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第1章 彼女たちはなぜ男に求められなくなったのか
90年代に日常的に使われた「お持ち帰り」「セフレ」という言葉が今では聞かれなくなった。
男は「自分より優秀な女の子だと引いてしまう」が、「社会で認められたい」という要求を持ち始めた女性は自分に劣等感を与えない相手を求める。男女ともに正社員層は自分よりも収入やキャリア面で見劣りする相手を選びたがる。
20代女性は「君たちの個性は価値がある」「社会の中で活躍しろ」と教育されてきたために自分のプライドを殺すことができない。経済的な安定よりも自分のプライドを優先する。
「彼女が求めるのは、人柄が優れて、包容力のある彼氏なのではない。二人で向き合った時に自分に劣等感を与えない相手である」(p.38)
「無理して、自分を変えることをしなくても彼女たちは満たされて生きる方法を知っている。そういう知恵を身につけた彼女たちは、いくら経済力があっても、自分を変えようと圧力をかけてくる男性にはなびかない。自分を変えないで交際できる相手。それが彼女たちが求める男性なのだ」(p.55)
第2章 複雑すぎる女子大カルチャー
女子大の就職率が高いのは「本当に女子が欲しいと思っている企業が求人を出すから」。しかし女子大の人気は低下している。
若者の対立軸は男vs女ではない。「ギャル(チャラい男)vs オタク」という文化の対立である。だから「気が合わない同性よりは、気が合う異性」の方が友人として相応しい。
「楽しい充実した生活を送るためには人間関係が必須であり、ならば、男子も女子もいる学校の方が『友達が出来やすそうだ』と考えるのだ。このような理由で女子高生たちは、女子大よりも共学を求める」(p.76)
「20代の女性にとって『付き合う』『交際する』というのは、『手を繋ぐ相手』『毎日電話で話す相手』『セックスをする相手』でもない。恋人とは、「つきあおう」という契約の言葉を交わした相手ということになる。その契約の言葉がないと彼女たちは相手がどんなに大切にしてくれようとその男性を『恋人』と認識しない」(p.79)
「女性が求めるのはまず友達、そしてその中で一番仲が良い男性と交際していく。それが今の女子のステイタスなのだ」(p.88)
そのような時代に敢えて女子大に進学したのはなぜか。そこには就職の良さを重視する女性と玉の輿願望を持った女性がいる。
「男子学生との和気藹々と楽しいキャンパスライフを選ばず、就職の良い女子大を選択した女子は、将来のことを考えた『地に足がついた』人たちであろう」(p.88)
「『チャラチャラした服装』の彼女たちだが、インカレに入って男漁りなどはしない。学内の体育会系サークルや社会活動のサークルに参加し、授業には真面目に出席する。もちろん、成績はいい。彼女たちは日本を代表する大手企業に総合職で就職していった。卒業後も同級生同士で仲良くて『女子会』をよくやっている。震災後はボランティア活動や社会貢献について話し合っていた。硬派で『男なんかと遊んでられないわ』というスタンスのグループである」
一方、玉���輿願望が強い女性たちは大学では躊躇せずにインカレに入っていく。女子大の中でも、女子大をエンジョイできたタイプ……つまり、インカレに入って玉の輿願望を満たそうとしてきた女性たちは、セックスレスとは無縁であった」(p.90)
「『オール○○(○○大の学生しか入れない)』のテニスサークルよりは、彼女がいたサークルの方がカップルはできやすいだろう。それは『自分よりもスペックが高い男性』と知り合いたい女子学生と『見下せる女性と知り合いたい』男子が集うのだから、お見合いと同じである」(p.92)
しかしインカレ文化に染まってしまうと、大学を卒業しても「友達の延長で恋人を作る」ことができなくなってしまう。
第3章 セックスがお金にならない
キャバクラでは「可愛い」は当たり前。重要なのは「疑似恋愛」を売る能力、つまり相手に恋愛をしているように思わせる力である。その能力がないとキャバクラで稼げず、安い給料の風俗に流れることになる。
売れっ子キャバ嬢の月収は300万円前後だが、ソープ嬢は売れっ子でも150万円が相場。
「キャバクラが風俗よりも稼げるのは、男性はセックスより疑似恋愛にお金を落とすからだ。性欲は一人で射精すれば済む。だが、恋愛はそうもいかない。相手がいて会話をしないと成り立たない」(p.115)
