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「過去の事件」と言っても関係者全員の話をよく聞いて回る、という点では実はいつもと同じような捜査方法なんですね。となると、一番の面白みは、終わったはずの過去をどう現在に帰結させるか、というところなのかもしれない。もちろん、事件そのものも面白いです。クリスティは本当に動機にこだわりがあるなあと、改めて。
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過去の事件を回想して解決する系の話。
読む順番を間違えたーと後悔した。
5匹の豚はこれから読もうと思ってたのに、犯人書いてるし。。。
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ポワロ作品。
クリスティーが最後に書いたポワロ作品でもある。
【あらすじ】
小説家のオリヴァ女史はパーティーで初対面の女から「あなたが名付けた娘の両親は心中したが、どちらが殺したのか確認して欲しい」と依頼される。オリヴァ女史から相談を持ちかけられたポワロは、オリヴァ女史とともに心中事件と両親の過去を知る人物を辿り始める。
【感想】
タイトルに象が含まれるから、動物園かインドで起こった殺人事件の話かと思ったがそうではなかった。象の記憶力はすごい=象のように当時の状況を詳細に記憶している人がいるはず、という意図であり、捜査担当者や両親の関係者に聞き込みに行くきっかけになっている。話の構成としては、関係者と話すことで心中した両親を取り巻く情報が増えていき、ポワロがその情報を組み合わせて辻褄の合う結論を導き出すものになっている。そのため、危険と対峙するような緊迫した展開はなく、読者は謎解きに専念できる。ただし、事件の真相は想像できる範囲であり、ポワロの名推理を期待して読んでたら物足りないかも。
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とある婦人の奇妙な質問から幕を開く本作、作中で描かれる殺人はその質問対象となる1件だけというのに退屈させないのは著者の卓越した構成能力故だろうね
昔に仲睦まじい夫婦が自殺した。果たして先に銃の引き金を引いたのは父か母かどちらだったのか
そんな取り留めのない疑問が多くの興味を掻き立て、過去への探求を始めさせるのだから面白い
十年以上前に終わってしまった事件。センセーショナルであっても迷宮入りではないから現代でもその事件を探り続ける者は居ない
ならヒントを探る聞き込みは出来ないかと思いきや、意外や意外に覚えている者が居る。勿論、断片的だったり間違っていたり思い込みが多分を締めていたりと事実全てを覚えている者は居ないのだけど、それぞれがそれぞれの尺度で何かしらを覚えている
そういった好奇心が凝り固まった噂を集める事で過去へ迫っていくわけだ
思えば探偵役となるオリヴァやポアロだって捜査を始めた理由は好奇心に似た感情
でも、事件の影を引きずる若いカップルが前面に出てくるに従って、二人の行動理由も変わってくる
だからこそ、次第に見えてくる事件の光明はその新しい行動理由にリンクしているし、最終的に到達する事件の真相もその類である事に納得できる
そうして積み上げられた諸々が美しく描かれるクライマックスで真相が明かされた際には思わずうるっと来てしまったよ……
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今となってはかなり陳腐なトリックで、正直言ってあのオチにはがっかりした。
でも結末の、あの切ない人間模様はすぐれた文学の香りが漂い、読後感はとてもよい。満足。
やっぱ僕はマープルよりポアロが好きだなあ。
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『五匹の子豚』や『杉の柩』と同じ過去の事件の真相を明らかにする話で関係者に昔の話を聞いていくのですが、結局のところ全てを知る人を探し出してみんなの前で語って貰う流れなので、度肝を抜くようなトリックもなければロジカルな謎解きもありません。
ただ、真相が明らかになった後のポアロとオリヴァ夫人の台詞が印象的で、なかなか味わい深い作品になっていると思います。
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ポアロとオリヴァが、過去の出来事を忘れない"象"を探し出して聴き取り調査を行い、過去の事件の真相を追求する話。
私は普段、ミステリーを読んでいて、ほとんど真相がわからないのだが、この作品に関しては、マーガレットとドロシアの関係がわかった時点である疑いを持ち、それ以降、それを補強してくれる事実が次々と出てきたので、最終章の手前では真相の大部分を予想できていた。
ヒントがわかりやすく、真相が予想しやすい作品ではないだろうか。
事件の背景にあるもの、時間的拡がり、人物配置、真相のまとまりなど、よくできた作品だと思う。
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図書館で。
英語のイディオムなんだろうなぁとは思うけど象が記憶力が良いというのはちょっと面白い言い方だなぁ。確かに長生きは長生きだと思うけど。
それにしても精神疾患が先天的な遺伝によるものと随分考えられていたんだろうなぁ。でも母も伯母も血筋から言ったらそう変わらない気がするんだけどそこは良いんだろうか?(しかも双子だし)
