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講談社がこのような一冊を世に出していることで
私の中では、この出版社をグレードアップさせてしまった。
いつも過激な(そこが魅力なのですが)斎藤貴男さんが
感情を押さえに押さえて、
まるでローストビーフに旨味が染みとおるようにじっくり芯まで火が通るような様子で書き進めておられるのがすばらしい。
たんなる、「原発」の問題を考える一冊ではなく
これからの日本の行方を考えていくための
指針になる一冊になっている。
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日本経済中枢に位置する東京電力の社歴を追いながら、日本の暗部に切り込んだ骨太なルポルタージュ。国家、企業、アメリカの思惑によって個人の尊厳や生命が押し潰される過程は、恐怖と無力感を感じます。3.11後の脱原発を考える上でも非常に興味深い1冊です。
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原発絡みの話だけではなく、東電のルーツから振り返り、その根本的な企業の理念思想から現在の歪みを照らしだそうしている。この筆者としては抑制された筆致なので、立場を問わずおすすめしたい。
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膨大な文献と当時の関係者へのインタビューを基にして東京電力の姿を浮き彫りにした一冊です。我々はなぜ原発を選んだのか。なぜ巨大企業の支配を望んできたのか?これは全ての日本人に対する問いであると思います。
本書は書店で目にして以来、ずっと気になっておりました。で、先日ようやく手に入り、読み終えることができましたが、膨大な文献や、当時の関係者によるインタビューを元に、東京電力という日本を代表する「エクセレント・カンパニー」の裏にあるものを抉り出そうとする筆者の試みには本当に敬意を表します。
正直、一企業がここまでのことをするのかと…、読み終えたときにはしばらくの間、虚脱状態になりました。「3・11」で完全に崩壊した原子力発電所の「安全神話」を維持するために安全を度外視するすさまじいまでの逆説を打ち立て、これを堅持するために保守論壇を扶養し、最強の労働組合を潰し、東京電力の中興の祖である木川田一隆と経団連会長までのぼりつめた平岩外四などの歴代のカリスマ経営者を賞賛する―。
僕は本書で東電が専門の技術者を養成するための学校まで所有していたことを知り、改めてその影響力の大きさを知ることができました。さらに、組合をつぶすためにはそれこそ、ありとあらゆる諜略を仕掛け、経営陣の思うがままの体制を作っていく。さらには政界、マスコミにいたる工作活動も丹念に描かれており、あらゆる意味でも「すごい」会社だったんだなと思わずにはいられませんでした。
東京電力の歴史とはそのまま、戦後日本の日本史と日本経済史であり、三鷹事件や下山事件などの話や、レッド・パージなどのもはや教科書の「歴史」になっている事件がそのまま現在に続いているという事実。あまりの情報量の多さに、読破するには多少、骨が折れるかとは思いますが、日ごろマスメディアにはほとんどれることのないお話が随所に見られますので、「3・11」以後の世界を生きる、もしくは生きざるを得なくなったわれわれには、ぜひとも抑えておきたい文献のひとつかと思われます。
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『東電の成立からの各種裏エピソードを雑多にまとめた本』という感じ。書きたいこと、言いたいことが多過ぎて脱線気味。褒章に対する東電経営陣の態度なんてどうでもいいのだよ。
最終章の『受忍』と『犠牲のシステム』を交えた論考は流石。というか、これを書きたいがために書き起こしたのかもしれない。
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2012年刊。著者は日本工業新聞・プレジデント・週刊文春の元記者。
刊行時から見て、フクシマ問題の書と思っていたが、そうではない。
本書は、東京電力という会社(というより経営陣)を定点に、「親方日の丸的企業体」の政治との黒い関係(経産省・旧通産、自民党政治家、米国諜報機関など)、経営における暗闘(主に労使問題だが、電力会社という国策との関わり深い業態の特殊性が色濃く)、他業との対立競合(財界での役割を含む)、そして現代的課題を、戦後史と絡めながら読み解いていく書である。
この点、例えば原発の点検整備を下請けに出す問題。あるいは原発事故に伴う賠責履行の東電の消極・拒否姿勢はさほど新奇ではない。
また、例えば、東電の各種事業における偽装請負なども、東電特有の社会問題とは言い難く、ある程度アンテナを張っていれば、さもありなんと思うだけかもしれない。
しかし、労働組合の極限までの退潮の淵源が、①戦後の電産レッドパージと電力会社分割、②そしてこれを模した国鉄・電電公社などの分割化・民営化にある(後者は国鉄分割民営化時から囁かれていたが)。
その結果が、21世紀日本における労働分配率の低下と非正規雇用増大の政治的推進である。
これらが、戦後史的分析を推し進めた本書の成果に見える。
あるいは、財界の良心的存在と世評の木川田一隆、細川連立政権支持・反自民党とも目された平岩外四の裏面(殊にその労務管理に関する“辣腕”ぶり)の開陳も読み応えあり。
なお、80年代、中曽根康弘の選挙運動中の、宮本顕治に対する誹謗・中傷事件の顛末も記述がなされる。