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すごくうまい。まさに私の考える文学。感動ではなく、感銘を受けた。主人公の心の揺れ、移り変わり。英語の本題"A Pale View of Hills"がうますぎると思った。そう、すごくPale(薄暗い)なのである。感動以外で5つ星をつけた初めての文学ではないだろうか。
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1954年長崎生まれ、イギリス育ちの筆者による終戦直後の長崎の物語。
そういえばこういうほわっとはじまって特に劇的な盛り上がりもなく(それを描くのが主眼ではない)ほわっと終わる話は久しぶりに読んだ。
池澤夏樹の解説がよかった。
「人間は互いに了解不可能である」という前提から発しながらも、ずれた会話をプロットの中心に据え、人間のありようを書き出しているという指摘。
その会話に登場人物の属性をうまく表現した訳。
さらにその人間性が原文でも失われておらず、それによって日本女を描くのではなくそれを超えた普遍的な人間の心の動きを書いているという指摘。
そういうものだと考えながら読むと、もっと面白く読めたのだろう。
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戦後間もない長崎で、アメリカ男に裏切られながらも未来を託す女と、その娘との出会い。主人公の悦子は、イギリスで、長女を自殺で亡くすが、長崎での思いで(母娘との短い出会いや元夫や義父と過ごした夏)を不思議に思い出される。
ただ、悦子と元夫の離婚や何故渡英したかなど、よくわからない部分があった。
村上春樹と感覚が似ている、と思った。
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舞台は英国と戦後まもない長崎で、タイトルの通り、光を求め生きていく人々をきれいに描かれています。しかし、必ず幸せを掴めるわけではなく、求める光は淡く微々たるもので、現実を感じずにはいられません。
会話文が非常に特徴的で、私としては登場人物たちが狂ったと焦燥感にかられました。普通の会話だと全くずれているのですが、話は不思議と理解でき、ちゃんとした会話なんだと気づかされます。おまけに、これは文学的な表現だそうで、私は見事に嵌ってしまったわけですね(笑)。
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カズオ・イシグロの最初の長編小説。主人公、悦子の回想のスタイルで語られる。ただし、その構造はやや複雑で、イギリスに暮らす現在と、長崎にいた過去とが、その中間部を欠いたままで語られている。この点にこそ、この作品の一番の特質があるのだが、その一方で読者の側には幾分かのフラストレーションが残されることになる。佐知子と万里子のその後も、景子に関わる経緯も不明なままなのだ。
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著者の長編第一作.
後年の作品ほど語りに円熟はなくて,物語自体も十分に具象的ではない.なにか薄暗い不安感が漂った雰囲気のなかで,会話を中心に話を進めていくスタイルはもうすでにここにある.
テーマは家族の断絶だろう.時代の価値観の違いに引き裂かれていく親子.どこか距離感のある幸せかわからない夫婦.なんだか身につまされることが多くて,ページがなかなかすすまなかった.
佐和子親子のような人物を書かせると,不思議な実在感を伴って.これほどうまい作家はいないと思う.
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戦後の閉塞感や薄気味悪い描写が印象的だった、特に会話文。あんなに上辺だけの会話が頻発に続けられるところに人々の心の闇が表れているのだと思った。
女の子は結局どうなってしまったのか。
はっきり書かれない分落ち着かない。
不安感が残った。
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前回読んだ日の名残が気に入ったので読んでみた
処女作らしいが、落ち着いたゆったりとした描写で、細部の書き込みが日の名残と比べるといまひとつと感じるけど、その代わりに、常に死がそこにあるような妙な緊張感が全編に流れていて、これはこれで読ませる
回想形式で、ある種のミステリのように読めるのは他の作品と同じ
翻訳モノ特有の日本語のつながりの悪さは感じず、これは翻訳者の力なのか作者のオリジナル英文の特徴なのかわからないけど、とにかく読みやすい
馥郁とした文学の香りを楽しみながら、激しさを内在した静けさを楽しめた
傑作と評するのはためらわれるが、楽しく読めて十分満足だ
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期待値がMAXだったので、ちょっとなー。
処女長編だそうで、それもあってか、
盛り込み過ぎ!!
