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「スーパー301条」という言葉を覚えているだろうか?
戦後アメリカ追随で進んできた日本だったが、アメリカから制裁を受ける事態を日本人はどのようにうけとめようとしていただろうか?自分を守ってくれる親でもあり、親友でもあるアメリカが日本を敵視する事実に動転して慌ててすり寄ってしまった。
多くの日本人が疑問をもたずに思い込んでいることがある。
「民主主義国アメリカは共産主義国の中国よりも同じ民主主義の日本の仲間」
「これまでのやりかたでこれからもうまく行く。今の不調はこれまでのやり方が正しい路線からずれているため。」
著者の孫崎亨氏これらが幻想であることから話をひもといてゆく。
「中国がアメリカを抜く大国になる」
「核の傘はもう存在しない」
「アメリカは日本を守らない」
「日本は中国には勝てない」
「北方2島や尖閣諸島、竹島の領有を主張する日本の根拠は薄弱」
等、すでに明白な事実が日本人の多くにはまだ見えていない。
アメリカは日本の友達であると信じたい気持と、そうである保証などなくなっている事実の間で、ひたすら集団で現実逃避に走る日本人。日本人の常識は単なる思い込みにすぎず、不愉快な現実がより事態を直視できなくしていることを伝えることがこの本の主題である。
著者はこう述べている。「単純な話、今日、日中でどちらの政治指導者が、それぞれの環境を前提にした中で、それぞれの国を正しい方向に導く能力を有しているか。残念ながら、筆者はとても『日本の政策が中国よりも国益に合致した政策である』と言えない。」(P166)
またこう問いかける。「『中国は民主主義体制でない』と批判する人々は、日本と中国のどちらの政策が『公共の利益のために行使されているか』を問えばよい。」(P168)
私が思うに、第三国の人から見ればこの問いの答えは明らかなのだが、多くの日本人にはにわかには理解できない、また受け入れたくない「不愉快な現実」なのである。
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孫崎さんは外交官OBで、するどい分析だなと思っていた。
職場の本屋の棚から新刊を購入。
不愉快な現実。
(1)米国はアジアの交渉の中心を日本から中国に移した。
(2)アメリカは、日本のために本土がやられるため、日本に核の傘をかけることはない。
(3)自衛隊だけでは現時点ですでに中国軍に対抗できない。
この不愉快な現実の中で、日米同盟でアメリカの尻にくっついていた日本は、外交戦略を練り直さなければならない。
まず、自分にできることとしては、中国だけでなく、地政学上重要なベトナム、タイ、インドネシア、オーストリアなどの太平洋諸国との連携を強めていくことだと思う。
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個人的に軍事や外交関係の理論を構築する際に、孫崎氏の主張は大変参考にしている。
以前読んだ『日米同盟の正体』とも合わせ、日本がこれから構築すべき外交戦略をしっかりと道筋立てて述べている。
結論を先に述べると、日本は中国や北朝鮮、ロシアなどの隣国と過度な敵対的態度を取らず、相手側の主張や言い分も理解したうえで、建設的に外交努力を目指すべきとしている。そして、最終的には米国追従一辺倒だけでなく、東アジア経済圏の中でプレゼンスを発揮すべきと主張する。
米国追従では、日本は極めて危険な状態に置かれる理由は複数ある。
(1)日本の経済の将来性は、対米から対中へと一層シフトし、外交で対立しても全くメリットがない。
(2)同様に米国もアジアの貿易の中心国を中国とし、安全保障の面では警戒しつつも、次第に貿易の依存度を高めている中、中国に対しては友好な態度をとる戦略に変わっている。
(3)中国の軍事力は圧倒的に強く、ここで日本の軍事力を高めても意味がない。一番重要なのは、お互いに譲歩を引き出しながら、中国との友好な関係を樹立することだ。
領土問題、経済問題、色々あるけれども、もっと普段のメディアで報道される問題に対し、冷静な判断材料を与えてくれる孫崎氏は、あらためて貴重な存在だと思っています。
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まさに、タイムリーな一冊。多くの日本国民が、たとえ賛成はしなくとも、著者の提示する事実と主張を読んだうえで日本の外交戦略を考えてほしい。
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近年の日本の安全保障事情の解説と分析。基本書的位置づけ。
日本の一般大衆が抱く日米同盟の「誤認識」を指摘し、米国のアジア戦略における日本の位置づけが、中国の軍事的経済的台頭によって変わっていることを、日本の安全保障事情の歴史的な背景と変遷を含め様々な情報を駆使して詳しく解説・分析している。また、日本の今後の安全保障戦略を考える上で、企業戦略の視点を導入しているところが面白い。
残念なのが、今後日本が取るべき安全保障戦略内容の具体性に欠ける点だ。伝統的な日米同盟関係維持から脱却し、東・東南アジア諸国との関係改善に努めるという方針は賛成だ。だが、それを示しただけでは日本の今後の安全保障戦略について分析したことにはならない。次はこの点を深めた孫崎先生の見解を、是非、出版して頂きたい。
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特に8,9章が星5。
外交は単純なものではない。
白黒つければ良いというものでもない。
紛争を起こさないために、グレーのままにしておくのも一つの方法。
尖閣諸島を東京都で買うことに何か戦略があるのだろうか。
この本にあるように、領土問題はこのまま棚上げして、
この地域を両国間で有効に活用するのが、よりよい対策に思う。
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この手の本を読むと、提言は分かったけど、個人としてどうすりゃいいの?と思ったりするわけで、この本も例外に漏れなかったりします。
ただ、この本の価値は、「ゼロサムの結果と非ゼロサムの結果」の図に尽きると思う。
あの島は我が国の領土的な白黒はっきりさせるのではなく、こっちの主張に加え、相手の主張もよく聞くことで、対立を避け、妥協や問題解決に導くことができる、という考え方は広く応用できると思う。
