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【090614】鬼に金棒
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「いぬに……」
確かそのとき私は女に尋ね返した。
「はい。」
女は、強く、はっきりと答えた。
再会したのは何年ぶりだろうか。
仕事が面白く、気がついたらいまだ一人暮らしだというが、充実した女としての魅力があった。
そして、唐突に私はその女に望まれたのだ。
「それでは、私には桃太郎にでもなれというのだろうな。」
苦笑しながら冗談交じりに私は問うた。
「いえ、むしろ鬼になっていただきとうございます。」
今どきとは思えぬ言葉遣いで女は断じた。
「鬼か……やさしいから。」
私は呟いた。
「はい。」
女は、ふたたび、強く、はっきりと答えた。
この数年の間に女に何があったのか。
何故、『いぬ』に。
そして、何故、私に『鬼』になれと。
女をみると
じっとこちらを見詰めている。
「受け入れていただけますか。」
問いかけに苦慮していると女はごそごそとゼロハリをテーブルに置いた。
「金棒です。金棒が入っています。鬼になれます。」
女はその言葉と共に小さな鍵を差し出した。
「鬼になったら人には戻れぬのだろうなぁ。」
テーブルに置かれた銀色のケースと小さな鍵をみて私は言葉にした。
「いぬも人には戻れません。」
女は小さな鍵と私の手をとると私の掌に鍵を置き拳を握らせそっと手を重ねた。
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霧の七郎
五年目の客
密通
決闘
あばたの新助
おみね徳次郎
敵
夜鷹殺し
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盗賊にも善玉と悪玉があり、前者は密偵になることもある。黒白でわりきれない機微を味わえる。11.7.18
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この巻では、様々な理由で犯罪に手を染めてしまう侍を見つめる平蔵のまなざしが印象的だった。
『あばたの新助』
平蔵の部下の一人が、女盗の色仕掛けに抗えず、盗賊の手助けをしてしまう。部下は、責任を取って女盗を捕え、自害しようとするが、盗賊達に殺されてしまう。火盗改メの一員が盗賊に手を貸すというのは前代未聞の御法度だが、平蔵は残されたも者達に配慮し、その部下を名誉の殉職として周りに伝える。
『夜鷹殺し』
実直でまじめな侍が、悲しみと絶望と憎悪によって異常殺人鬼に変貌してしまう。その姿をみた平蔵は、「人のこころの底には、なにが、ひそんでいるか、知れたものではない」と言い、「ひょんなことで、このおれだとて」とまで言う。そして、そのような殺人鬼に対しても、その最期まで武士としての誇りを守るチャンスを与える。
人間の弱さを認め、その死に様を無下にすることをしない鬼平の振る舞いに瞠目。
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新登場のおまささんが健気で好きです。霧の七郎と密通も意外な展開がきいて面白かった。毎度長谷川平蔵の粋なはからいにグッときます!
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「あばたの新助」火付盗賊改方同心の佐々木新助が大泥棒の女房に色目を使われてつい気を許すと、そこにつけ込まれて盗人一味から脅され火盗改メの市中巡回日程を密告してしまう。
新助が仕事・女・金、責任と誘惑の中で揺れる姿は現代と何ら変わらず苦悩に満ちている。
そんな中、お頭の平蔵は最後まで部下の新助を信じ、不正が分かった後でも自分の中だけに収め、捕物で死んだ新助の活躍を讃えこそすれ、不正を表沙汰にすることは無かった。
平蔵の無念は大変なものだったろう。しかしいかに良い環境にいてもうっかり道を誤る事があるのも人と言うものかなぁ。
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久しぶりに読み出したら、面白い。こんな面白いものをなぜ放っておいたのだろう。道東旅行にも持って行ってしまった。
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20120902 鬼平シリーズは登場人物が多彩で面白い。何度でも繰り返し読めるのはその時の気分で誰に感情移入するか変わるからかも。
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やはり、江戸を舞台にした方が、鬼平のキャラクターが、
浮き立っていい。