気になる要素があたら蒔かれてるのに、
解決しないことがありすぎて、
それで収まりがつけばいいけど、単に書き込みが足りない感じ。
不満不満!!
倍の長さでリライトして欲しい~
でも寡作だから・・・・
そんな時間あったら新作書いて欲しい~
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カズオ・イシグロの作品を読むのは、『日の名残り』『わたしを離さないで』に続いて3冊目。本作は彼の長編デビュー作に当たる。イシグロは5歳の時にイギリスに移住したため日本語はほとんど話せないらしいが、本作の主な舞台は長崎で、登場人物も日本人だ。したがって、そこに描かれた日本と日本人は、日本人が描いた日本とは微妙な違いがあって、そこがこそばゆくも面白い。
問題は内容で、一筋縄ではいかない。何が起きているのかは全て分かる。しかしいくつもの重大な謎は最後まで説明されないままで、そもそも物語られていることのどこまでが真実なのかという疑問が湧いてくる。とりわけ気になるのは、終盤のケーブルカーに関する話だ。もしこのケーブルカーが中盤に描かれているものと同じだとすると、明らかな矛盾が生じてくる。その矛盾と、説明されない謎を解決する手段はただ一つ。実は「佐知子」とは「悦子」の真実の姿であり、この物語の大部分が、悦子による捏造された記憶のようなものではないかという解釈だ。そうなれば不可解なミッシングピースの多くが埋まってくる。だが厳密にそう解釈できるだけの材料はない。むしろ厳密な解釈が出来ない、淡い揺らぎの中にこそ、この作品の魅力の本質があるように思える。
『日の名残り』『わたしを離さないで』という2大傑作には及ばないが、その2作にはないミステリアスな魅力に満ちていて、これはこれで忘れがたい魅力を持っている。やはりカズオ・イシグロはぽちぽちと全作品制覇を目指すとするか。
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亡くしたものは帰ってこないけれど。
静かな物語。日本的なものを読みとるより、これが英語で書かれたことで、より一般的にとらえたい。同じ考えを持てる人ではなくても、かみ合わなくても、会話すること。いつか、わからなかった相手のことばが、自分のものとして蘇る。それは痛みを抱えること。
日本語と英語は文法も話法も違うけれど、それはこの話でどう活きているいるんだろうか。この登場人物たちの会話は、英語的に(翻訳された会話のように)思えた。日本人はもっと沈黙で語るようなことが、ことばで(文字で)現れている気がした。
翻訳者が漢字表記を考えたということを、後書きを読むまで考えもしなかった。日本に生まれた人が英語で書いたものを、日本語で読むというのは、果たして物語の解釈にどういう意味を与えるのか。英国で受け容れられたわけを知るには、やはり英語で読まないとわからないか。翻訳という問題にも思いを馳せる。
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とても海外の作家が書いた作品とっか思えないくらい鮮やかあ日本の原風景であり、敗戦によって価値観の大きな変化に翻弄されて混乱する人々の心情を見事に描いていると思う。小野寺先生の翻訳の質の高さという面もあるのかもしれないが。
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「?」なままで終わってしまうエピソード満載で、読後にもやもやしか残らなかった。主人公と緒方さんの関係や、主人公のイギリス人のご主人のこと、景子やニキのこと、などなど。登場人物全員について全く描き切れておらず、がっかりな作品。
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価値の転換に遭遇した人は、どのように身を処せばいいのだろう。
初期3作はこの不条理を私に問いかける。
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日本人である僕にはニキの気持ちは全く理解不能だ。舞台が長崎でありながら、これは日本のドメスティックな小説ではないことを常に意識させられる。今、ニキを容認できる悦子は、佐知子と出会った頃の悦子とは別人になっている。今の悦子は佐知子の気持ちが分かる。だから当時のことを今の悦子が思い出す、そういう凝ったプロットになっている。気持ちのいい本と言えないけど、脳に引っ掻き傷をつけた本となりそう。