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市場主義と道徳という,かなり深いテーマなのだが,それほど目新しい切り口で解説しているわけではなく,期待していただけにちょっと残念だった。
でも,最後まで面白く読めたことは事実。
確かに現代社会はなんでもお金で買えるようになってきており,お金が恵まれない人たちとの距離をどんどんと隔てていく感があるのは否めない(特にアメリカは日本よりも顕著なのかもしれない)。
罰金と料金の考え方等はなかなか面白いね。
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貨幣経済への投影という形でしかモノの価値を測れなくなった退化した人類の姿がそこにある。美徳と言われていたものは衰退し、貧富の差は拡大する。貨幣というモノサシそのものの有効性は否定できないが、これに頼りきるのは非常に危険なように思う。
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すべては金で解決できない。
資本主義経済は世界の市場を豊かにしてきたという嘘に、市井の人たちも気づき始めている。
だからこそ、こういう本も出てきたのだろう。
スーパーマーケットで手に入るものだけがお金で売られているのではない。
驚きのあまり読むことが止まってしまうような物事さえ金額を付けて売り買いされている。
お金で取引することが行き過ぎて、恐るべき歪みが生じている。
そしてそのお金を得るために無理をして働き、心身を壊し、自殺も増え、家庭や人間関係は崩壊する。
もう、「マネー」はやめにしないか。学歴やキャリア、収入と、人として必要な衣食住を得ることを天秤にかけるのはもう終わりにしようではないか。
抑圧され続けたサバルタンの声が、この本の行間から聞こえてきそうに思えてならない。
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以前から市場主義にはある種の”うさんくささ”を感じていたが、本書を読んで、それは”おぞましさ”へと変わった。
アメリカにおける事例を元に書かれているが、それは程度の差はあれ、日本でも同じ事。
本書に明確な答えと解決策が提示されているわけではない。それは我々一人一人が考えなければならないことなのだから。
是非多くの人に本書を読んで、これでいいのかどうか、真剣に考えて欲しい。
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市場主義の問題点として不公正と腐敗(倫理観)の2点を指摘した本。
もんやりした自身の不快感の源は、この観点で追究すればよいのかとクリアになった。一方で、だからどうする?という提言がなかったのが残念。批評にとどまっているように感じられ、物足りない。そこは期待しちゃいけないところ?
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現代社会のあらゆる場面に浸食している市場主義について、実際のケースを元にして様々な考察を繰り広げる1冊
サラリーマンをやっていると、マーケティング的な思考を追求してしまいがちではあるが、心の底ではその仕事の「本質的」な価値に疑問を抱くことも少なくない
その根源的な違和感がなぜ沸き上がってくるのか、この本を読むことで明確に理解することができる
市場経済主義にまみれて生きて行くか、人間としての本質的な価値を追求していくのか、この本を読んでいる間はそんなことを考えてた
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人と人が価値を交換するところに市場は生まれる。交換の平等性を担保するには双方の持つ資産に価格を付ける必要があり、一度値付けされてしまえば、マーケットの海に放り込まれお金でそれを買うことができる。
では値付け可能で需要と供給を満たすあらゆるものは交換していいのか?というのがこの本の命題。
要するにお金は一見資産の価値を表しているようで、資産はお金とは別に発声する価値があり、それが交換対象にされることへの禁忌とも言えるだろう。それは主に「道徳」という形でも表現されるが、「人の命」や「思いを込めて名前を付ける権利」「行列に並ぶ権利というフェアネス」「何かをしようとするインセンティブ」などが禁忌の対象にあたる。
何よりも注意すべきは数値化されてしまうことで人の心も変化するということだ(主にインセンティブがこれにあたる)。もともと人を助けたいと思って始めた仕事が売上至上主義になったり、趣味で始めた仕事が金儲け主義になったり、それ自体は悪いことではないが、知らずのうちに人のモチベーションをすり替えてしまう効果があるというが非常に恐るべきところだ。
我々が求める幸せとは何だろうか?家族の幸せな顔を見たい、誰かに優しくしたい、世の中を良くしたい、そこから始まったモチベーションはいつの間にか「いいレストランで食事をすれば家族は幸せになる」になっていないだろうか、「いいレストランで食事をするにはお金が必要」になっていないだろうか。確かにお金を回すことで我々は生活している。しかしその流れに(無自覚に)心までが持って行かれては意味がない。特に売上や利益と言った数値目標を達成したり(させたり)、金銭により強いインセンティブを得ている人には面白い発見のある本だろう。
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こんなものをお金で売っていますよ、あなたはどう思いますか?というのが初めから終わりまで続いていた印象。
こういったことについて考える機会があまりなかった人や、どういった事例があるのか知りたい人にはいいかも。
昔、ある歌手が「金で買えないものなどないが、僕もあなたもものじゃない」と歌っていたのを思い出さずにはいられなくなるような一冊。
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想像以上にアメリカの拝金主義的化は進んでいるようだ。
「お金で解決できること」がこれまでになく増えている。
刑務所のアップグレード、ハイウエイの相乗りレーンを走行する権利、妊娠代行サービス、アメリカ移住権、主治医の携帯番号。教育の現場では本を読む度に2ドルを与えたり、成績優秀者に報奨金を出すなど「インセンティブ」で学習意欲をつり上げる。果ては有名人の死に投票したり、生命保険を債券化して金融機関が売るという末期的症状。これらはすべて「本人の意志で行われ」、「他人に迷惑をかけていない」以上、従来の経済学では「正しい市場経済の一貫である」と判断できる。著者はそれに異を唱える。「倫理」や「道徳」まで金に換算するべきではない。それらに値段を付けた途端にモラルは低下する。「腐敗」が始まるのだ。すなわち人間の精神を「傷付ける」可能性が高い。
その通りだと思う。だがこれでネオリベラリストたちを説得できるとは思えないのが残年だ。彼らは涼しい顔をしてこれらを称賛するだろう。
どうしたら彼らを論破できるのだろうか?
