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内容は、大戦後、イギリスに暮らす女性の、娘(ニキ)との会話や、日本での生活の回想。女性の心情も、彼女に何が起きたのかも、戦後の日本に対しての考えも、読んだからといって何も分かりません。ただ、それがまた、人づてに話を聞いているような、ある種のリアリティを生んでいるようにも思います。何かが問題な気がするけど、それが何だか分からない。何をすべきだった気もするけど何をすべきか分からない。他人の心情は(主人公の心情すら)読者も想像でしか分かり得ない書き方は、まさに私達の日常で、どんなことも、忘れることはなくても、人生の山も谷も時間に隠れてただ過ぎ去ったこととなるのだなぁ、と。読後感は"日の名残り"と通じるものがあって、カズオ イシグロさんの文章力に敬服します。
話に起承転結を求める人には向きませんが、内面的で心に残る話が好きな人にはお勧め。
作者は、確かハーフで、日本にいたのは五歳までらしいです。幼少の記憶というのは曖昧なものなので、主人公たちの台詞は外人が考えた日本的会話、だそうですが、違和感は感じませんでしたね。
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終戦後の日本.
いろんな価値観が急激に変わったとき.
その流れに乗っていく人と,古い価値観を持ち続ける人.
成功する人,失敗する人.
対照的な人たちが登場します.
また,そうした転換期の女性の難しい立場がよく伝わってきました.
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時代の変化と価値観の変化。新旧上書きされるもの、繰り返し。思い出しながら描くとこんな感じになるのか。長崎弁で訳してくれればよかったのに。
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イシグロの実質的なデビュー作。たんたんとした雰囲気や乾いた会話に、小津安二郎の映画を思わせたが(イシグロ自身も小津作品を観たらしい)、それは池澤夏樹氏も解説で触れていた。訳はやや古臭い。改題前は『女たちの遠い夏』。このタイトルの方が好み。本作品以前の短編もぜひ読んでみたい。
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夏に読み始めたのだけれども、読了までにけっこう時間がかかった…。淡々として、本当に霞がかった遠景を眺めるようなかんじ。これが作風なんだろうけれども、痒いところに手が届かない、すっきりとした起承転結のないストーリー。が、まあ、読了してみれば、これはこれで…とも思うのだけれども、うーん、私の性質にはあわないのかなぁ…。アイボリー監督の映画になっていると、けっこうしっくりはいくんだけれども…。(2002 Mar)
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日本生まれのイギリス文学者。日本の話なのに翻訳されてる不思議。淡々と綴られる物語。一定のトーンで描かれる戦後の日本は、細かい説明がないのに、リアルに胸にせまるものがあります。
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カズオ・イシグロという作家は長崎出身の作家です。
長崎出身の作家が英語で書いた日本の物語を日本語に翻訳して読むという行為は不思議なことのように感じます。
イギリスの日本人作家のお言葉
▲緒方さんは笑って首をかしげた。「どこかよそへ行ってそれなりの仕事をしたとしても、けっきょく」と言いさして彼は肩をすくめると、淋しげに微笑した。「けっきょく、自分の育った土地へ帰りたくなるものなんですな」▲
そして、解説で池澤夏樹はこう述べます。
▲人間は互いに了解可能だという前提から出発するのが哲学であり、人間はやはりわかりあえないという結論に向かうのが文学である▲
読了 2007/8/5
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日本人による日本文学を英語で書いたものを別の人が訳したもの。このとても珍しい状況を楽しめて贅沢。
久しぶりにはまる作家が出た。でもそれは訳者の力かもしれない。次の本を早く借りに行きたい。
物語は戦後すぐの妊婦さんが主役、でも現在のおばあさんになったその人の回想録としての主役。舞台は長崎で復興がだいぶ進んだ状態。だんなさんと二人暮らしでお舅さんがたまたま滞在している。そこに謎の多い女の人と、無口な女の子が登場する。女の子はキーワード。おばあさんになった主役の人はなぜかイギリスに来ていて、ハーフの娘を産んでいて、もうひとりの娘は自殺してしまっている。だんなさんとはうまくいかなくなったのか死別してしまったのかいなくて、そもそもなぜイギリスに来たのかも分からなくて、そのあたりにはまったく触れられず戦後の日本を中心に物語りは進む。やがて静かに鍵は開けられるのだが、その終わりの充足感ときたら幸せといってもいい。よい小説はそれが幸福な終わり方でなくても気持ちを満たしてくれるのだな。