人のうわさが大抵役に立たない割に何割か真実も含んでいる、というのが面白かったです。私は又、イヤミな婦人の実子が被害者だったのかとか穿った事考えてましたよ。
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今起きた事件ではなく過去の事件の真相を、ポワロの灰色の脳細胞を使って解いていく。結末は驚くものではなかったが、オリヴァ夫人の働きぶりはおもしろかった。
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ポワロが、親友の推理作家の名づけ子にまつわる昔の事件の謎を解くという話。
事件の周囲の人々の記憶を解きほぐしながら推理していくのだが、事件自体は新たに起きることはないため全体的にストーリーはゆっくりと進む。真相も中盤で読み取れるなど謎解きという面では物足りないが、記憶の断片同士を読みながらつなぎ合わせていくのは新鮮で楽しめた。
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昔の事件を蒸し返すシリーズ。もちろん事件の血縁者にとってはいつまでも問題になることではあるけれど。今回も事件の血縁者の結婚問題から蒸し返すこととなる。いろいろ昔のことを知っている人に話を聞くが、結局ある一人の人物がキーですべてを知っていたのでは。もっとも事件の話はもの悲しい。
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エルキュール・ポアロシリーズ#36。
後年多くなってくる「回想の殺人シリーズ」のひとつ。
12年前の事件を、オリヴァ夫人による、当時を知る人へのインタビューを通して明らかにする。
「象は忘れない」というのはクリスティーの心を捉えていたらしい逸話で、象はいじわるされたりした記憶をいつまでも忘れない(らしい)ことにちなんでいる。すなわち、人の記憶も、ふとしたきっかけでよみがえるものだ、ということである。
実質的にポアロ物として最後に書かれた作品で、ドンデンとか事件と解決の切れ味とか謎解きということよりも、物語としてしみじみしたコクがある。
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オリヴァ夫人が名付け親になった娘が
交際している男性と結婚を考えているらしいと、
男性の母親から聞かされた。
そして、一つの疑問も聞かされる。
「昔、娘の良心がピストルで心中したと報道されたが、
夫が先に妻を撃ったのか?
それとも、
妻が先に夫を撃ったのか?」
オリヴァ夫人と、夫人から相談を受けたポアロは
かつての事件の関係者を訪ね、当時のことを
聞いて回ることにした。
といった流れの作品。
ポアロものではありますが、
扱われるのは、はるか昔の事件で、
これまでもポアロが事件を調査するのは
真相を明らかにする
ためであった。
しかし、明らかになった真相は告げられるべきか?
がテーマになった作品です。
このようなテーマを扱った物語としては、
楽しく読める作品だと思います。
ただし、
因縁のある双子
眼と耳の悪い使用人
カツラ
などが出てきて、
真相の提示も、ポアロが推理により語るのではなく、
「実はあのとき現場に居ました」という人物が
登場して話すのも、
ミステリとしては・・・です(笑)
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「アガサ・クリスティ」の長篇ミステリー『象は忘れない(原題:Elephants Can Remember)』を読みました。
『鳩のなかの猫』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。
-----story-------------
推理作家「ミセス・オリヴァ」が名づけ親になった「シリヤ」の結婚のことで、彼女は先方の母親から奇妙な謎を押しつけられた。
十数年前の「シリヤ」の両親の心中事件では、男が先に女を撃ったのか、あるいはその逆だったのか?
「オリヴァ」から相談を受けた「ポアロ」は“象のように”記憶力のよい人々を訪れて、過去の真相を探る。
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1972年に刊行された「エルキュール・ポアロ」シリーズ長編第32作目の作品、、、
『カーテン』が「エルキュール・ポアロ」最後の作品ですが、『カーテン』は1943年に執筆された作品なので、実質上(執筆順)では本作が「ポアロ」最後の作品となります。
『象は忘れない』という題名は、英語の諺「An elephant never forgets.:象は(恨みを)忘れない(そして必ず報復する)」に由来しているそうです。
■1. 文学者昼食会
■2. 象に関する最初の言及
第一部 象
■3. アリスおばさんの手引き
■4. シリヤ
■5. 過去の罪は長い影をひく
■6. 旧友の回想
■7. ふたたび子供部屋に
■8. ミセズ・オリヴァの話
■9. 象探しの成果
■10. デズモンド
第二部 長い影
■11. ギャロウェイ警視とポアロ覚え書を検討する
■12. シリヤ,エルキュール・ポアロに会う
■13. ミセズ・バートン=コックス
■14. ウィロビー医師
■15. ヘア・スタイリスト・ビューティシャン,ユージン・アンド・ローズンテル
■16. ミスタ・ゴビーの報告
■17. ポアロ出発を告げる
■18. 間奏曲
■19. マディとゼリー
■20. 審問廷
