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【概略】
自負心が脈打っている。13年間のプロ野球生活を支えてきた「マウンドを守る」という自負心、その自負心、ブルペンで肩をつくる投手を見て傷つけられた。「なにしとんかい!」と江夏は心の中でつぶやいた。そんな江夏を救ったのは「オレもお前と同じ気持ちだ。ベンチやブルペンのことなんて気にするな」と江夏に声をかけた衣笠だった。1079年11月4日(日)小雨降る大阪スタヂアムでの日本シリーズ第7戦広島初の日本一を導いた「江夏の21球」をはじめとする日本のスポーツノンフィクション。
2020年09月09日 読了
【書評】
ちょっと野球関連の書籍、それもピッチャーを中心としたゲームの機微がどんな形で描かれているかを知りたくて手にとってみた。自分の野球経験は、小学校で友人とゴムボールとプラスチックバットでやった程度。プロ野球鑑賞をちょっとするぐらい。強烈に印象に残っているのは伊藤智仁選手かな。
恥ずかしい話、山際淳司さんの作品を読んだのはじめてなのだけど、凄いね。野球選手に限らないスポーツ選手の光と影を見事に描いてる。だからといって影(?)というか、一線を退いた(または退かざるをえなかった)選手についても、魅力的に描いてる。
モスクワオリンピックへの日本を含めた西側諸国不参加という政治的な要素に振り回されたスポーツ選手不遇の時代というのもあって、現代のアスリートとはまた違った「匂い」を行間から感じさせる。
個人的には棒高跳びの高橋卓巳選手にスポットライトをあてた「ポールヴォルター」のトーンが好きだったなぁ。高橋選手ご自身が、平凡な中学生から棒高跳びの選手として、まさしくポールの高さがあがるかのような選手としての成長をとげていく様子がよかった。決して恵まれた体格ではなく、でもその体格と置かれた状況を理解し、本当に1センチずつあがっていく様子がわかるような、そんな光景が目に浮かぶような描き方だった。ちなみに棒高跳びって「pole vault」っていうのだね。だから棒高跳びの選手は「pole vaulter」なんだね。
タイトルとなっている「スローカーブを、もう一球」も、リズムがよくて、イイ。読後感がまるで美味しい紅茶を飲み終わったスッキリ感がある。ここでも「ポールヴォルター」と共通するのが、取り上げられている投手が速球派ではないこと。アスリートだから体格や筋力などの先天的な要素に恵まれてたりするのは良いことだけど、そうじゃなくても戦えるんだよってところにまた凡人としては惹かれるよね。
将棋の駒のように、色々な動き方があって、色々な局面でその存在意義は示されるのだよってのを感じた一冊だった。
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スポーツ・ノンフィクション。叙情的でリズミカルな文体がくせになる。
「八月のカクテル光線」(高校野球)
「江夏の21球」(プロ野球)
「たった一人のオリンピック」(シングルスカル※ボート)
「背番号94」(高校・プロ野球)
「ザ・シティ・ボクサー」(ボクシング)
「ジナジウムのスーパーマン」(スカッシュ)
「スローカーブを、もう一球」(高校野球)
「ポール・ヴォルター」(棒高跳び)
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山際淳司を知ったのはNumberの「江夏の21球」。ノンフィクションの再録だったかなぁ。いずれ、他の作品も読んでみたいと思っていました。店頭で見かけて購入。
「背番号94」「ザ・シティ・ボクサー」が心に残りました。
どちらも、王道をゆく物語ではないので、読んでいる最中はもやもやしていました。爽快感や悲劇性があるわけでなく、雑に言ってしまえば御涙頂戴ではないんです。
ただ、全ての物語が、わかりやすい栄光と挫折であるわけではない。自分の好みの物語があるわけではない。「江夏の21球」がドラマティックなだけに、そう決めつけて読んでいたのかもしれません。期待が決めつけになってしまっていて、先入観が多分にあったんでしょう。
収録されている8作は、どれも1980年のもの。昭和の臭いも感じることができます。体罰・しごきという言葉が普通に出てくる場面もありますから。
それが当たり前だった時代は、確かにあったという事実。語り手も聞き手も読み手も、そこに疑問を感じていないというところが、遠い遠い過去の感覚になってしまうのだけど。40年前の出来事に、心動かされることがあるのは、スポーツに期待しているものは、変わらないのでしょう。この先もきっと。自分はね。
体罰・しごきの是非を問う作品でもないですしね。ふと思ったのは、いつか将来には、現代の表現にそぐわないと言う理由で、注意書きされちゃうのかなぁ。
差別的な表現とされて使われなくなった言葉には、巻末や巻頭に注意書きあったりしますからね。風俗のことをトルコと言っていた時代なので、表現そのまま収録で、それについてのコメントがありました。
かつて、使われていた言葉は、そのまま収録して欲しいと思います。作者が変更するのであれば別かと思いますが、グインの1巻のように。
勝手に改竄されて無かったことにしてしまうのが、一番良くないことと思います。
過ちをただした過去があるのなら、それを提示することが大事だと思うので。
難しいことで、一朝一夕にどうにかなるものではないですけども。自分も無意識にあ過ちを犯しているとも思うし。
成長、進歩するには、大事なことと思うのです。過ちを振り返ることは。とらわれてはいけないですが。
