あなたが大切なものはなんですか?
2009/10/26 11:40
12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひさしぶりに山本文緒のエッセイを読んだ。
今回の文庫には、単行本にはない「空白の日々」の書き下ろしが掲載されている。
さて、「再婚生活」のレビューに入る前に、少し長くなるけれど、彼女の以前のエッセイ「かなえられない恋のために」から抜粋させて頂く。
<ひとりの人間が経験できる出来事はとても限られている。世の中には何ヶ国語も操り、世界を飛び回っては偉業を成している人間もいるけれど、それはごく少数の才能と体力と使命感に恵まれた人だけなのだ。
誰だって自分の手の届く範囲でしか生きていない。それは恥ずかしいことでも悲しいことでもなんでもないのだ。短い一生のうちに関わることができる、ほんの少しの人間、ほんの少しの仕事、ほんの少しの本。それをないがしろにして、なにができるというのだろう。自分の目に見えるものしか信じないとか、受け入れないとか、努力をしないと言っているのではない。あれもこれも欲張っているうちに、自分が本当に知りたいことが何であったかわからなくなってしまっていたのだ。人間ひとりが持っているバイタリティーやエネルギーには限りがある。それを漫然と使っていたら結局何も手に入らない。
自分の好奇心に正直になること。持っているものを大切にすること。
そう感じることができて、やっと私は幸せな気分で昼寝をしたり、本を読んだりできるようになった。それが、ただの時間の無駄づかいではないことを知ることができたから。
人は何事かを成すために生きてるんじゃない。何も成さなくてもいいのだ。自分の一生なんて、好きに使えばいいのだ>
もちろん、この文章を書いていたころの山本氏は現在より年齢も若く、立場的にもずいぶん違う。こんな昔の文章を引き合いに出すのは間違っているのかもしれないが、私はこれを読んだ当時この言葉を抱きしめていきたいと思った。それは今も変わらない。
単行本に対しては厳しい反響もあったようだ。「恵まれている人に病気を語ってほしくない」とか、「甘えすぎているのではないか」とか。
社会的に恵まれている立場。作者のように好きな仕事ができてお金もあって周りには優しくサポートしてくれる人間もいる。この「立場」が、人々の反感を買ってしまいやすいのだろう。
なぜ。このような「恵まれた立場」の人間がうつに陥ってしまうのか。
そのあたりの、原因に対しても赤裸々な告白があれば、もっと共感を得られるし、価値のあるものになるのではないかと、ものたりなさを感じたため★はみっつ。
「病気」ひいては「悩み」というのは、その辛さは本人しかわからない。他人と分け合えるものではない。でも、「体験記」というものには、その人自身が体と心の両方を使って得た大事なメッセージが含まれている。
本書は、「なぜ、あの人が」と思うような、身近な人がうつに陥ったときにひらけば、当事者の心理や葛藤を読み解く手ほどきとして非常に有効なのではないだろうか。
この本を読み終えたときに、冒頭の抜粋の言葉がよぎったのだ。
自分にとっての大切なもの。そしてそれに対する態度。距離感。緊張感。
改めて考えさせられたし、もっと大事にしていこうと思った。
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山本文緒のエッセイは好きでよく読みます。
が、この本は少しヘビー。
精神的に不安定な人は引き込まれるので読むのをやめましょう。
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ちょうど自分が落ちていた時に読んだので、随分助けられる。山谷を繰り返しながらオブラート剥がすように、少しずつ良くなっていく様子が、訥々と記されているからだ。
日記はだんだん良くなっていく様子に、ほっとしていくが、日記の後に書かれている丸三年間の回顧録が、実に興味深かった。ここには本当のところの状態が記されている。情緒不安定で死にたいと思う死ね死ね団に襲われているという日記には書けなかった事を知ることができる。こちらを最初に読んで、日記を読み返すと、興味深い心のうちを知ることができるかもしれない。
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作者の日記エッセイ。「うつ」とともに苦しみながら、時に楽しみながら日々を送る姿に共感を抱いた。気分的に落ち込むことはよくあるけれど、立ち直れるのは身近に救ってくれる、支えてくれる人がいてくれるからこそなんだと実感した。今の自分にとって救いのような本になった。
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こんな重い病気を抱えていたなんて知らなかった。
単行本も買ったけど、文庫で加筆されていたから、
また買ってしまった。
何かがものすごく私のアンテナにひっかかる。