十数年前に起きた心中事件の真相と、心中事件の真相を調べるため「オリヴァ婦人」に近づいた「ミセズ・バートン=コックス」の目的を、「エルキュール・ポアロ」が「オリヴァ婦人」を巧く使いながら、見事に解決する物語、、、
ちょっともどかしい序盤の展開と、縺れて絡み合った糸がスッキリ解けるような中盤から終盤にかけての展開が、「アガサ・クリスティ」らしい作品でしたね。
心中したとされる「シリヤ・レイヴンズクロフト」の父親「アリステア」と母親「マーガレット」には、自殺すべき動機が見当たらない… 過去の関係者から聞き取りを進めるうち、当時、「マーガレット」の一卵性双生児の姉「ドロシア」が同居しており、心中の数日前に事故死していることが判明、、、
「ドロシア」に精神的な疾患があったことや、「マーガレット」との結婚前、「アリステア」と「ドロシア」が恋愛関係にあったことが判明… 「ポアロ」は、様々な証言から真相を推理し、真実に行き着きます。
一卵性双生児だった「マーガレット」と「ドロシア」の容姿が酷似していたことや、「ドロシア」の過去の奇行、「マーガレット」のカツラが4つも残っていたこと等が、大きなポイントになっていましたね。
「アリステア」も「マーガレット」も、「ドロシア」を愛していたことから起こった事件、、、
ちょっと哀しい結末でした。
ちなみに、、、
「オリヴァ婦人」って、どこかで見た名前だなぁ… と思っていたら、何作か「ポアロ」と共演しているらしく、そのうち、『死者のあやまち』と『ハロウィーン・パーティ』は既読でしたね。
どうも、「アガサ・クリスティ」本人がモデルみたいです。
以下、主な登場人物です。
「アリアドニ・オリヴァ」
ポアロとは旧知の女流推理作家
「ミス・リヴィングストン」
オリヴァの秘書
「ミセズ・バートン=コックス」
未亡人
「デズモンド」
バートンの養子
「シリヤ・レイヴンズクロフト」
オリヴァの名付け子
「アリステア・レイヴンズクロフト」
シリヤの父
「マーガレット・レイヴンズクロフト」
シリヤの母
「ドロシア・ジャロー」
シリヤの伯母
「マディ・ルーセル」
シリヤの家庭教師
「ゼリー・モーウラ」
シリヤの家庭教師
「ジュリア・カーステアズ」
オリヴァの友人
「ミセズ・マッチャム」
オリヴァの友人
「ミセズ・マーリーン」
オリヴァの友人
「ウィロビー」
医師
「ミセズ・ローズンテル」
美容院
「ミスタ・ゴビー」
情報屋
「ギャロウェイ」
元警視
「スペンス」
ポアロとは旧知の元警視
「エルキュール・ポアロ」
私立探偵
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クリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。相棒はオリヴァ夫人。
冒頭のオリヴァ夫人の葛藤はクリスティのそれを反映したものだろう。スピーチへの嫌悪感や分別の無いファンへの煩わしさというのはとても共感を持てる。売れっ子作家としての人生は本人達でなければ気づく事は出来ないが、様々な苦労があるのだろうと勘繰ってしまった。
今作は作中でも触れられているが「五匹の子豚」と対をなしているイメージだ。過去に戻りながら事件の真相に辿り着くという一連は、どちらにも共通しているテーマだ。
今回珍しく幾つかの作品に触れられており、上記作品と「マギンティ夫人は死んだ」、「ハロウィン・パーティ」についても簡単だが言及がされている。ネタバレ等はないが少しヒントが出ている為未読の人は注意が必要だ(五匹の子豚はだいぶ言及されている)
結婚を控えた若い二人の男女。男の継母がオリヴァに近づき(オリヴァが女性の方の名付け親だった為)息子の相手の両親が拳銃で死んだ事件について根掘り葉掘り引き出そうとする。オリヴァは娘の母親と面識はあるが、当時、オリヴァが海外にいた為、事件の真相はわからず、更には警察などでも詳しい内容の究明がされないまま、自殺という事で決着した。オリヴァはなんとか継母から逃げ仰せたが該当事件の真相が気になりポアロに相談する。
クリスティ作品でありがちな全く事件に関係無さそうな手掛かり(夫人の四つのかつら。かつらを四つ持っているのは違和感。飼っていた犬が夫人に噛み付いた事。愛犬は警察よりも賢いというポアロの皮肉が印象的)を皮切りに、警察に保管されている当時の資料や当時事件に関わった人達への聞き込み等(オリヴァ夫人も活躍!!)を繋ぎ合わせ、ポアロが悲しい事件の真相に辿り着く。
クリスティ作品は古典にあたり、現代と表現や感覚、考え方が難しい部分がある。今回、事件の真相には一卵性双子の入れ替えが関わるが、彼女達の遺伝的な考え方や過去の殺人についての姉への処遇等について、理解が難しい部分が多い。
一方で、若き娘シリヤの両親や家庭教師ゼリーが家族愛に溢れ、全てが報われないドロシアへの愛故の行動である事は、シリヤへの救いであり、シリヤの相手であるデズモンドの継母の怪しげな行動についてもデズモンドの実母から多額の遺産が入り、それが原因であるという事も作中では真実として知る事ができ、読者としては物語通して納得のいく物語だった。
クリスティ作品は意外にコッテリした味付けが多く、最後真相究明後、家庭教師とポアロがその場に留まって会話をしていたため、残りページは全くないながらももう一つ変化があるのかと期待してしまった。悪い癖だ(笑)出来栄えは「五匹の子豚」に軍配が上がると思うが二作連作で読むとそれぞれ何倍にも面白さが膨らむ様に思う。
「象は忘れない」の諺は教訓になるだろうが、知らない人から見れば「サファリに象狩りに・・・」となるのだろう(笑)