「2008年に三浦展が『女はなぜキャバクラ嬢になりたいのか?』(光文社新書)という本を出した。(中略)若い女性がキャバクラ嬢に憧れる理由を三浦展は『承認欲求』と結論づけている。が、もちろん違う。稼げてお洒落ができるからだ」(p.116)
第4章 20代女性にとって社会性が何よりも大事
「20年前に若い女性たちが自由に男性とセックスをすることを拒んだのは『貞操観念』であった。その『貞操観念』から解放された現在の20代女性たちがなぜセックスができないのか。新しく妨げとなる概念があるのだ。それは『社会性』である」(p.170)
社会性とはコミュニケーション能力のことであり、大勢の中で「こう立ち回れば、他の人たちを不愉快にさせない」ということである。
1993年に起きた『日野OL不倫放火殺人事件』において加害者の女性に同情が集まった理由は「女性が弱者であって責任をとらなくてよい存在と見なされていたこと」と「男性が女性を養える時代は、女性は『恋愛至上主義』で生きられたこと」にある。しかし今は女性も社会的な責任を取らされて当たり前であり、いくら相手が好きでも既婚者なら恋愛感情は封印すべきであるとされる。
「20代は合コンをしても単なる飲み会に落とし込もうとする。場の雰囲気を壊そうとしない。合コンでとびきり可愛い子がいても、男子は他の『可愛くない女子』もその場では同じように扱おうとする。女子もかっこいい男子とそうじゃない男子を平等に扱う。『その場ではみんなで仲良く和気藹々』という空気を作ろうとする。そういう社会性が重視されるのだ」(p.182)
場の空気を読みすぎて恋愛がしにくい。それは学校や職場でもそうであり、社内恋愛や結婚は減少傾向にある。
さらには社会性を重視するあまりに、二人きりになっても場の空気が読めない。
「男性の部屋に女性が泊まりにやってくる。これをかつては『据え膳』と呼んだ。だが、今の男性は『据え膳に手を出さない』のではなくて、場の空気を読もうとするあまり、『据え膳』が見抜けないのだ。男女が友達として仲良くやっている中でどのタイミングで『単なる友達』が据え膳になるのか」(p.192)
現在は男性と同じぐらい女性も社会性が強くなっており、社会の中でどうやって居場所を作ろうかと必死になっている。企業においても男性と同様に一人前の戦力として扱われるため、社会人としての責任も負わされる。遊び慣れない初心な未婚女性が既婚男性と恋に落ちても誰も同情してくれない。
「男性に養ってもらうというビジネスモデルがなくなっているので、女性が恋愛に対するパワーを低下させている」(p.194)
20代女性の専業主婦願望が高まっているというが彼女たちは「母親のような専業主婦になるのはもはや夢でしかない」と分かっており、親以上に厳しい人生を送ることに自覚的である。
「誰しもが社会で生き抜いていくことを最優先にしなければ今、誰しも恋愛よりは社会性を優先しないと生きていけないのだ。結果、女性の関心が『恋愛』よりも『社会』にシフトしている。(中略)恋愛よりも社会性を重視する。女性が恋愛至上主義に生きられる時代は終焉し、現在は社会性至上主義を選択せざるを得ないのだ」(p.197)
「男性は性欲よりも社会性を優先させる。女性は恋愛よりも社会性を優先させる。これでは、恋愛どころかセックスをすることもままならない。恋愛面だけではない。とにかく彼らは『社会からどう見られるのか』を過剰に気にする」(p.200)
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タイトル通りの現象は起きているかもしれないが、かなり偏った断定の仕方で書かれていて、ちょっと驚いた。
セックスはするかもしれないが、男女共に求めている内容がずれていて、旧来通りの考え方も、今の「付き合ったらする。そのぐらいあるだろう。」という流れとの中で、厳然として残っている。
著者がある結論をもうすでに用意していて、そこへ強引に話を落としていった印象が強かった。
実際には、昔からのモラルと、つきあってれば肉体関係くらいあって当たり前だし、したかったらするでしょうという考えを、自分の都合で右に左に越境して、男女ともにウロウロしている気がする。
空想の中で消費されるセックスを実体化するような関係や、特に未来の何かにつながるわけでもない、身体だけが先鋭化した関係は、女性にとっては疲れる。男性にとっても、おそらく同じで、何を求めて相手を抱いているのかわからない瞬間がきっとあるはずだ。
スタートの時点で違うものをみている男女が、本当は身体の関係は必要がないのに、セックスするかどうかだけは先に考えなくてはならない方がよほど問題ではないのか?
