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女って怖いgkbr。読んでる間ずっと薄ら寒さを感じました。
男を手玉に取る女達の恐ろしさやエロティシズム、業をまざまざと描写した中篇2編を収めています。
最初の「誰にでもできる殺人」は、とあるアパートの一室に越してきた男が、押入れの隙間に隠された一冊のノートを見つけることから始まります。
そのノートにはその部屋にこれまで入居してきた人々が綴る奇妙な体験談が綴られており、彼等の話の中心にはいつも1人の女性がいて・・・っていう、何とも分かりやすいオムニバス形式のサスペンス・ホラー(?)。
奇妙な住人、奇妙な事件、奇妙な符号。
真実に限りなく近い印象を持つ読者のもどかしい気持ちを高めながら、次々と悲劇的な結末を迎える住人達の数奇な人生が、視点を次々と変えながら語られていくのが面白い^^そしてあのラスト^^
あんまり意味を成さない見取り図があるのもご愛嬌ですね^^
二編目の「棺の中の悦楽」は、初恋破れた男が、曰く付きの大金を使って女達を弄ぶ話なんですが、最後に意外な展開があったり、意外な人物が男の人生を破滅にまで追い込むっていうラスト数ページの件^^主人公ドンマイ
あれ・・・今回ただ内容要約してるだけじゃん・・・
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『太陽黒点』が非常に面白かったので、もっと騙されたいと思って購入(笑)
中編「誰にも出来る殺人」と「棺(かん)の中の悦楽」の二本立て。
共通しているのは、恋心を持て余した男の悲しみ、といったところで、
どちらも切なく、やるせないけれど、愚か者の悪あがきがシニカルな笑いを誘う。
■『誰にも出来る殺人』
舞台は昭和30年代の場末のアパート「人間荘」。
二階建てで、部屋は全部で16室。
12号室の新しい借り主が押し入れに残された厚いノートを発見し、読んでみると、
その部屋の歴代の住人の中でノートの存在に気づいた者による手記が綴られていたが、
それは単なる日記ではなく、いずれもこのアパートで起きた「事件」の記録だった。
だが、読み進めるうち、語り手は、どこかがおかしい……と勘づく。
タイトルは「誰もが誰かを殺したがっているかもしれないこと」を表している。
少し読み進めた辺りで「ははぁぁん」と、ある可能性に思い至るが、
動機というか、背後に隠された事情は、最後までわからない。
エピローグの不気味な余韻が怖い。
■『棺の中の悦楽』
後ろ暗い秘密と多額の現金を抱えた男が三年間でその金を使い切って死のうと考える。
秘かに想い続けた女性に勝手に操を立ててきた鬱憤を晴らそうという気持ちもあって、
大金をダシに女を取っ替え引っ替え……と言っても、
根が生真面目なせいか、何かと妙な展開になってしまうのが、物悲しくもおかしい。
そして、待ってました!――の、どんでん返し(笑)
丸尾末広先生がマンガ化したら面白そう。
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アパートを舞台に人間関係の綾が織り成す傑作ミステリー。下宿人に書き綴っていくという形式は面白い。もう一編のリレーの如く女に次々と金を使っていく話といい読者を飽きさせない。
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傑作中編(約200頁)が2つ入ったお得な一冊。
『誰にも出来る殺人』
ボロアパートを舞台にとある部屋を借りた住人たちが、自らの身に起きた出来事を一冊のノートに綴っていき、やがてそれは一本の線になる…
という山田風太郎が得意とするスタイルのお話。
よくもまあこれだけ沢山の種類の人間をかき分けられるなぁと感嘆。
山風の人間観察力は恐ろしい。
『棺の中の悦楽』
じつはこちらの方が好きだったり…
とある男が自暴自棄になり莫大な預かり金を女に使ってやろうと散財するお話。
ミステリとしてよりかは、人間ドラマとして楽しむのがいいでしょう。
ラストの何とも皮肉的な幕引きは無常感だけが残る。
山田風太郎って容赦ないなぁ…
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2015年3月30日読了。山田風太郎のベストコレクション、独立した短編が最終的に一つのお話に収斂される「連鎖式」物語2編を収録。両者に漂う昭和風味・スポーツ新聞の連載小説を読んでいるような下世話なオッサン感覚はクラシック感満載だが、特に「棺の中の悦楽」のピカレスク風味と、最後に読む側の価値観も揺さぶられるような展開には恐れ入った。切り合いや超常能力の登場しない、現代を舞台にしたミステリ小説でもこれほど面白いとは、山田風太郎はやはりすごい。
