投稿元:
レビューを見る
「硫黄島に死す」は同名小説を含む短編集で、
この間、新潮文庫の100冊フェアにも並んでました。新潮の100冊フェアも長いなぁ。
ちなみに「硫黄島に死す」は2007年12月公開予定で映画化も決まっているそうで、なんとなく見に行こうかななんて思いも。
その関係なのか、バロン西をテーマにした特別展「バロン西と硫黄島の戦い」が、北海道本別町の歴史民俗資料館で開催中(期間:2007年7月3日〜22日)なんだって。
でも、この小説で一番心に残ったのは実はバロン西ではなく、同収録「基地はるかなり」の死刑囚の「あわあわと生きる」という言葉です。
「基地はるかなり」では、特攻隊として死ぬはずの元少年兵がやがて死刑囚となるまでを辿った終戦後の人生を描いています。その中で彼の人生観を「日々をあわあわと生きる」という言葉で表現しているのですが、この「あわあわとして生きる」という表現がとても気に入ってしまったのです。
私もまた彼の言う「あわあわ」とした生活を目指している、求めている人間と思うのですが、
「あわあわ」とした生き方はたぶん現実的に流れている実社会では実用的ではないんですよね。まして彼の生きた時代、立場ではより「あわあわ」が幻想だと気付かなくちゃいけないんだと。でも、戦後がさらに進み、ぼやっとした現代においては、この「あわあわ」とした人々が実はすごく多いんじゃないかなとも思わされます。うん、「あわあわ」と生きちゃダメなのかもしれません。でも、「あわあわ」と死にたいとは思います。
この他にも、
「草原の敵」
「青春の記念の土地」
「軍艦旗はためく丘に」
「着陸復航せよ」
「断崖」
以上を合わせて全部で7編が収録されています。
いずれも、戦争というものに関わった人間のさまざまな視点・観点から描かれ、戦争という時代がよりリアルに伝わってくる気がしました。
戦争関係にはほとんど疎かった私ですが、この小説は本当にいい小説だな〜と思いました。
投稿元:
レビューを見る
クリント・イーストウッド監督の「硫黄島」シリーズを観て、その勢いで買ってしまった本。でも、それは正解だった。映画の中で一番印象に残ったバロン西が主人公の表題はもちろん、戦争を題材にした短編の数々は、「戦争」がもたらすものの大きさ、計り知れない力は何だろうと考えさせる。こういう人が亡くなってしまった後には、一体どうなるんだろうとつい思ってしまう。
投稿元:
レビューを見る
ロサンゼルス五輪の馬術で金メダルを獲得しながらも硫黄島で死ななければならなかった西中佐の話。などの短編。
投稿元:
レビューを見る
オリンピック開催時期と終戦記念日が重なった今年、馬術・法華津選手の出場という話題もあり興味が出てきたのがバロン西。名前だけで、いつ活躍した選手だったのかも知らなかったです。戦争というとどうしても惨めさやひもじさ、浅ましさが先に来てしまうので積極的に触れたい話題ではなかった。中にはそういう作品もありましたが表題作では何よりも妻・武子の悲しみが深く心に刻み込まれました。豪気で遊びも派手だった西の妻として、噂になった女性と仲良くなったり夫の顔や対面を崩さないように振舞うのが辛くなかったわけじゃない。将来年を取ってから「あんな苦労があったのよ」と笑えるようになりたい。そんなささやかな幸せがもう叶わない。たった数行のその下りが忘れられません。
投稿元:
レビューを見る
どうしてもオリンピックで勝たなければならなかった馬術日本団。
どうしても戦争で勝たなければならなかった日本軍。
戦争物だけど、破裂するような悲惨さではなくて
鉛のように重い感じがじわじわ後まで残る、城山三郎の腕の良さが見えます。
7編ある内の最初の4つしか読んでないけど、どれもよかった。
次は「鼠」を読みたい・・
投稿元:
レビューを見る
映画を見て衝撃を受け、表題作だけ目当てに図書館で借りました。
私が考える戦争をテーマにした小説の理想を具現したような書き方だったと思います。
戦争の悲惨さを伝えるのが目的とか、戦争の良い悪いを主張するとかじゃなくて、戦争の中で流れに呑まれながら生きた人たちの時間をそのままに切り取るような。それこそが本当に戦争を伝えるってことじゃないかなと。
投稿元:
レビューを見る
(2009.03.11読了)
7つの短編が収められています。「硫黄島に死す」「基地はるかなり」「草原の敵」「青春の記念の土地」「軍旗はためく丘に」「着陸復航せよ」「断崖」です。最初の5編は、戦争小説です。「着陸復航せよ」は、航空自衛隊に材を取った航空小説。「断崖」は、私小説風の小品です。本の後ろの「解説」に適切な内容紹介がしてありますので、興味を持った方は、解説を読んでみてから、読む・読まないを決めるといいと思います。
映画「硫黄島からの手紙」2006年、に馬に乗って海岸を走る軍人がいました。ロサンゼルスオリンピック大会(1932年)で馬術、大障碍飛越競技で優勝した西竹一中佐です。
「硫黄島に死す」は、西中佐を主人公にした話です。「硫黄島からの手紙」の脚本家も、この小説を読んだのではないでしょうか。
