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後書きで北上次郎さんが主人公松坂熊吾について記述して言い得ているのでメモする。『やくざも恐れぬ獰猛さを持ちながら涙もろく、事業の才覚は鋭いくせに自ら進んで人に騙されるお人好し。さしたる学歴はもたないのに古今東西の書を引用し、妻を愛しながら次々に愛人を作り、さらに嫉妬深く、真摯で、知的で、ひとことで言えば、野放図ないかさま師』
田舎に引きこもったので物語としては静かなものになるかと思ったら、増田伊佐男というヤクザが彼の邪魔をするし、横領した井草を尋ねたり、ダンスホールをつくったり、選挙参謀をしたりいそがしい。動くたびに周囲の人が亡くなっていく。
松坂熊吾の造形がとにかくスゴイのだが、出てくる人物、事件、風景とも魅力的で細かく小説家見てきたような嘘をつきの嘘のクオリティがとにかく高い。なんというリアリティ。
『いなかというところは、保守性とか閉鎖性などという言葉でひとくくりにしてしまえない底意地の悪さがうごめいている。思いも寄らぬ陰湿な噂話はたちまちひろまるが、耳に痛い真実は頑固に拒否し、つねに数の多いほうに味方し、体制におもねり、権威に平伏し、人々の顔と腹はいつも異なる。熊吾は、四国の辺鄙な地にある己の郷里を決して愛していなかった。それどころか、ほとんど憎悪していたと言ってもよかった。』
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体の弱い妻と息子のために大阪での商売をやめ、神戸御影の家も売り払って、故郷愛媛の南宇和へ帰ってきた熊吾。ここでも存在感あるキャラを発揮する。暴れ牛ややくざも恐れぬ獰猛さを持ちながら、涙もろく人情深い。裏切ったやつでも、あの野郎と思いながらも手をさしのべずにはいられない。会社の金を猫ばばして逃げた男が見つかった。しかもそいつは仲間の女にも手を出していたと聞き、怒りに震えながら会いに行ったはずなのに、不治の病で臥せっているそいつの顔を見るや情がわいて、高額な薬を送ってやるとか、恋人を裏切ってそいつの愛人になった女にも援助の手を差し伸べるとか、なんせ助けが必要な人をそのままにはしておくことができない、困った人だ。
しかし、このおっさんの長ーい話にあと7話分もつき合うかどうか……それほどワクワクするような話でもないしなぁ。3話めからはまた大阪に戻って新しい商売を始める。うーん、もうどうでもいいなぁ。
でも南宇和の昭和の情景はとっても良かった。海、川、畑、山、豊富な自然の中で、熊吾が怒りに燃えながら自転車をこいだり、息子とのんびり歩いたりしている光景が映画のように目に浮かぶ。5歳の息子が肥溜めに落ちてフンまみれになった。嫁の房江は素手で鮎をつかみ取りできる。そんなちょっとしたエピソードも心に残る。とりわけ、親子3人で星空を眺めに夜風吹く野原を歩くシーン。熊吾は5歳の息子を肩車し房江と手をつないで歩く。暗い中、花の香りが漂ってくる。その後は息子ひとり家に帰らせ、夜空の下でコトに至るわけだが……。もう故郷に戻ることはないだろうと決心した後の田舎の風景はキラキラ輝いている。
熊吾は時々哲学的になる。例えばこうだ。
子は親を選べないのではなく、子は親を選んで生まれてくるのだ。ならば、その二人の男と女を両親にしなければならなかった理由とは何だろう。…とかね。
もうひとつこの話に入り込めない理由のひとつは、作者の女性蔑視的な視点が垣間見えること。熊吾が狙った女は必ず落とせると自信を持ってることもそうだが、例えば第二部では「釈迦は、生涯にぎょうさんの経を説いたが、法華経以外の経では、二乗(インテリ)と女人の成仏を説かんかったそうじゃ。どんな女も本質的に嫉妬深くて、愚痴っぽくてどろどろの欲望につつまれとるそうな。しかし、もっと掘り下げて女の特徴を見ると、どうも女っちゅうもんは、非はいつも相手にあり、何か事が起こると相手のせいにし、自己反省っちゅうことをせん。」などと言わせてる。えらい言いようだ。釈迦の説法でそういう言葉があるのかもしれないが、解釈はまったく作者のねじ曲がった考え方だと思う。
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この手のおじさんは苦手なはずなんだが…
何故か今のところそれほどしんどくない。
そしてさらに、本を読まない旦那に
「読んでみたら?」
と薦めてしまいそうだ。
まだ教えてあげないが。
なんでだろう?
