中国民主化の行方を考察するための高品質な入門書
2012/07/01 19:45
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:チンペイ - この投稿者のレビュー一覧を見る
上海へのビジネス旅行を終えた翌日にたまたま見つけて購入。
中国の政治・社会を民主化・自由化の観点から簡潔に歴史を振り返りつつ、現代の政治機構を明快に説明する。中国の民主化を考える上での良質な入門書といえる。
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発展途上国にとって、国家の近代化とは政治、経済、社会、文化の作り直し。
インターネットが普及してきたことを背景に政府は毛沢東時代のように情報の流通を統制することはできない。
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80年代に始まった中国の改革開放路線を「開発独裁」と著者は呼ぶ。
中国に共産主義体制が生まれ、毛沢東が牛耳っていた時代があった。ソ連を模倣したその政策には多くの誤りがあり、多大な損失を生んでいく。そこに開発独裁の時代がやってくる。ネズミを捕る猫はどんな色でもよいというアレである。政治体制としては独裁を貫きつつ、様々な経済面での開放を進めて経済成長をとげる。
そして、これからどうなるか。インターネットの普及など昔にはない言論自由化のためのツールがあるこの時代、今後何かがあるのではないかと期待される。今はことなかれ主義の中間層が動き出すと中国は変わってくるかもしれない。
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現代中国の過去と現在、未来を客観的に分析。悲観も楽観もしていない在日中国人研究者としての冷静な観察眼。
今の中国は「フランス革命前のアンシャン・レジーム』と誰かが言っていたけど、習金平体制は滞りなく続くのだろうか?
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タイトルのとおり現代中国の政治システム、特に多くの日本人にとって馴染みがない党と政府が一体となった政治システムが簡潔に説明されています。
個人的に印象に残っていたのは、従来形骸的なものだった選挙のシステムが部分的にでも導入されている点で、省長の選挙で保守的な候補者が事実上落選したり、落選がきっかけで中央政治局委員の道が断たれた人物がいるなど、ごく一部では機能しはじめているという点です。
また、政府に対する集団講義活動への対応等も変化しているようであり、表面的には変わらないものとして私の目にうつっていた中国の政治行政システムが確かに変化している(又は余儀なくされている)ことが新鮮でした。
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ここ20年の中国の動きはまさに「巨龍」。人口14億人を抱える巨漢でありながらもその姿かたちはダイナミックに変容し龍の如くその身をうねらせながら天空を舞う。毛沢東の文化大革命、天安門事件の弾圧、経済の跳躍、そして昨今の日中貿易戦争。
我々日本人の感覚だと中国はオーウェルの『1984』的計画経済の世界というイメージを少なからず持ち、共産党一党体制という自由演技が制限されたなかで、本書が語る「開発独裁」擁立に成功し、米国と双璧を成すまでのGDP世界2位の経済大国までに成長した。驚愕と危うさを抱えながらさらに躍進していくであろう中国の、変遷最中(2012年刊行)を捉えて分析した興味深い新書である。
とある人が「中国4000年の歴史は連続の歴史ではなく不連続と変容の歴史」と語っていた。的確に中国を表した言葉だと思う。