紙の本
本当はこれが最後のポアロものの長編小説
2024/01/23 18:08
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリの女王、アガサ・クリスティーが生み出した名探偵エルキュール・ポアロが活躍する長編小説は全部で33篇ある。
但し、最後の作品『カーテン』はアガサが亡くなる前年(1975年)に刊行されたが実際の執筆は第二次大戦中であったことから、実質的にポアロの最後の長編小説は1972年に刊行されたこの『象は忘れない』ということになる。
原題は「Elephants Can Remember」で、その意味について作中にこの「象は忘れない」逸話が描かれている。それは、仕立屋に自分の鼻を縫い針で刺された象がそのことを覚えていて、次にその仕立屋を見かけた時象が水をぶっかけたという話で、どんなに昔のことであっても象のように覚えている人がいるものという意味だ。
そして、この作品でポアロはまさに十数年前に起こった奇妙な心中事件の謎を解くことになる。
初期のポアロの作品ではポアロの相棒としてヘイスティングズが登場するが、後期になると推理作家のミセス・オリヴァがしばしば登場する。
この作品でもきっかけはオリヴァに持ち込まれた事件の真相を知りたいという夫人からの依頼で、オリヴァはポアロを頼ることになる。
が、オリヴァは実に積極的な人物で、自身多くの「象」を訪ね歩くことになる。
事件の謎を解くカギは二つある。
一つは心中事件で夫とともに亡くなったといわれる夫人が所有していた「かつら」。
もう一つは、夫人には双子の姉がいたこと。しかも、その姉は精神を病んでいたこともあったという。
なんとなく、かつての心中事件の真相が判明しそうだが、その動機はむしろとても感動的。最後にして、アガサはポアロに素敵な作品を贈ったといえる。
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面白かったです
2021/11/19 11:54
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投稿者:iha - この投稿者のレビュー一覧を見る
ポアロの最後の作品は「カーテン」ですが、執筆順では今作が1番後です。過去のある夫婦の自殺について色々な人の話を通して真相に迫るというものです。この実質上の最終作には凶悪犯は登場せず、また途中派手な展開はなく、話はしっとりと進んでゆきます。その様は推理物というよりも普通の小説のようでした。またアガサの分身であるオリバー夫人もいつに増して登場します。前作「ハロウィン・パーティ」にてオリバー夫人はいつも齧っている大好きなリンゴを「もう2度と食べない」と言っていましたが、今作には本当に出てきませんでした(笑)。
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中学生の頃に読んだ国内のSFで「象は忘れない」という台詞がありました。若くして何も残さず儚くなってしまう女性が、人類の滅亡を目前にいろいろな思いをこめて。
それとは全然関係ないかもしれないけど、題名に惹かれずにはいられません。
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推理作家ミセス・オリヴァが名づけ親になったシリヤの結婚のことで、彼女は先方の母親から奇妙な謎を押しつけられた。十数年前のシリヤの両親の心中事件では、男が先に女を撃ったのか、あるいはその逆だったのか?オリヴァから相談を受けたポアロは“象のように”記憶力のよい人々を訪れて、過去の真相を探る。
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ミセス・オリヴァがほとんど主人公。ポアロはあんまり出てこない。実質的には最後に書かれたポアロ作品。ポアロが関係者全員集めて謎解きする時、なんか雰囲気若いよ、ポアロ!
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過去にあった事件を解く、というスタイルなのでスリル感はなく、かつ情報収集の部分が多くて少し疲れる。
けどまったく答えの見当がつかず、最後まで読んでしまった。
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なぜか突然読んでしまった,「実質最後のポワロ」などと言われている「象は忘れない」。
クリスティ文庫は版が読み易くて好き。
中村能三の訳は昔から大好き。
後期のクリスティっぽい感じが結構好きです。
オリヴァ夫人なんて,なんかもうザ・クリスティだよね。
クリスティ自身も女流作家で流行作家なわけじゃないですか。
オリヴァ夫人の愚痴に込められた実感が意味深だ・・・笑
謎自体は,うーん,途中でわかるかもしれない。
でも,こういう,話を尋ねて歩くスタイルは悪くないな。ちょっと読みにくいという向きもあるかもしれませんが。
一幕劇みたいで面白いよね。実際,クリスティは舞台化されているものも結構あるわけですが。
もっとクリスティを読みたくなった1冊。
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初ポアロ♪面白かったです!
推理作家のミセス・オリヴァが名付け親になっている
シリヤの両親の12年前の心中事件の真相を調査する為、
象のように記憶力の良い当時の関係者達を訪ね歩き、
やがてポアロは愛の悲劇とも呼べる真相に辿り着く。
「象は忘れない」というのはイギリスに伝わる慣用句で、
象は自分をひどいめに合わせた人を一生忘れないし
自分を助けてくれた人も一生忘れないという意味だそうです。
「象は忘れないけれど、人間は忘れます」というセリフで
読後感がますます爽やかになりました。
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ポアロものでも、オリヴァがでてくるのは安心して読めます。
オリヴァが、ある意味、アガサクリスティの分身でもあり、
作家生活について表現したいことが、ところどころで本音として現れています。
物語は、悲しいお話ですし、一卵性双生児についてと、精神病に関する記述では、
妥当性について考えさせられるところもありました。
アガサクリスティが人間性を大事にしているということが分かっていて読めば問題がないですが、
誰の作品か分からずに、この本だけを読むと、よい印象を持たない読者もあるかもわかりません。
ファンの目と、通りすがりの読者の視点の違いが気がかりです。
ただし、「象は忘れないが、人間は忘れる」というのが大事な伝言だと思いました。
つまらないことを忘れる能力が、人間が大事なことに集中できる力なのだと。
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クリスティの「回想殺人」の傑作の一つ。ポアロとオリヴァ夫人が活躍する。ドラマティックではないが、丹念に織り込まれた登場人物の心の動きを穏やかに楽しみたい。
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エルキュール・ポアロ・シリーズ
オリヴァ夫人の名付け子シリヤの両親の死についての不愉快な話。どちらがどちらを殺したのか?彼女の婚約者デズモンドの母親の疑惑。夫婦の間の溝の謎。彼女の母親マーガレットと姉ドロテアの関係。マーガレットにかみついた飼い犬と4つのカツラの秘密
2011年10月8日読了
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ポアロシリーズ。
若い恋人たちの未来のために、過去の事件の真相を探る話。過去に遡り、多く人を訪れ事件についてを聞く。証言者の記憶は曖昧で、何が真実か考えながら読めて楽しかった。
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過去の事件を掘り返すことで、今現在起こりつつある犯罪を・・・という、ポアロもの。
アガサクリスティー晩年の作らしい。
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半分ぐらいまで、この調子で進んでいって終わるのかな~と心配していたが、最後にはパズルが組み合わさったときの達成感を得て、納得です。
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久々にアガサ・クリスティー。
夏の暑さを忘れるミステリーを急に読みたくなっただけだが
そういえば小説の舞台はオリンピックに湧くロンドン。
流れに乗っていた。
1970年代になりポアロはずいぶん年を取ったが
灰色の脳細胞は衰え知らず。
ミセス・オリヴァもでてきて変わらぬ様子が嬉しい。
昔起きた夫婦の銃殺遺体が見つかった事件。
今になって暴かれる死の真相は?
結末も満足のいくものであった。