第3部へ
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「何がどうなろうと、たいしたことはありゃあせん」
大好きな女房をぶん殴るのだけはやめれば良いのに、とは思っていたが、はたまた。
退屈なページがない不思議な物語。
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病弱な息子のために大阪の事業を畳み、故郷の伊予に帰った松坂熊吾。
彼と妻の房江、彼らを取り巻く人々。
そして40年前の熊吾への恨みを晴らすために現れたやくざ者の伊佐男。
熊吾は彼とどう対峙していくのか。
圧倒的なキャラクターの熊吾が、美しい伊予の景色の中で描かれる。
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五十歳をすぎてようやく授かったわが子は非常に身体が弱かったので、大阪での事業を処分して、故郷愛媛の南宇和に戻った熊吾。
それから2年、伸仁は健康になり、妻の房江もまた田舎の生活になじんでいるようで、このまま南宇和で生涯を過ごしてもいいと思いはじめる熊吾。
しかし、そこに現われたのが、子ども時代の熊吾との相撲のせいで片足に一生残る障害を負った「わうどうの伊佐男」だ。
特別に残虐な極道となった伊佐男の執拗な嫌がらせに、不穏な空気が全編に渡って漂う今作は、しかしなかなか読みごたえのあるものだった。
一年の間に熊吾の周辺にいくつもの死が訪れる。
それは悪いことが起きる予兆のようでもあり、運命の動く転換点のようでもある。
主人公である熊吾は、器が大きく、先見の明があり、情に篤い人間であるが、反面、短気で暴力的な面もあり、一言では言えない複雑な人物造形はとても魅力的である。
第一部で、学のないのがコンプレックスと言っていたが、その割には古典や漢文の造詣も深い。
今は、一人息子の伸仁を無事に成人させることが生きる目標となっている。
南宇和では人々は貧しく、狭い人間社会の中で、息苦しかったり足を引っ張りあったりもするが、最終的には助け合わねば生きて行けないのだ。
熊吾はそれを踏まえながら、故郷の人々に金を貸し、力を貸し、知恵を貸す。
そのことがまた、新たな物語を創り出していく。
いろんなことにけじめをつけて、時間は熊吾がまた大阪に戻ってくる。
波瀾万丈な物語はまだ続く。
仏教では法華経以外の経では、二乗とと女人も成仏を説かなかったのだそうだ。
女人はさておき、二乗とはインテリのこと。
なぜ二条は成仏できないのかについての熊吾の見解。
”インテリは、他人のことに無関心なやつが多い。他人のために自分の心を傾けたり、他人の苦労を思いやって、何かを行動するっちゅうことがない。いっつも傍観者で、そのくせ屁理屈を並べて、自分よりも知識のない人間を腹の底では見下しちょる。まあ、つまりエゴの塊みたいで、そういう手合いは成仏できんちゅうんじゃ。”
最近はインテリじゃなくてもそういう手合いはいるなあ、と思った次第。
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第二部
舞台は南宇和郡一本松村。
愛息・伸二の五歳までの成長を軸に熊吾が己の人生の意味を模索する。
異常な執念で熊吾への恨みをぶつける地元のヤクザ・増田伊佐男との再会。
伊佐男の画策した闘牛をキッカケに出会った深浦港の網元・和田茂十の、県議選出馬に伴う選挙参謀としての活動。
茂十の罹患…そしてその死。
妹・タネとその情夫・政夫の為にお膳立てしたダンスホール。
政夫の転落死。
ついに、長きに渡って絡み続けた伊佐男の自死を経て大阪へ戻る決意を固める。
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宮本輝氏のご一家がモデルの大河小説第2部。妻子の健康のため、一度郷里に戻った松坂熊吾らを描く。第1部から続いている、戦争を弾劾する姿勢は胸を打つ。
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なぜかわからないけど、すごく話しに引き込まれる。すごく奥行きがあり、人物がいきいきとえがかいるからかなぁ。
ただ、前巻に引き続いて主人公が、妻に暴力をふるうシーンだけは嫌な気分になる。
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この物語は愛媛県南宇和、城辺の熊吾の
故郷での物語。伊佐男と言うならず者が
小さい頃に怪我をさせられたらことを
根に持ち嫌がらせをしたりする。
所々熊吾の行動が可笑しくて笑ったり
しました。この人の本は3冊目、
面白かった
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人間の複雑さ、極まれり。ゴタゴタとした中で、徐々に熊吾が、房江の人物が立ち上がってくる。
感動的な場面があったかと思うと、裏切る様に短絡的に動く熊吾。支離滅裂で、非常に賢いところと、非常に愚かなところと。様々な感情と側面が同じ人間の中に同居しており、そんな人間が集まって、すったもんだしている。
いっ時の言動は、大事だが、それらは表層的なものであり、それらを生み出す性分、変えられない業が人間にはあるということか。
作中で、宿命、環境、自分の中の姿を見せない核という、三つの敵について熊吾が考察するところが秀逸。人間の言動は、意識的なものだけでなく、これらによって影響制限を受けていることを、自覚することも、大切なのかもしれない。
二巻に入り、ようやく読み慣れてきて、小説世界に段々と没入し始めている。様々な、教訓めいたエピソードが随所にでてくる。
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男と女みんなスケベ。スケベに始まりスケベで終わる。スケベが人生を狂わせる、そんなスケベ劇場に心震えます。人類が誕生してから何一つ変わってないんでしょうね。正に不◯倫は文化と言う世界。石田純一さんお元気でしょうか、神田正輝さんも心配です。
正に課長島耕作ワールド。
因みに昭和30年ごろの金沢大学が舞台になったシーン、もちろん城内キャンパス、学生時代の風景が目に浮かびました。
まだまだ続きまっせ!(オモロー!
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第一部に引き続き、一気に読んでしまった。
主題がありすぎるんだけど、ごちゃごちゃしてない感じがすごい。次も楽しみ。