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『誰にも出来る殺人』アパートの押し入れに隠されていた手記。次々と住人が変わる毎に話が展開していき……と物語の連鎖が大変私好みの中編でした。
『棺の中の悦楽』こちらは悪漢小説ですね。ドラマチックな展開でしたが、ミステリ度は低めでした。
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何冊目かの山田風太郎。ほんと素晴らしい。ほんとの物語作家だ。これを読んでしまったら、そのへんの小説なんて薄っぺらくて読めやしない。それほどに。
人間の醜さや狡猾さや情念や、様々な人間を描き出すこの物語たち。「誰にも出来る殺人」「棺の中の悦楽」の2編の短編連作が収蔵されている。どちらも面白いが、特に「棺の中の悦楽」にはやられた。序章から充分に興味を引き付ける舞台設定で幕を開け、途中のエピソードで人間の様々な在り様を見せつけ、終章でこれ以上ない皮肉で締めくくる。この苦さよ!!これこそ物語であり、小説の一つの頂点ではないかとさえ思わされた。素晴らしかった。
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「棺の中の悦楽」目当てで購入。「誰にも出来る殺人」はすでに読んでおり、これが山田風太郎得意の書簡体小説だが、「棺」はそうではない。「棺」の方が後に書かれたせいか、初期のミステリ作品に比べ、人物や場面の描き方が丁寧になっているように感じた。もしくは、これまで読んできた作品が、語り手の独白が中心のものが多かったから、そうではなく三人称で描かれることによって、そう感じたのかもしれない。個人的には、第三の花嫁に手を出せずに躊躇するところ、第四の花嫁をいたぶり、それをただ見ている無力の夫に自分を投影する箇所が面白かった。
自分としては過去最高級に面白かったが、読書会で発表したところ、受けは微妙であった・・
あらためて考えればやはり山田風太郎は娯楽小説の域を出ないのだろうか?いや、そうでないと思う。主人公は決して特異な人物として描かれてはいない。むしろどこにでもいる、「誰にも出来る」、「誰にも起こりうる」こととして描かれている(こんなに破天荒な内容に思われても)。「誰にも出来る殺人」にあったように、人は殺し合い犯しあい歴史をつくってきた存在で、人間とは生まれながらに愚かなのだ、教育では如何ともし難いのだ、と山田風太郎じしん、わかっていながら、やはり愛すべきものとして人間を描いているのだと私は考える。
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え?山田風太郎を読んだこと無いの?
と驚かれて、この本を読みました。
何故?今まで読まなかったの?
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※誰にも〜は廣済堂版で先日すでに読んだので、ここには、評判をきいて手にとった、同時収録の棺のなかの〜の感想を書きます。
すごく面白かった!
主人公が特殊な状況にいるのに、わりと普通の感覚を失わないので、そこに好感が持てた。
期日までに大金を使い切る、というテーマはインド映画にもあったなぁ。人間の夢だよね。
この場合は破滅的な理由から始まるので、主人公は鬼気迫る想いなんだけど、3年の期日はけっこう長くて、そのあいだに、感情が動く様子も面白い。
自棄になって、けっこうすぐに本心を明かしてしまったりする。
6人の花嫁たち、そのドラマ。どの女たちも一種の理想だし、みんな最後にはあっぱれの覚悟を見せてくれる。
主人公よりよほど男前なわけ。
速水の顛末は想像がついたけど、最後の台詞のどんでん返しは最高だな!
山田風太郎のストーリーテラーとしての力をこれでもかと見せてくれた本作、むちゃくちゃ気に入りました。
面白い設定だなーー。
この1500万は、今で言えば億単位なんだろうね。
男のロマンであるところの幻想的な、女と金と時間。
この世は淡い夢のようなものだ。
ラストで現実に叩き落されるさまは痛快でもあるし悲哀でもある。
オチの書き方も素晴らしかった。大満足。