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無名選手から江夏まで、様々なスポーツ選手の一筋縄では行かないスポーツ人生を描く。
千葉県佐倉市のクロダは、得意な野球を武器に、農業高校へ進学する。それほど強豪校でもなかった高校で、才能あるピッチャーとして活躍するも、大事な試合の直前に飲酒をしてしまう…。
なんというか、スカスカの文章で、NHKのプロジェクトX風のナレーションを延々読まされているような気になる一冊である。ひどい人生だろう。どうだ感動するだろう。そういう畳み掛けが続くため、あまり野球にも興味のない読者としては、くどいと言わざるを得ない。
野球以外の、ボートやスカッシュという変わった題材もあり、そういうほうが行き場がなくなって就職するなど、読みどころはある。
スポーツ雑誌のコラム的に書かれている、記者の文章なのかもしれないが、無名選手がうまく行かなくて挫折して就職、その後にもう一度試みるが…という話を、実話をベースに小説化するなどしたほうが良かったのではないかと思われるところが多々ある。
ま、あと「くどい」と言わせしめるのが、変なカッコ使いが多いところ。なんで会話にそのカッコ?強調もカッコ?という部分が多く、読むペースが最後までつかめなかった。これは自戒も込めて。
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ノンフィクション短編集です。
この中の たった一人のオリンピックに
かなり衝撃を受けた
大学へ行き、落ちぶれてしまった
男性が突然オリンピック選手を目指す話
スポーツがすきな方は、ぜひ。
ノンフィクションは読むのが苦手
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様々なスポーツを題材にしたルポ集。簡潔でありながらカッコ良い言い回しが多い。たった1人のオリンピック、スローカーブをもう1球が好き。
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「山際淳司」の、スポーツノンフィクション作品集『スローカーブを、もう一球』を読みました。
「山際淳司」作品は、昨年12月に読んだ『みんな山が大好きだった』以来ですね… スポーツ関係の作品が続いています。
-----story-------------
たったの一球が、一瞬が、人生を変えてしまうことはあるのだろうか。
一度だけ打ったホームラン、九回裏の封じ込め。
「ゲーム」―なんと面白い言葉だろう。
人生がゲームのようなものなのか、ゲームが人生の縮図なのか。
駆け引きと疲労の中、ドラマは突然始まり、時間は濃密に急回転する。勝つ者がいれば、負ける者がいる。
競技だけに邁進し、限界を超えようとするアスリートたちを活写した、不朽のスポーツ・ノンフィクション。
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野球(高校野球とプロ野球)、ボート、ボクシング、スカッシュ、棒高跳び… 多彩なスポーツノンフィクション作品6篇が収録されています
■八月のカクテル光線(原題:465球目の奇跡)
■江夏の21球
■たった一人のオリンピック
■背番号94
■ザ・シティ・ボクサー
■ジムナジウムのスーパーマン(原題:壁に向かって打て)
■スローカーブを、もう一球
■ポール・ヴォルター
スカッシュや棒高跳び等、普段、馴染みの薄い競技も含まれており興味深かったのですが、、、
たったひとつの落球… ホームランを打ったことのない選手が、延長戦までもつれた試合で放った一球… 1979年(昭和54年)夏の甲子園の3回戦、延長18回で決着した「箕島」対「星陵」戦で両軍に訪れた勝機とピンチ… 人生を変えてしまった一球、一瞬を描いた『八月のカクテル光線』、
日本シリーズ最終戦、日本一が決まる試合の9回裏… 「近鉄バファローズ」最後の攻撃で「広島カープ」の抑えの切り札「江夏豊」が投じた21球を描いた『江夏の21球』、
「長嶋監督」が直々に高校を訪問して「読売ジャイアンツ」にスカウトした一人の少年… 投手としては大成することなく、バッテイングピッチャーとして過ごすことになった「黒田真治」の生き方を描いた『背番号94』、
野球経験の乏しい監督のもと、熱心さに欠けるエースがスローカーブを武器に快進撃を続け、ついには春の甲子園の切符まで手にしてしまう… クレバーな「高崎高校(タカタカ)」のエース投手「川端俊介」の活躍を描く『スローカーブを、もう一球』、
個人的に好きな競技だということもあり、野球を熱かった、この4篇が印象に残りましたね。
「広島カープ」ということもあり、『江夏の21球』は以前から大好きな作品なのですが、、、
面白かったのは表題作でもある『スローカーブを、もう一球』ですね… 予想外の連勝に、ミスまで作戦と思い込み、相手チームが慌てる様子がコミカルに描かれ、良い味を出していましたね。
何度でも読み返せる(実際に私も今回は20年振りくらいの再読です)、スポーツノンフィクションの名著… スポーツファンなら必見の書ですね。
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「江夏の21球」目当てで手にとりました。
日本シリーズ最終戦、9回裏1点リードもノーアウト満塁の大ピンチ。
広島のストッパー江夏、相手バッター、監督、野手、それぞれの1球ごとの心の動きをインタビューでふりかえることで、緊張感あるドラマが紙上に再現されています。
その他の短編も秀作揃いです。