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2月2日読了。うん、よかった!派手さはないが、静かななかにも登場人物たちが確かに息づいていて、とてもいきいきした小説だと思う。あとになって、虹色天気雨の著者だったのだと気がついたが、私はこちらのほうがずっと好き(虹色天気雨も好きだけど)。しかも、別の作品のスピンアウトだということで、先に上梓されたそちらの作品(ほどけるとける)も是非読みたい。
ちなみに実際に親友を亡くした私だから(主人公もそう)共感した、というのはほとんどなかったが、親友のことには確かに想いを馳せた。でもそれも、彼が突然逝ってしまった時の悲しみより、彼がいてくれた日々を懐かしく温かく心から取り出すような感じで、それはこの作品が持つ光のようなもののおかげだったかも、しれない。
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女性編集者と、
漫画の原作を作る仕事をしている女性の物語です。
この後者の女性が
年齢を重ねて行く模様を追っていますが、
そのリアルな感じが何だかとても良かったです。
あの男性とはどうなるのかな。
ふわっとした未来を感じる結末でした。
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この方もブクログで知った作家さん。とてもよかった。角川文庫「女が女を読む」フェアの一冊。
どういうことがあれ、佐紀が生きているのがいい。ただ日々をやり過ごすだけじゃなくて、少しずつではあるけれども、変化を受け入れたり、新しいことをやってみようとしたり、他人のことを気にかけたり。
人が人と関わることのすがすがしさが描かれているから好きなんだろうか。出会ってきた人との思い出が、すっと自分の行動に影を落とすその様子。そのことを大事と思っている著者の感性に惹かれるのかもしれない。
もう少し他の作品も読んでみようと思う。
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ともに青春時代を過ごした、戦友とも言うべき友人の編集者を亡くした漫画原作者の再生を描いた連作短編。
1話目の時点で友人は亡くなってしまって、以降、何か大きな出来事等が起こるわけでもないが、取り返せない喪失感を抱えた主人公が、淡々とした日々を過ごすなかで、少しずつ前向きな気持ちを取り戻していく過程がなかなか丁寧に描かれており、またそれを語る文章も、抑制が効いている分、余韻が残って印象的だった。
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yomyomで連載していた「三人姉妹」がわりと好きだったのと、表紙の絵が良かったので購入。
“戦友”の玖美子が急逝し、“玖美子が死に続けている世界”で生きつづけなければならない佐紀の喪失と再生の物語。
冒頭に玖美子が亡くなる以外は事件らしい事件もなく、佐紀の日常は淡々と過ぎていくのだけれど、その静かさが却って佐紀の心の痛みを浮かび上がらせているような、大島さんらしい物語でした。海の描写が美しく希望を感じさせる最終章が印象的。
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漫画家を志していたものの、致命的に絵が下手で漫画原作者となった主人公。
彼女に原作者としての道筋を示し、二人三脚でやってきた編集者が急死してしまう。
大切な戦友を失った主人公が喪失感を抱えながらも生きていくお話。
とても大島さん的な文章で、数十ページに渡って主人公の一人語りで物語が進んでいったりする。
主人公を取り巻く人々のキャラクタや人生も陰影がくっきりしていて魅力的である。
戦友が死に続けている世界で生き続けている主人公。
がんばってる感なくでも精一杯生きている感じがして穏やかな気持ちになる話。
ただ、読む人とテンションを選ぶ作品だと感じるから、しばらく読んで合わないなと思ったら少し熟成させたほうがいい気がする。
派手さはないけど深みのある物語。
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23歳、漫画原作者の佐紀にとって大事なパートナーだった同い年の編集者、石堂玖美子が急逝した。「新人同士一緒に頑張ろう。一泡吹かせてやろうよ」。打ち合わせと称して二人で酒をぐだぐだと飲んだり、恋の悩みを打ち明けたり。仕事が順調で、これからさあ駆け上がっていくぞという時の悲しい出来事。スランプに陥る早紀。そんななか、幼馴染の木山達貴と20年ぶりに偶然再会する。再会を心から喜ぶ彼女は思う。「悪いことばかりじゃないんだから、いいことだってあるんだから」。悲しみを乗り越えてゆっくりと前へ進んでいく。
『青いリボン』もそうだったけど今回もう~んって感じでした。『虹色天気雨』のような大勢の人を巻き込んでわちゃわちゃするにぎやかな作品のほうが僕は好きなようです。
