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ある意味、心理戦のような(心のさぐり合いのような)作品だと思った。静かにたんたんと物語が語られていく、そんな印象。
ずっと気になっていながら、読んでいなかった作家さんだけど、けっこう好きかも、この文章。
おもしろかった。
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戦後という価値の転換期に、悦子という主人公の女性と
友人の佐知子の生き方を対比しながら、人生とはいかなるものかということをテーマに描いている佳作。
最初読んだときは、え、ここで終わっちゃうの?って感じましたが読み返してみると、まあこれでいいのかなあと。
あと、佐知子という女性が、あまりに非常識なお友達に思えてならないです。
以上、俗っぽい感想でした。
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カズオ・イシグロ長編処女作。悪くはないが、いまいち。一貫して陰鬱な雰囲気が作品の根底に。ほかのイシグロ作品にあるような、勢いにのって読み進めていくような、トランス状態にはならなかったのが、期待が高かっただけに残念。
原爆投下後、復興期の長崎を舞台にした作品。価値観の揺らぎ。その揺らぎは、読者からみると小さな揺らぎに過ぎないのだが。丁寧に綴られてはいるけど、テーマを盛り込みすぎたということだろうか。
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戦後、日本の欧米化に合わせ柔軟に変わっていく人々と、
変われない(信念の元にかわろうとしない)人々とのコントラスト。
現代の日本人が果たしてどこから来たのか考えるきっかけになった。
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初のカズオ・イシグロ。
文章は上手い。が、話につかみどころがなく、最初はついていくのが大変だった。
慣れてくると、登場人物たちのまるでかみ合ってない会話を読むのが楽しくなってきた。
他の作品も読んでみようと思います。
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戦後、復興しつつある長崎の町で、主人公である悦子が佐和子との出会いを通じ、人生の方向を変えていく。悦子による1人称の語り口ながら余計な心理描写が排除されているので、彼女自身の考え方は控えめな彼女の会話と、並行して進む現在の彼女の姿とから推察せざるを得ない。そのように読者に推察の余地を与えることで、物語に深い印象と奥行きとを与えている。
過去の自分やその考え方と現在の状況との対比という意味では、「日の名残り」に通じるものがある。しかし、本作では悦子と佐和子との完全な符合が若干作為的な印象を与えるので、その辺りが「日の名残り」との違いかもしれない。
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記憶が語る物語。
なつかしく、遠く、
まるで主人公と一緒にその記憶をたどっているような気がしたのは、
新鮮な感覚だった。
知らなくても、どこかで見ている、感じている、
そういう瞬間ばかりが切り取られ、紡がれて、丁寧に差し出されているような長編小説。
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・気になること。全部妄想に委ねられてるの?
悦子と前夫二郎
悦子とフランク
悦子と長崎生活
景子と英国生活
ニキ
佐知子とフランク(実在する?悦子の夫と同一人物?)
・佐知子が異常に感じられるのは、長崎時代の悦子視点だから?
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記憶と回想の物語。今はイギリスで暮らす女性が、戦後の長崎で暮らしていた頃を回想する。女性の微妙な心の動きを描いた作品。読み応えはあるが、今ひとつ気持ちが乗らなかった。
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これも全編にわたって深い悲しみが覆っている作品。娘の自殺の痛みを受け止めようとしている母親が、その半生を回想しながら現実に淡々と向き合っていく。母と娘、女同士の友人など、女性同士の関係の微妙さ、細やかさを、男性である作者が見事に描いているように思う。
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同じ主人公が戦後の長崎と何年か後のイギリスという場所も時代も違う視点で物語が進んでいく。たんたんと物語が進んでいくけれど、内容的には波乱万丈な人生。長崎からイギリスに住むまでの間に何があったのか想像しなければなりません。
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今更ながら、カズオ・イシグロのデビュー作を読んだ。
「日の名残り」や「私を離さないで」を彷彿する作風ではあるが、謎もちょっとハンパな感じだし、深みもあまりなくて、へえそうなのか、と逆にちょっと安心した思い。それでも、一番最初にこれを読んだら、この人の他の作品も多分読みたくなっただろうな、と感じさせる偉大な作家だと思う。
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1つの薄命を丁寧に描いている。
この「遠い山なみの光」は著者のデビュー作らしい。
全体がぼやけていて抽象的な印象である。
話の舞台は戦後の日本である長崎。
その長崎である母と娘と出会うのだが、この母娘は不思議な親子だ。
また戦後の女性の生き方を聡明に描いている。
もろく儚い。
何かにすがっていかなければその当時の女性は生きていけない。
その事実を描きながらも心の移り変わりや女性のプライドなどが儚く壊れやすく映る。
男性の著者が女性の心情を情緒的に表現するのは難しいのに、この著者はデビュー作で心の脆さを描いているから驚きだ。
ただただ繊細。
その中で懸命に生きる女性達の生き様が美しい。
そんな美しい文章を読ませて頂きました。
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長崎ではなくNagasaki の物語。それでもどこか胸しめつけられる郷愁を感じる。そう、多くの日本人にとっても、パラダイムシフトの只中にある戦後長崎は、Nagasakiに他ならない。時代の変化と個人の記憶をめぐる問題は、いつの時代、どこにいても普遍なのだから、当然か。生まれる前に流行った英国のsswの曲に懐かしさを覚えるのと少し似た感覚。
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わりといくつかの大きな謎を謎のまま明かさずに終わった。
そういうのはスッキリしないから、あんまり好きじゃないけど、
この作品の暗い不安定な雰囲気はすごくリアルだし、
やっぱりすーっと頭に入って引き込まれるその文章は好きだ。