まあね、領土問題とか、そんな冷静に話せることじゃないんだろうけどね。
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『日米同盟の正体』を読んで、孫崎さんの考え・意見に興味を持ったので2冊目。昨今の中国の大国化とそれに対応する米国の政策転換、そしてこれからの日本の生きる道について。この本でも孫崎さんは日本の政治政策に危惧を抱いている。『日米同盟の正体』同様、孫崎さんの考えには納得できてしまう。ただ、『日米同盟の正体』より少し読みづらかったように感じた。
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アメリカしかみていない外交をはじめ、国際問題をどう見るべきなのか、筆者の思いと現実社会との落差を強く感じました。
アメリカ絶対主義的なところを打破していくために、私も努力していきたいと思いました。
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知ろうとせずお人好しからの脱皮を。ウィン・ルーズからウィン・ウィンへ、リアリズムから複合的相互依存の関係へ。客観的事実、現実直視。
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左寄りの、日中、日ロ、日韓共存論。
アメリカがすでに、日本を緩衝材としての中国政策をオフショアバランシングとしているというのはままあることだと思う。
中国の軍事力、GDPを冷静に直視した時に、日本が考えられる行動を客観的に分析し、かつ、最も有用な策を練る。
そんな行動ができないのは、WW2から一向に進歩してないということか。
ただ、だからといって、手放しで中国やロシアと友好関係と行くとも思えない。
両国民の間にある不信感や敵愾心を超えて、Win-Winの関係にするのは並大抵ではないと思うので、その対応策なども論じて欲しかった。
読後、右から中道右派ぐらいには振り戻ったかな。
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日米関係はソ連を封じ込めるために始まり、今日においては中国との距離感でその価値が語られるのもやむを得ない。米国から見れば、2010年代においては日米よりも米中かもしれないし、 日本はオフショアバランシングの駒の一つに過ぎないのかもしれない。日米同盟を金科玉条と奉じる人々に対し、筆者はそんな不愉快な現実を突きつける。
もう一つの不愉快な現実、それは日本には中国との軍事紛争を戦う力はないということ。福沢諭吉以来の脱亜入欧の時代はもう終わり、しかし日本人の心の底に残る中国蔑視感。それでも経済でも国際政治でも軍事力でも、最早中国には敵わない。そんな中領土問題で一方的に敵がい心を燃やす危うさ。
筆者は言う、相手の主張に知ろうとしない姿勢は危険である、と。
中国にも自国の中核的利益を東シナ海や北朝鮮でなく対米軍事プレゼンスでもなく、国内治安や経済建設にあると考える勢力はある。そういう人々と手を結び、という発想も、領土問題にも平和的な解決手段があるという知恵も、従来の日本には欠けていた要素だけに興味深く読むことができた。
まぁ、筆者は筋金入りの懐米論者とお見受けするので、そうと知って読む必要はあるけれども。
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台頭する中国と、それによる日米関係の変化についての本。
タイトルになっている「不愉快な現実」とは、アメリカが日本よりも中国を重視し、日本だけが一方的に取り残されるという事態を指している。
外交やパワーバランスについて、専門書を引用しながら書かれていて、日本を取り巻くアジア問題の入門書としてオススメ。
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孫崎 享 (著)
日本人が国内で「願望」を語っている間、周りの状況は刻一刻変化している。しかも我々が望まない方向に…。将来必ず起こる「中国が超大国として米国を抜く」事態を前提として、日本の生きる道を探る。
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福沢諭吉が「脱亜論」において、「支韓両国は数年以内に亡国となり、諸外国に分割されることは疑いの余地がない。よって、支韓と伍するのを脱して西洋の文明国と進退を共にするべきである」と喝破して以来150年もの間、戦前は軍事力において、戦後は経済力において、日本の国力はずっと中国を上回っていた。けれども、近い将来中国の経済力は米国をも追い越し、超大国として君臨することになる。軍事的にも、もはや日本が中国に対抗するという選択肢はありえない。このような状況の中で、米国は東アジアにおいて、日本よりも中国を重視するようになってきている。一方の日本はといえば、経済は停滞したままであり、少子高齢化には歯止めがかからず、国力は衰える一方である。明るい話題はなにもない。まずはそれを認めた上で、では日本はどのような道を進むべきなのだろうか?
ASEANは、イスラム教、仏教、キリスト教国を含み、多様な民族・価値観を内包する共同体である。それにもかかわらず、今やASEAN諸国間で軍事衝突が起きる可能性は極めて低い。著者は、ASEANの叡智に倣って、日中韓で「東アジア共同体」を形成すべきだと説く。
中国は経済的に日本を追い越したとはいえ、それは単純に人口が多いためだ。一人あたりで考えれば、依然として貧しいままである。(一人あたりGDPがブルガリア、トルコ、メキシコ並みになれば、中国の経済力は米国を追い抜くことができる。)貧富の差・地域格差は拡大し、環境破壊は甚だしく、共産党の独裁が続く。そして国内には、政府が「核心的利益」と主張するチベット、東トルキスタンという大きな民族問題がくすぶる。そんな中国の覇権は長くは続かず、きっとどこかで破綻するに違いないと思ってしまう。
けれども、中国では伝統的に権威を重んじ、権力は「天」から授かったものとみなす。したがって、(善政を行っている限りにおいては)民主主義体制でないことは中国民衆にとって問題ではないのかもしれない。共産党が国内の不満を抑え込むためには経済成長を続けるしかなく、そのためには外国との経済的結びつきを強めるしかない。そうすると、中国は外国に対して宥和政策を取らざるを得ない。ということは、意外に中国はずっとこのままなのかもしれない。それがまさに、「不愉快な現実」なのである。