鬼平が、どう判断するのかというところが、
鬼平の人柄というか、モラルがあって、楽しめる。
盗みは、リーダーによって、かなり、人となりが出る。
いぬとしての おまさの活躍が、鬼平への思いもあって、
危険なところまで、踏み込んで行く。
血闘での、犬の仕事。囮捜査としての夜鷹になる。
鬼平にためには、死をもいとわないというのが、
にじみでてくる。
おみね徳次郎のコンビは、お互いの素姓を知らず、
相性がいいことが、仇となる。
上杉謙蔵の腕は確かだが、外見で判断される。
そのことが、自分自身も浮かばれない。そんな悲哀がにじみ出る。
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収録されている話は、
「霧の七郎」、「五年目の客」、「密通」、「血闘」、「あばたの新助」、「おみね徳次郎」、「敵」、「夜鷹殺し」の八篇。
この巻で「おまさ」と「大滝の五郎蔵」が登場する。
TV版を散々見ていたせいか、「おまさ」は梶芽衣子のイメージ。これはピッタリな配役ではないかと思った。
事件の年代は話ごとに前後するため、年表が欲しくなる。
「夜鷹殺し」は「切り裂きジャック」を想起させる。
巻末の解説、必要だろうか。女性には鬼平の良さはわからぬ、と決めてかかる書き方は70年代ではまだ当たり前だったのだろうか。
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4巻まで読んだのでひとまず鬼平はお休み。
同じような物語が続くので、飽きないようにいろいろ工夫して読んだのだが、どれもうまくいかなかった。
ま、そのへんのところは今度ブログにでも書こうと思う。
ちょっと他のジャンルに浮気するけど、必ずまた鬼平に戻ってくると思う。
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この前、多分初めて鬼平をテレビで観ました。今だから、じっくり観ることが出来るのかもしれません。若い時は黒か白かどちらかはっきりしていないと許せない気持ちでしたが、今は灰色もありだと思っているし、むしろ灰色のことの方が多いということも分かっています。だから、鬼平いいです、とても。
悪いことをした人にも救いがあるというか、罪を犯したことは悪いけれども、それを裁くことが良いとは限らないという柔軟な始末のつけ方がかっこいい!平蔵の周りの人間も、そんな平蔵だから慕っているというのを強く感じた巻でした。
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時代小説。鬼平シリーズ4。短編8作。
「霧の七郎」「五年目の客」「密通」「血闘」「あばたの新助」「おみね徳次郎」「敵」「夜鷹殺し」
江戸に戻り再び火付け盗賊改方に任ぜられた平蔵。
平蔵の長男・辰蔵や妻・久栄の伯父天野彦八郎など、平蔵の身内の者が関わる事件が多い。
あと、平蔵を慕ってやまないおまさが登場。「血闘」以降、「夜鷹殺し」など密偵として働くことになる。
連続して読まないと人物関係の把握が少し難しいが、適度な補足もあり次第に鬼平の世界へ引き込まれていく。
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「霧の七郎」「五年目の客」「密通」「血闘」「あばたの新助」「おみね徳次郎」「敵」「夜鷹殺し」。
今巻は平蔵とそのしたで働く密偵たちの話がメイン。なかでも「血闘」で垣間見るおまさの一途さがいじらしい。おまさは良い女だ。そして平蔵の懐の深いこと。
「あばたの新助」では、女色におぼれ、〈密告者〉になりさがり横死した部下の、いわゆる“暗部”をおのれの胸ひとつに秘めて便宜を図る。一度限りと決めながら、思いきれなかった過ちが起こした悲劇の物語に、鬼平の差配が加われば人情あふれる物語になる。
何度でもいう、鬼平は理想の上司だ。
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火付盗賊改の密偵たちそれぞれのキャラクターも大体つかめてきてより面白くなってきました。今回仲間?になった上杉謙蔵やおまさや五郎蔵もすごくいいキャラで、とくに平蔵を慕うおまさがいじらしくてたまりません。
登場人物を忘れてしまわないように次々読みたいけど急いで読むのは勿体無いのでやっぱりじっくり読んで行こうと思います。
「あばたの新助」で自分の密偵たちの中にスパイがいることに心を悩ませて、その事実を最後まで自分の胸にしまっておいた鬼平さんの懐の深さが染みて、本当にこんな上司の下で働けたら幸せだろうなぁと思いました。
今日たまたまCSで鬼平の再放送がやっていたので見ていたら、中村吉右衛門じゃなくて丹波哲郎が鬼平さんやっててびっくりした。
あとがきで紹介されていた「食卓の情景」も読んでみたい。