西は、騎兵学校で学び、騎兵連隊で過ごした。騎兵士官の心得に(一、服 二、顔、 三、馬術)という言葉があるそうです。騎兵士官たるもの、まず容姿に気を配れというわけで、伊達者にならざるを得なかった。
ロサンゼルスオリンピックには、ヨーロッパの馬術チームは参加しなかったそうです。馬術は貴族の遊びで、馬を大事にしている。遠いアメリカまで馬を送って傷つけでもしたら、という気持ちで、参加しなかった。(34頁)
1936年のベルリンオリンピックでは、「西も落ちたし馬も落ちた」ということで、惨敗だった。西が転倒したのは、主催国ドイツの勝つための仕掛けがあったためということです。
大障碍の水濠の深さが右寄りの部分を残して、深くえぐってあった。ドイツチームは事前に知らされていたので、右寄りに飛んで転倒を免れた。(38頁)
太平洋戦争のころには、騎兵連隊は、戦車連隊に衣替えしており、西中佐、43歳も、硫黄島へ赴任するときは、戦車第26連隊長としてであった。
西の最後の突撃は、3月22日であった。
(2009年3月20日・記)
投稿元:
レビューを見る
ちらほらと、著者の体験や考え方が分散されつつも、根本的なものは何一つ変わらない。
時代の中で、みな、自分の立ち位置をきちんと理解し、その先を見通し、それぞれの場所で生きている。
考え悩むだけに終わらず、「生きている」のだ。
しかし、その生き方はがつがつとしたものではない、少年兵らは、まだ子供だというのに老成していて、「仕方ない」中で生きている。悲しいはずの死も仕方なく、ただの自然の中の流れ…ひどくさみしく、しかし最後の短編からは、この時代も今の時代も、どこか何かが欠けていて、それで完結しているような感じがした。
あの時代に生きていた人の、あの時代の感覚にもっと触れたい。
投稿元:
レビューを見る
全7作品よりなります。
全5作が戦争小説です。
後半2作は城山三郎さんには珍しく私小説です。
自己の体験から,戦後の残された者たちや社会を書いた貴重な作品です。
投稿元:
レビューを見る
城山さんの体験に基づいた短編集。
戦争の残酷さ、まだ幼い少年兵をいたぶる上官。戦争で人は内部までおかされてしまうのか。
投稿元:
レビューを見る
「散るぞ悲しき」から始まった硫黄島への関心から、バロン西の話が読みたくて購入。いくつかの短編から構成されている。
投稿元:
レビューを見る
バロン西の「硫黄島に死す」(表題作)と、ローリー大尉の「着陸復航せよ」が印象的でした。
どの物語にも、戦争を生き、死んでいく人々の姿がどこか淡々と描かれていて、
それが一層戦争の非情さを際立たせている印象です。
救いがなくて、1話読むたびに休憩をいれたくなってしまいます。
登場人物が皆とっても魅力的なだけに、余計つらい。
投稿元:
レビューを見る
戦前も原材料はアメリカに頼っていたのでやっぱり
日本は戦争はしちゃいかんな。。
でもアメリカが対日輸出禁止とかしたから
踏み切らざる得なかったんだけど。
投稿元:
レビューを見る
なかなかオチがいい作家だなぁ
この作家は初めてに近い(キングスレイ ウォードの訳は読んだことがある)。
「著者の戦争体験と深くかかわった作品7編を集めた短編集」といわれる本書を読んだ感想はなかなかいいものだ。
なんというか、淡々としていて説教くさくなく、しかも余韻がある感じ。いいワインを味わう感じもしくは後から辛さがきいてくるインデアンカレーの感じだろうか。
(なんちゅうたとえや・・・)
作品は以下の通り。
硫黄島に死す
まさに表題作。硫黄島で有名な栗林ではなく西から見た戦記かな。かたくなに「勝たなくては」と思う日本の狭さがよく表現されている。
基地はるかなり
銀行頭取・死刑囚二人のそれぞれの生き様。二人の運命は戦争時の一点だけで交わっている。日常の中で戦争と戦友である死刑囚をさくっと振り切るラストが気持ちいい。
草原の敵
遙か異国での少年兵の話だが、イマイチ感情移入ができずに終わった。
青春の記念の土地
なんとなくいい感じがするんだが、戦争を知らない我が身にはイマイチ伝わらないものがあるのかもしれない。
軍艦旗はためく丘に
淡路や宝塚が出てくるので親しく読むことができた。しかし、これも少年兵の頓死がテーマになっており、ピンとこない雰囲気かな。
着陸復航せよ
米人航空技術教官の姿が描かれるなんか一風変わった作品。帰国直前に頓死させる必要があるのか? 伝えたいことが伝わってこないいらいらが残るな。
断崖
前6作とは趣が大いに異なる作品。エッセイのような感じ。便利さ、快適さとかいったものへのアンチテーゼか。より深いテーマがあると思うのだが、この短編からは読みとれない。でも、この伏線はどこかで明らかにされるような気がする。そのときが楽しみだ。
投稿元:
レビューを見る
城山三郎の短編集を初めて読んだ。
城山三郎の文章は常に簡潔である。それは砂漠に水を注ぐかのようなのに、気付けば洪水が起こっているような、そんな感じ。
ここに載せられている全ての話が、そんな読後感をを味あわせてくれた。
そんなに深く何かを投げかけるかのような感じでもないけど、心に何かを残してくれた7つの短い話に乾杯!