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川端をばかにしていた。ノーベル賞作家はどうも印象が良くない。今まで川端というと「なんか静かで、きれいっぽいこと書いてるだけでしょ?」と勝手に思っていた。でも、全然ちがった。
確かに川端の世界はきれいだ。でも、そのきれいさは「よくある美しさ」とはちょっとちがう。 たとえば「伊豆の踊子」に何気なくはさまれた「通風の爺さん」のエピソードがある。本編とはまったく関係ない。関係ないがゆえに、あのシーンだけが妙に頭にこびりついて離れない。
なぜあの「爺さん」が頭にこびりつくのか? ポイントの一つに心理描写が少ない、ということがあげられる。心理描写がないゆえに「え、これはどういう意味なの?」という謎のエピソードが浮かび上がってくる。それは決して「きれいなエピソード」ではない。でも物語に組み込まれたとき、なぜか不気味な美しさを持つようになる。通風の爺さんのエピソードは、まさにそういうものだった。
収録作「禽獣」にも同じことが言える。この中に、主人公が小鳥の足を口にくわえるシーンがある。何のてらいもなく、男はパクリとくわえてしまう。それはすごく異様な気がする。だけど川端は実にあたり前にそれを描く。くわえるのが当然ですよ、と言わんばかりにくわえてしまう。そのときこの異様な行為が、ふしぎな美しさとともに立ち上がってくる。
もっとも今自分は「小鳥」だとか「爺さん」という、一風変わった例を出した。これらは川端の本領ではないかもしれない。収録作「温泉宿」におさめられたあの「女」たちの魅力が、川端文学最大の魅力かもしれない。ここでもやはり美しいのは、本来美しくない女である。貧相な娼婦である脇役の彼女のことを、忘れられそうにない。(けー)
(注…実は自分は新潮文庫版で読んだ。「禽獣」は新潮文庫版にしか収録されていない)
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不朽の名作。初恋、旅路、限りある二人の時間など、郷愁を誘うキーワードがちりばめられています。ただただ純粋な恋というものは、経験を積むごとに、するのが困難になっていく。だからこそ大人になればなるほど、私はこの作品をますます愛しあこがれるのかもしれません。
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伊豆の踊子の恋の表現は素晴らしいと思います。
両思いになってすごく盛り上がるとか、
別れ際が涙なみだになってしまうとか、
そんな派手なことは全く無いんです。
二人の会話の描写も特には無いですが
間違いなく恋だなぁ、というのがわかります。
空気が伝わってくるとしか言いようがないですが、
それともう一つ感動したの「温泉宿」!
何人もの女性が出てきますが、一人一人を描くのが
本当に上手だなぁと思いました。
女性の目、肌、髪…艶かしさが伝わってきます。
皆が違う人物で、違う性格から出る美しさなのです。
これには感動。
文字を並べたもので空気を伝えるのは
やった事が無い私でも難しい事はわかります。
それをやってのけた作品なのではないでしょうか。
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いわゆる名作と言われる本が苦手。なので、本に関わる仕事をしていたくせに初めて読みました。で、読んだ結果。やっぱり...。言葉が美しく、流れるような文体なんですが、頭の中をさ〜っと流れていきました。ただ著者が14歳の時に書いた寝たきりの祖父の観察&介護の日記が心に残りました。それは自分に高齢の祖父母がいることや、川端康成が血縁の人との縁が薄いことを知っていた為だとは思いますが。14歳であの生活はつらかっただろうな...。
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伊豆の踊り子、意外によかった。淡い恋の切ない感じは時代を越える。温泉宿は、川端康成のフェチっぷりが随所に。
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言わずと知れた不朽の名作である。
書生と踊り子とその一行。
旅の途中で出会い行動を共にしているうちに心がふれ合う。
複雑な事情がありそうな踊り子達だが、それを感じさせずにきれいな印象を与えている。
東京へ帰る書生の流す涙、甘い快さが様々な意味合いにも受けとれるのである。
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川端康成自身が短編を選び、解説を加えたもの。
以下の感想以外の短編も目を通しましたが、
言い回しや、歴史背景などがよくわからず、挫折しました・・・。
☆伊豆の踊子
自分が孤独根性で歪んでいると、反省を重ね、
その憂鬱に堪えかねず旅をしたが、
旅で出会った踊子がとても純粋で可憐であり、
恋愛ともまた違う好意が芽生え、
主人公を心身ともに清らかな気持ちにさせてくれた。
読んでいて、きれいなきもちにさせてくれると思いました。
今のロリコンとかと通じるものがあるのかなぁ。
いや、そんなことは無いはず!
