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近頃拝聴している、和尚さんの動画で紹介されていた本。お身体が不自由であっても、懸命に生きてらっしゃる方とおっしゃっていました。
実際に読んでみたところ、ひたすら祈っている姿に、ぐっときました……。
友人たちの苦しみが減るよう、しあわせに暮らせるよう、ひたすら祈っている自分と、勝手ながら重ねて考えてしまいました。戦時下ではなく、あらゆるものが満たされているわたしなのに、心の渇きを感じているところは恥ずべきことなのかもしれません。
けれど、素直に、喜怒哀楽を表現できるこの世で良かったと感じました。当時は、愛おしい方に生き残ってほしい、と願うことすら許されない空気があったように、文章から感じました。そんな当たり前のことすら、ことばにできないなんて……つらいです。
それらを乗り越えた久子さんは、凄いお方だと、感じました。
(読みながら綴った感想)
2022/11/25 p.5-6
2022/11/27 p.6-7
2022/12/04 p.7-12
p.9
“この大戦争下、こうまで心がみな荒(すさ)む事は悲しい気持ちがした。”
みんな、余裕がないのですね……。平和な時代だったら、他者に優しくできるお方かもしれないのに……。
p.9
“泣顔みせることはわるいこと、泣いてはならぬと理性はつよくよぶが、もろい感情にはどうしても勝つことが出来なかった。”
泣いたっていいのですよ。
当時の空気では苦しいでしょうけれど、現代のわたしは、心のままに感情を表していいと肯定します。この肯定は届かないですけれど……。
2022/12/06 p.12-55
p.35
“一切を、お念佛におまかせ致しているはずなのに、何と業のふかい、自分のくさり果てた根性かと情けなくなる。”
自分もひたすら、大切な人たちがしあわせに暮らせるように、と祈っています。祈っていたはずなのです。
それなのに、心配だから、と言い訳をしてずるいことをしてしまっていました。もうやめます。
すべて、任せます。人よりも完璧だと聞く、お方に。ひたすら、祈ります。
p.53
“十二年前のあの日、あの時も今も私の心は(あなたを偲う情は)同じでございます。”
新婚の時と変わらず想うことができるって、すてきです。
2022/12/08 p.56-97
2022/12/10 p.98-174
p.98
“こんな体の女を、ながい間妻としてつれ添うていて下さいました事を、今更ながらもったいなくおもわれます。”
意外と、こういう表現は珍しい気がします。
普段は気にしないようにしているのか、それとも、書かないようにしているのかわからないですけれど……。あまり、“こんな体”とは言っていなかった気がします。
自分だったらもっと、あれこれおもって書き残してしまったでしょう。我慢強いお方です。
p.107
“ほんとに待つ身は切ない辛い物でございますのね。”
本当に……。ただ、時が経つのをじっと耐えるしかないとき、とてもとても、苦しいです……。
p.108
“あなたに愛され、あなたに甘えて十数年間暮らして来た私は、”
すてきな日々だったのですね。そんな日が、いつまでも続いてほしかったです……。
p.137
“お留守の間に絶対に劇や映画に行かぬ事にしていましたけれども、”
そうやってご自分を抑えていると、苦しくなるばかりですよ。気分転換に出かけたら良いのです、たまには。
p.159
“妻らしく母らしく。”
そんなことを意識していたら、どんどん、自分が狭まってしまいます。自分らしく。それが一番です。
2022/12/17 p.177-
p.178
“心は乱れ易い。”
本当に。常に穏やかであってほしいです。
p.181
“苦しみも、悲しみも、熱さも一時の辛抱だ。”
そう考えられるのは、お強いです。
p.203
“
(前略)夫、弟たちの安否をおたずね申し上ぐ。
戦時下ならば、(中略)絶対すまじきものなれど、終戦の今は一筋に肉親の上に思いははせる。
”
戦争が終わったのですね。生き残ったのですね。ご無事で何よりです……。
あとは、旦那さまが帰ることばかり、願います……。
p.213〜
何度か結婚してらっしゃるのですね。
お相手への気持ちが強いのは、理由は何であれ、いつ別れとなるかわからない……と感じていたからなのかもしれません。
p.217
“「今、還った」”
(中略)
“「おう、富子」”
久子さんの旦那さま(此処では富子さんのお父さま)は、口数の少ない方だったのかもしれませんね。
けれど、きちんとご家族と向き合ってきた方なのでしょう。ご家族がここまで、想ってらっしゃる方なのですから……。そうであってほしいです。