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市場の論理に照らせば、売手と買手が合意の上で、双方がメリットを得るのだから、どんなものを取引しようが問題ない。しかし、金で取引されることで失われるものがあるとサンデルは語る。それは取引されるモノが道徳に関わる時だと。
例えば人の生命に関わる話であり、医療を受ける優先順位が金銭によって取引されるべきなのか。例えば、人の死によって他人が特をするような用務員保険やバイアティカルは、他人の死を賭けの対象とし、他人の死を望むような許されざるギャンブル=デスプールと何が違うのか。
そして、興味深いのは、保育園で親が子供の迎えに遅れたら罰金を科して遅れをなくそうとしたという話で、罰金を科したら逆に遅れる親が増えてしまい、その後に罰金をなくして元に戻そうとしても、遅れる親の数は元に戻らなかったという話だ。罰金を払うことで保育園に迷惑を掛けるという罪悪感は軽減されてしまい、一度軽減された罪悪感は簡単には戻らないということだろう。つまり、金で取引されることで失われた何かは戻ってこない。これを「腐敗」という。
そして、道徳は愛情と同じように使うほどに育つものだとサンデルは語り、美徳は供給に限りがある希少資源であるから市場にできることは市場に任せて、美徳の消耗を抑えるべきだと言う経済学者達を切って捨てる。
愛情が消耗しないように愛しあうことを控えた恋人達の愛は深まるだろうか、子供に愛情を注がない親の方が愛にあふれているだろうか。そんな馬鹿なことはありえない。美徳もまた然り。ボランティアに勤しむ学生が社会貢献に無関心な大人になり、そうでない学生が社会貢献に熱心な大人になるだろうか。そんな馬鹿なこともありえない。
愛も美徳も使うほどに育ち、金銭で取引されれば腐敗する。経済学者が幅を利かせ、市場主義が支配する、損得でものを考える社会に生きたいか。それとも、美徳を大切にするような社会に生きたいか。結局のところ市場の問題は、実はわれわれがいかにして共に生きたいかという問題なのだ。
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"お金で買えないもの" ばかりを重視する考えには違和感がある。
対価を支払ってでも手に入れたい対象には、そこに至る願いとか努力といった価値が含まれている訳で、その価値を十分に認めた上で初めて、そうでないものの素晴らしさが成立する。両者は表裏一体であり不可分。
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お金で買えないモノは無い。と言った某経営者ではないが、それでもお金で買えないモノがあることや、公共の場所、聖域とされている箇所をお金で買う事の裏にある、非道徳や腐敗に目を向けさせる為に、代理母、命名権、生命保険の買い取りなどを例に、自分の感じる、何となく嫌。と感じる原因を明らかにする。
罰金と捉えるか、費用と捉えるか。費用と捉えると、罰金では無く、免罪符に変わってしまい、そこから腐敗が始まると言う説明は、なるほどと唸った。
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「これを売買するのはいけないような…」と違和感を感じるようなことを細かく分析していて、漠然としていた理由を結構はっきりさせてくれる内容。
身近で市の命名権売却というタイムリーな問題もあったので、興味深く読めた。
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何でも商品にするアメリカにビックリです。有料にすることによって効果が下がる場合もあるというのも、面白かったです。
お金に換えることばかりに気を取られ、大切なものを失くしていくんでしょうね。
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あるものに値段をつける、市場に持ち込むことは、そのものが持っいるテロスに腐敗や堕落を持ち込まないかを考える必要がある。単に功利主義、自由主義的に問題ないということでは十分ではない。道徳的な観点での議論が必要だ。