描写がとても美しかった。。
☆春景色
絵かきとその恋人が田舎で生活をする様子を、景観の描写を豊かにして書いている。
ほのぼの日記。
☆青い海 黒い海
第一の遺言
きさ子と婚約出来ず、熱病にうなされた時、りか子に呼びかけてもらった。
第二の遺言
りか子との無理心中。二人でみた黒い海はりか子がしんだ後青い海だった。
作者の言葉
それぞれの遺言の解説
死と恋の描写がとてもダイナミックに感じられる作品。場面が激しく変化し、恐怖や、儚さを感じ、最後にはちょっとした切なさが心に残った。
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伊豆の踊子だけ読みました。
主人公と踊子がくっつくかと思いきや、なかなかくっつかなかったので何とも歯がゆかったです。
最後の船に乗ったときは寂しい気持ちになりました。
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和訳された文章を読んでいるようで全く頭に入ってこなかった。
「名作」との呼び声高い一冊ですが、果たしてどこが名作なのだろうか・・・。
少々理解できかねました。
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伊豆に旅行に行ったので、ベタなチョイスをしました。「伊豆の踊子」は、今まで読んだ川端作品の中では喉の通りが一番良く、快い作品だと思う。ひたひたした暗闇も含んでいるが、そこに染まりきっていない。はじめは伊豆の雨に主人公は洗われ、踊り子一行との交流と別れを経て、自らの涙で洗われる。人と人との関わりと言うのは、どうしても時を経るごとに垢が付いてしまうと思う。そこもひっくるめてが人間だろうが、この作品では踊り子やその家族のような一行と触れ合うほどにその生き方が切なくて、ほのぼのと暖かく、ああ良い人達だという想いが強まる。そばにいるほど心が洗われていく。珠のように美しい作品だ。あとは「十六歳の日記」「招魂祭の一景」「温泉宿」が好きだった。中でも「温泉宿」の酌婦達の行く末の鮮烈さが忘れられない。幾人も女の子が出てくるがハッキリとした印象がそれぞれにあり、お滝・お雪・お清・お咲それぞれに違った魅力が溢れている。お滝とお雪の友情、お清の弱さ、そして最後のお咲が叩き割り砕け散るガラスのかけら。ちょうどこれを読み終わったあと、伊東の東海館に行った。古い閉館された旅館を見学出来るところで「温泉宿」の舞台となった所とは違うが、意匠を凝らした館内には、今でも客の哄笑と料理のにおいがムッと漂ってきそうで、そこここに彼女たちがいるような気がした。
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物書きは、“女”と“食”が書ける様になって初めて一人前だと言われているらしい?。正に この様なお話の事を言うんでしょうか。
美しく 儚く 可憐で それでいて 芯の通った強さを感じる“女(ひと)”。
もう少し勉強して、もう一度通読してみたいと思うう。
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微妙でした。
「伊豆の踊り子」は面白かったですね。
以前に、吉永小百合-高橋英樹版の映画を観たことがあったおかげで、
世界観が映像的にイメージしやすかったからかもしれません。
ただ、やっぱりこの人は文章がスゴク上手いなあ、と。
それ以外は、なかなか微妙。
「伊豆の踊り子」も川端康成が若い若い頃の短編なんですね。
それ以外もこの短編集はすべて、どうやら川端康成の超・若い頃の短編集。
で、この短編集の中で伊豆の踊り子だけが有名なのは、納得がいきます。
映画になっているから、ではなく、コレだけが映画になった、ということ。
踊り子一行の無垢な、でもなかなか苦労の絶えない存在が、(少なくとも男性読者には)華やかさと癒しと感傷が持てますね。
そういうコト含めて、娯楽的なんですよね。
それ以外の短編は、雑に言うと、暗いんですよね(笑)。
それでもって、素直ではなくて。ちょっと難解。
正直、ブンガク好きな若い人以外は、ココロから楽しむことはむつかしいのでは・・・。
川端康成さんは孤児で、まあ不幸な生い立ちなんですね。
それが彼の文学の根底にあることは事実で、
それがこの短編集を読むとよくわかります。
それはさておき、僕の読んだ範囲では、川端康成さんの文句ない傑作は、
「山の音」ですね。
オモシロイです。人間の心理がドキドキです。
映画も、スゴクイイ映画です。
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十六歳の日記ーー死にゆく祖父の姿がリアル。老いた家族に対する気持ち、介護されている老人に対する気持ちは今はわからないものだけど、参考になった。ーー私は忘れられた過去の誠実な気持に対面した。しかし、この祖父の姿は私の記憶の中の祖父の姿より醜かった。私の記憶は十年間祖父の姿を清らかに洗い続けていたのだった。ーー死者の叡智と慈愛を信じていたから。
招魂祭一景ーーお光の日々、現の身が哀れに荒めば荒むほど、夢は美しくなりまさる。でも、もう夢と現との架け橋なんぞ信じはしない。そのかわり、望み次第の時に、天馬に跨り空を夢へ飛ぶのであった。
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昔、伊豆へ旅したときの風景や空気を思い起こしながら読みました。
仄かで優しい人と人とのつながりが丁寧に表現されていて、決して大団円というわけではないラストシーンにも、なにか清々しい印象。
「旅は道連れ」を地で行く物語ですが、現代ではなかなかあり得ないよなあと思うと、少し寂しい気持ちになりました。
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登場する女性たちが非常に上品でキレイなのが印象的であり、谷崎とはまた違った女性の描き方だな、と感じさせる。