結婚するより付き合う相手さえいれば、一人の方が生きやすい昨今、社会性を論じるなら違う切り口の方がもっと興味深かった気がする。無理やりここに話を持ってきた…?センセーショナルなわりに読み捨ててしまいそう。
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タイトルは刺激的だが、若者が対峙している「社会性」の暴走をどう解消してあげられるかということを考えさせられた。
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わかったような、わからなかったような・・・
20代の女性の性的な事柄に対する価値観が、
昔に比べて、相当変化していることは理解できた。
印象深いのは、「なぜ20代ではなく、30代の男性が、
20代の女性とセックスできるのか」というトピック。
なるほど、と思ってしまった。
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20代女性がセックスをしていない理由について作者の考えを知りたいならば「はじめに」と最後の4章だけ読めば十分だった。
「場の空気」という名のルールがあって、
その規律を破ることを恐れるから据え膳が分からず手も出さないというのは妙に納得した。
「草食」について語る文章って、
何で高学歴とかエリートとか云う言葉を散りばめるのだろう。
セックスをしなくなったというが、
アンケートではなく全てを見透す神が日本人の総セックス回数を調べたら、バブル期と現在とでは有意な差は有るのだろうか?
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インタビューして考察して・・・。
現在と90年代の男女間を比較して貞操観念に変化があったと。それは別に新しい情報でも何でもない。
社会性を大変プッシュするが、同じことを2度も書かないでいい。
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単に若者が淡白になったとか、草食男子が女性を誘わないとかではなく、SEXしないコミュニケーションの取り方とかそれに至る背景など、野次馬ではなく真面目に取りあげられている。女子大が実は就職有利だけど、肝心の学生から人気ないなど…うーん。
12/04/18-49
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上司から社会学の勉強にと読ませてもらった本。
男女の違い。時代背景の違い。著者がインタビューを行い、実際の話をもとにした内容である為、信憑性が高い。
女性と男性の性欲は違う。実際体験してるし。社会性とは何か?コミュニケーション力か?社交性か?体裁か?定義は様々だ。多様な理解力を磨き、押しつけないようにしたい。
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親書は衝撃的なタイトルのものが数多いけれど、これはいかにも直接的で気になったので購入してみた。ら。
社会性?
それはまた違うのではないか。
そもそもセックスにどう思うかは個人個人で違うし、女性だけがセックスしたいと思うわけでもないだろうし、男性がしたくないと思うばかりの人間かというわけでもないだろう。
ただ、序盤の、恋人よりも稼いだりなんだりしている女性とのセックスに於いて恋人がセックスする気になれないという事案は、ありそうだなあ、と思えたけれども。
女子大が就活にとても良いという事柄は思い立たなかったので、もっと普及すればよいのにと思った。
そもそものカタリのみで終わり、こういった解決策があればという提示がないまま終わったので、せっかく買ったのにもったいないなあと思ってしまったのでほしはひとつ。
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セックスレスになって久しいとする女性の現状をインタビューを中核として描出するもの。男性が積極的に振舞わないことを、女子目線からして、女性として見られず「してもらえない」と捉えがちである。つまり、女性が自罰的に捉え、草食系男子だからという他罰的要因とは見ていない。これは空気読みすぎな男性と、気持ちを伝えず男性主導を容認している女性とのディスコミュニケーションではないか。もっとも、①ここ20年で貞操の価値が暴落したこと、②性そのものが売れず、お金にならないこと、③社会性への過剰な配慮・重視は得心するところ。
さらに、セクハラ批判や痴漢冤罪への恐怖といったことから、男女間のタッチングコミュニケーションを男性側が可及的に忌避する社会的風潮さえ散見される。むしろ賢明な男性ならあえて火中の栗を拾うまい。これ自体直ちに悪い傾向ではないことは明らかであるが、それならば、女性側からの明確な、言語的なイエスないし積極性を常態化する風潮が一般化しない限り、本書にあるようなディスコミは解決しないような気がする。