支え、支えられる夫婦関係が、
映画の「ぐるりのこと。」みたいだった。
旦那さんの、奥さんを信じて支え続けている姿に、
ものすごく感動した。
ほんとに壮絶な時期を乗り越えて、今があるんですね。
また新たに歩み始めた山本さんの小説、読みたいです。
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これがそうなのか。
「王子」なる人と、山本文緒の関係に
耳ならぬ目がいたくなる思い。
この人の小説読んだことないので、読んでみようと思います。
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【内容】
「ほんの少しの起きている時間で、パン一枚だけ食べて、書かなくちゃならない原稿だけ死ぬ思いで書いて、猫の世話だけは何とかやって、あとはとにかく臥せっているしかありませんでした」望んだ再婚生活なのに、心と身体がついてゆかない。数回の入院生活と自宅療養、うつ病をわずらった作家が全快するまでの全記録。克明な日記の、2年2ヶ月の空白期。書けない時期に何があったのか―。文庫化にあたり60枚を加え、重症期の闘病を明かす。
【感想】
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身内にうつ病患者がいるだけに、危うい作者の行動は正直ひやひやしながら読みました。
でも元気になってよかった、と、ほっとして読み終わりました
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単行本でも読んだけど、
ダルサ指数は、同病として使えるなあって、思う。
上手く、説明出来ないことを書いてあると
診察時に使わせてもらったりする。
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山本文緒サンが鬱病だったとは知らなかったので、衝撃が有った作品。
エッセイも好きだけど、小説の方がもっと好きです。
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エッセイ類はめったに読まない私が、夢中になった本。
「うつ」になったことはないが、どんな症状なのかとても伝わる本。
日々の生活や夫とのかかわりなど、かなり赤裸々で個人的で、ちょっと私生活を覗いているようで、興味深くもあり、ちょっとヘンな感覚になった本。独特の読後感だった。
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山本文緒は元々好きな作家だったけれど、うつ病の話は暫く知らなくて、この病気にかかってから読んだ本。
彼女はとても周りの人に恵まれたのだなあという事が良く分かります。
本人も大変だけど、周りの人間はもっと大変だものね。
優しいダーリンとお友達に囲まれて、少しずつ立ち直っていく筆者の姿は、私からしたら物すっごく羨ましい。
私にはお金もないし、支えてくれる人もいないし。
でも悪い事ばかり考えていてはいけないんだなあというのは頭のどこかで理解する。
理解するけど納得しない辺りが私の性格の悪さを垣間見れるんだけれども(笑)
私の病気は正確には鬱ではないけれど、立ち直れた人と何が違うのかなあっていつも考える。
病気は人それぞれ違うから、正確な答えはないのだろうけれど。
後がきにもあったが、ここまで冷静に自分の不調を書き止める事が出来た、作者の『作家』という職業が大きく働いた事に疑問の余地はない。
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追い詰められた精神状態の中で、公にできることとそうでないこと、読者に誤解されそうなこと、家族や友人への影響など考えつつの推敲は、ものすごくエネルギーを要する作業だったと思う。
と同時に書くことがセラピーとして働いていた面もあるだろうし。
プロとして、こんな客観視しづらいことに真正面から向かった著者に拍手。でも、読みつつ自分も精神的にどんどん落っこちていってしまったので、かなり危険な、取り扱い注意な本だと思う。二度と読まない。でも読んでよかった。
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作者の闘病記、、、のようなもの。
私も情緒不安定になることがある。
あるのに、他人の心の病を
本質的には受け入れられない。
頭では分かっている。ただそれだけ。
そんなことを改めて思った。
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気が滅入っているときに読んでしまう本。
そういうときに救われる、とかでは決してないけど、淡々としているところがいいのかな
滅入った気持ちをゆっくりゆっくりさらに沈めて、いらない感情がはげ落ちて、うまくいくとちょっとだけ浮上できる
私にとってはそんな本