては有り得ないという意味では、まあ、こんなもんだという感じ。水城さんを主人公にした物語のほうがずっと面白そう。
私には、ありがちな生活感の中での微妙なズレに男女の機微が見えた「貝からみる風景」のほうが良かったな。
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芥川賞受賞作品の表題作と、あと中編2本を収録。なんとなく芥川賞作品はもっと難解なのかと思っていたけれど読みやすかった。家族で同じものを食べていると安心する、という感覚は良くわかる。
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短編集。やっぱり表題作がいちばんよかったかなぁ。
でもなんせ短編なので、消化不良気味。短編っていうところが余韻があっていいのかもしれないから、これは単に好みかな。
もっと長編にして、知恵子側の言い分も知りたいし水城さんのその後も知りたい。
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『カンランシャ』に続き、伊藤たかみ2作目。
3作収録されてるけど、どれも夫婦の関係を描いた作品。
表題作は、水城さんが非常にいい味出してた。
敦と知恵子の夫婦は、知恵子がちょっと精神を病んだ時に、敦がうまく受け入れてあげられなかったために関係がおかしくなった…それで離婚に至った。それだけだと思う。
でも、ただ単にそこだけ描かれると面白くないけど、水城さんの言葉が重いし、すごい大事なこと言ってる。
『カンランシャ』に比べると、リアリティある夫婦像だった。
「安定期つれづれ」も、お父さんのブログ中心の展開が面白かった。
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012012.
自販機に缶を詰める仕事のデティール、男女の友情にも似た仕事仲間同士のつながりなど、日常風景を描いた三編。
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自販機の補充する仕事はリアルで興味深かったけど、離婚とかに興味なかったからかいまいち入り込みかけては戻りの繰り返しだった。
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8月最後の日に、飲料自動販売機の商品補充に回るドライバーとその相方のそれぞれの人間模様を描いた作品。
ドライバーの水城さんは、この日を最後にドライバーから内勤へ異動する。主人公は、妻との離婚届けを明日提出する。
登場する2人の人生観や価値観に、強い何かを感じさせない表現になっている。どちらかの登場人物からも強いメッセージ性のある言葉が語られません。淡々と、精緻な自販機への商品補充業務を表現しています。ある八月の仕事の情景を描きながら、2人の男女間、結婚感が語られます。プライベートの上手くいかない部分も、仕事という生きていくための作業の一部に組み込まれているかのような感じです。離婚することになったから、仕事に集中できないなんて、描写は出てきません。そんなことも生きていることの一部に過ぎないという感じさえします。生きる上で、仕事/プライベートのどちらかが、どちらかに影響を与えて、干渉すること自体が、無意味な感覚です。題名にある「八月の路上に捨てる」の”捨てる”ものは、何だったのか?2人の登場人物のそれぞれの過去を捨てて、それぞれに出発し直すということだと思います。ただ、それさえも強い共感を励起するわけではありません。人生の時々を、それなりに生きてきた人間のあるがままの明日に向かう姿を描写しきったものだと言える。
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芥川賞受賞作品。
敦はバイトで自動販売機の中身を補充する仕事を水城さんと暑い中こなしていた。
学生時代、映画の脚本家を目指していた頃に出会った知恵子との4年続いた結婚生活、目前に迫る離婚。
だらだらと続く残暑の中で仕事をしながら水城さんに語る知恵子とのこと、知恵子との記憶。
好きだったのかもしれない、プライドや劣等感や複雑な心境の狭間で、本能のままに正面から接した結果。
何もかも本気だった。
伊藤たかみなんか聞いたことあるなあーと思ったら、ミカ!で知ってるんだ!って納得。
読んだことはないけど小学校の図書館にあったのを思い出した。
あー、芥川もらっちゃう系な感じの話しだた)^o^(
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どこにでもある日常の些細なさざ波を、ほのぼのとした語り口で描いた作品集です。どの作品も心温まる話というわけではないのですが、文体が清々しくて読んでいて気持ちが良くなります。ほんのり口角が上がる可笑しさがあります。まるで昭和のホームドラマのようです。
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タイトルだけで勝手に虚無的、退廃的な内容を想像して手にとったが期待外れだった。
そんなもんだよね…という家族関係が淡々と進む感じ。
計三編のうち表題作は芥川賞受賞作なんですね。
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表題作は自販機の中身を補充するという仕事をしている人が主人公。あまり小説向きでない職業で知る機会がすくないので面白かった。先輩のサバサバ感が好きだった。
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伊藤たかみといえば、ミカ!とかそういうポップなイメージだったのです。しかし、これでデビューしたのかとおもうと、底知れなさに驚く。美しいカバーと、八月の路上に捨てるという不思議と惹きつける言葉。内容は純文系らしく、何も起こらずゆっくり語らせるお話で、漂う空気感が非常に美しい作品。わたしこういう読み終わって、結局なんだったのだろう、とひとしきり考えてしまうような、そんな本が好きです。