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大島真寿美さんは本当に素敵。「ピエタ」とは違う着地点で、この作品があったから、「ピエタ」が生まれたのだと思う。大島さんが描く女性というのは、喪失感やコンプレックスを持っていて、けれど、それがすべてではなくて、きちんとそういう「人生の重み」というものを持っている上で、時に明るく、時に真面目に生きている。だから尊敬できる。人生ってそんなもんだよなって頷ける。
小説と料理とは似ていて、どうにも僕も、こういう出汁の効いた作品が好きになるだけの歳月を、それなりに過ごしてきたみたいだ。
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人から見たら、いや自分でだって、なんてことない毎日を送っている
だけど、知らない間に、頑張っていたりして、疲れちゃうこともある
それでも、1日1日すこやかに生活をしている佐紀の姿がいとおしい
連作短編で、1章づつが短く、読みやすい文章で
とても好きな小説でした
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”完璧な小説だ。”とは北上次郎さんの文庫解説の冒頭の文。
これは単行本の時の感想で、装丁・挿画・造本等はこの原稿を書いている文庫版がどうなるかは判らない。と書いている訳だが、この文庫は「北上さんの解説まで含めて完璧」だ。
漫画原作者の主人公佐紀と同年齢の編集者玖未子との関係を描いた小説だが、実は冒頭から仕掛けが施されている。
六話の連作短編の中で時間は過ぎ行き、あっというまの20年前後を描いている。
話の終らせ方が実に巧みで、短編にありがちな「それからどうなった?」と思わせないところがいい。それでいて、解説によれば「それから」が描かれた小説もあるらしいからニクイな。
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ある女性が、大切な人を失った喪失感から、立ち直っていくお話なんだけど、その大切な人が、恋人ではなく肉親でもなく、友人でもない。そう、戦友なんである。
この表現、距離感。心得てるな~。
立ち直っていく過程も、劇的なことがおきるのではなく、どちらかというと、地味に淡々と日々を過ごしている。このリアルさなんですよねー。
ピエタの慎とした、凛とした感じも好きだけど、本作の方がより身近な印象を受けた。
が、ラストが??な終わり方。
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仕事の、そして私生活でも、
かけがえのない友達を喪ったところから
始まる。
友達が「死につづけている世界」で「生き続ける」私の
物語。
かけがえのない人がいなくなった世界でも、
忙しかったり、スランプになったり、
その底辺に流れる日常の生活、出会い、再会、
変わっていく気持ち、育っていく感情・・・。
生きてゆく・・・ということは、大変だけれど、
美しくて、愛しいことだなぁ・・・と
ラストを読んでしみじみと思った。
ふつうの生活を、もっと愛したくなる
好きな作品が、またひとつ増えた。
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巻末に添えられた北上次郎さんの解説の一行が物語る…完璧で美しく、静かで力強く、、の見事な時間の経過、時の流れ、、玖美子と一緒に年を重ねる佐紀と単独のあかね。頁内の幾つかの言葉が突き刺ささってくる作品と違い、こんなに頁毎にしんなりと溶け込んでくる作品も珍しい。ほんのり軽いエッセイ感も漂わせながら…リズに行きたくなる♪
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変わってしまったかつて行きつけのライブハウスで、自分の歴史を知らない若い女子の横に座り、変わってしまった味のペペロンチーノを食べながら、昔の思い出に耽る。この年取った感がいい。戦友のような友人を突然亡くしてからの日々が淡々と綴られる本書。生きてる彼女は年を取るのだ。優本!
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漫画原作者である佐紀(あかね)はデビューより共に戦ってきた編集者の玖美子を突然の死により失う。喪失した中でスランプにおちいり、淡々と日々をこなす佐紀が、幼馴染、新しい編集者、元彼などと接し、何気ない穏やかな毎日をすごすことで、徐々に緩やかに立ち直っていくお話。喪失やスランプがあったとしても人間は生き続ける。立ち直るのに、特別なことがあるわけではなくて。何気ない日々の生活を描かせたら、大島さんに勝る人はいないのではないだろうか。酸いも甘いも知った年だからこそ、その中であきらめの心境もあり、複雑なんだけど、これが大人というものなのかなと思う作品でした。連作短編集。