紙の本
「幕末の天皇」から。
2011/06/23 22:03
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
それまで光が当たる機会が殆どなかった光格天皇の重要性に光を当てた「幕末の天皇」の著者が、後水尾院から孝明天皇まで取り上げたのが「江戸時代の天皇」である。江戸時代の天皇というと後水尾院は取り上げられる事はあるが、普通は論じられる事が殆どない。
明正・後桜町の両院のような江戸時代の女帝が、如何なる存在だったのか、が興味深かった。両院が古代の女帝と違って中継ぎの天皇であって、女帝であるがゆえに神事や政務に制限があったというのは初めて知った。
南北朝から室町時代にかけて衰微していった朝儀の再興や改元についても、案外触れられないところだ。
ただ何故か、この本は仁孝天皇については殆ど触れられていないが。
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将軍と比しての権力・権威のあり方の説明が面白かったです。
天皇という器と、それに人物が挿入される考え方は、とてもスッキリしていると思います。
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強かった天皇
後陽成天皇と後水尾天皇の幕府への抵抗と手痛い反発
権を失っていたはずが、泰平の時を過ぎる中で少しずつマツリゴトに言葉をはさめられるようになり、いくつかの事柄には強く言葉をはさむことができるようになり、更に形式・名分的には社会の頂点であることが事実として認識が広がっていった
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『江戸時代の天皇』 天皇の歴史06巻
藤田覚
講談社
二〇一一年六月二三日第一刷発行 OIC
ISBN978-4-06-280736-4
第一章 江戸時代天皇の成立――後水尾天皇の時代
1 禁中並公家中諸法度と天皇家の伝統世界
2 朝廷を構成する人びとの暮らしと仕事
3 幕府と朝廷の軋轢
4 江戸時代の天皇と朝廷の成立
第二章 江戸時代天皇の確立――霊元天皇の時代
1 霊元天皇の構想と挫折
2 朝儀再興の時代
◇朝儀再興は幕府次第
◇霊元天皇の朝儀再興努力
◇大嘗祭の再興
◇再興大嘗祭への批判
◇天皇の朝儀研究と禁裏文庫
3 朝幕関係の安定
◇東山天皇の幕府協調路線
◇幕府の経済的支援
◇天皇と将軍の能愛好
◇霊元天皇の院政復活
◇幕府の霊元法皇依存
◇閑院宮家の創設
4 江戸前期の天皇観
◇神国思想と天皇
◇新井白石の天皇観
◇将軍の正当性の根拠
◇天皇と将軍はどちらが上か
◇荻生徂徠の天皇観
第三章 江戸中期の天皇・朝廷――安定と不満
1 活発な朝儀再興
◇大嘗祭再興に積極的な幕府
◇朝廷、新嘗祭再興を希望
◇七社奉幣使の再興
◇幕府財政と朝廷財政
2 宝暦・明和事件
◇尊王論のたかまり
◇神道説の動向
◇垂加神道とは
◇垂加神道と公家
◇竹内式部と公家
◇竹内式部の説と宝暦事件
◇桃園天皇と『日本書紀』御進講
◇神仏習合か仏教排除か
◇門人公家の追放・処罰
◇宝暦事件は尊王論の弾圧か
◇明和事件と山県大弐
3 皇統の不安定
◇短命の天皇
第四章 江戸時代天皇の諸相
1 天皇の日常生活
2 天皇と禁忌
3 江戸時代の女性天皇
◇女性天皇問題
4 武家の官位
◇官位とは
◇武家官位の意義
◇白石と徂徠の危惧
5 江戸時代の改元と暦
6 民衆と天皇
7 外から見た江戸時代の天皇
第五章 朝幕関係の転換――光格天皇の時代
1 光格天皇の政務運営
◇閑院宮家から天皇へ
◇御所千度参り起こる
◇千度参りの目的
◇千度参りと天皇
2 朝儀の再興・復古
◇再興と復古
◇大嘗祭・新嘗祭の復古
◇禁裏御所の復古
◇空前の復古ブーム
◇岩清水・賀茂社臨時祭の再興
3 朝幕関係の緊張――尊号一件
4 大政委任論と江戸後期の天皇観
◇本居宣長の御任論
◇「皇国」の普及
◇松平定信の天皇観
第六章 幕末政争と天皇の政治的浮上――孝明天皇の時代
1 光格上皇にすりよる幕府
◇天皇号の再興
◇天皇号再興の意義
2 ペリー来日と朝廷
3 日米通商条約勅許問題――明治維新への転換点
4 幕末政争と孝明天皇
◇孝明天皇山稜の造営
参考文献
年表
天皇系図
歴代天皇表
索引
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062807364
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江戸時代260年を天皇・朝廷側から見た一冊。江戸初期に将軍の娘を娶ってその座を彼女に譲った御水尾天皇の天皇期・上皇期の幕府との関係、霊元天皇・上皇の儀礼復活の情熱、光格天皇の権力の強化、孝明天皇の朝廷内の権力闘争と幕府との関係、などその時々に朝廷内で何があったのか、特に幕末の日米通商条約を勅許するかどうかの朝廷内の動きと孝明天皇の心中などは、よく他の本に書かれているような「勅許を得ることができなかった」ではなく、ギリギリの交渉・折衝があって、紙一重で勅許が下りなかったんだなと分かる。面白い。