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カズオ・イシグロの長編第一作。後の長編、『孤児だったころ』、『私を離さないで』のようなストーリーのダイナミックさはないが、彩度が同じ。暗い。この作品では、実際に夕方の暗闇のシーンが多く、全体の印象となっているが、その分、夏の日差しが強烈な、猛暑の日の描写が際立つ。また、女性の自立や日本人の戦争への意識など社会的要素が多分に含まれており、メッセージ性が強い。
作者のインタビュー(http://www.globe-walkers.com/ohno/interview/kazuoishiguro.html)で、自身ののアイデンティティーや日本への特別な意識、作家として作品に込める普遍的テーマなど語っているが、いずれの作品にも共通して反映されている。「状況を受け入れていく人間」への興味と愛情、ささやかでも愛の力や希望の光がある。ただ暗く重いだけではない。
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めちゃ暗い話(汗)。長崎に原爆が落ちて何もかも失った戦後の暗い時代を生きた女性の回想録。え、万里子はクビをつったの?なんで悦子さんは縄をもってたの?あそこのシーンだけ「ひぐらし」みたいで怖かったです(汗)。佐知子の生き方も浅はかだ・・・・。
現代になってイギリスに住んでるシーンになっても長女がクビつってるし(汗)。暗い。暗すぎる。
二郎となんで別れたんだとか些末なことが気になります。
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カズオ・イシグロの処女作。イシグロ作品を僕はまだ、3冊しか読んでないのだけれど、長編においては、先に結果が置かれて、読んでいくうちに謎が少しづつ明らかになっていく、ミステリーのような手法はこの本でも使われていて、ページをめくる手が止まらなくなる。正直、オチらしいオチはないのだけれど、万里子と景子は、同一人物?と考えると、主人公がイギリスに向かったくだりがはっきりしていないので、最後、もやもやとした感じが残る。それでも、処女作にしても読ませますね。
…英語で書かれた日本の話を翻訳で読む…。不思議な感じだ。
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最初に私を離さないで,次に日の名残りを読んで,その次に読んだ。日の名残りを読んだときはこの人何を言いたいの?と思ったけど,遠い山なみの光を読んで少し腑に落ちた。日の名残りと遠い山なみの光は,価値観が大きく変わったときのそれぞれの立場の人の暮らし向きの変化や,人々の自問自答というかそういうのを描いたのかもしれないと感じた。
佐知子は正直読んでいて腹がたったけど,ああ,こういう人は私の田舎に確かにいたなと思うし,私に一番似ていたと思う。
登録日時は2010年5月30日だったので,買ってから読み終えるのにずいぶん時間をかけた。
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ある意味、心理戦のような(心のさぐり合いのような)作品だと思った。静かにたんたんと物語が語られていく、そんな印象。
ずっと気になっていながら、読んでいなかった作家さんだけど、けっこう好きかも、この文章。
おもしろかった。
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戦後という価値の転換期に、悦子という主人公の女性と
友人の佐知子の生き方を対比しながら、人生とはいかなるものかということをテーマに描いている佳作。
最初読んだときは、え、ここで終わっちゃうの?って感じましたが読み返してみると、まあこれでいいのかなあと。
あと、佐知子という女性が、あまりに非常識なお友達に思えてならないです。
以上、俗っぽい感想でした。
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カズオ・イシグロ長編処女作。悪くはないが、いまいち。一貫して陰鬱な雰囲気が作品の根底に。ほかのイシグロ作品にあるような、勢いにのって読み進めていくような、トランス状態にはならなかったのが、期待が高かっただけに残念。
原爆投下後、復興期の長崎を舞台にした作品。価値観の揺らぎ。その揺らぎは、読者からみると小さな揺らぎに過ぎないのだが。丁寧に綴られてはいるけど、テーマを盛り込みすぎたということだろうか。