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図書館で借りた。「男たち(一幕)」が好き。何度読んでも面白い。ブラックユーモア溢れる田中さんの短編集。
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『田中慎弥の掌劇場』(田中慎弥著/毎日新聞社刊/1,260円)ブックデザインはAlbireo。
http://books.mainichi.co.jp/2012/04/post-6534.html
この本は、書店で手に取ったときに違和感が、もう気になってしょうがない。私の少ない語彙で伝えるのは難しいのだが、ヌメっとゴムのような引っかかりのある質感。手が本に吸い付くような独特の感じがします。
真っ黒いに白と黄色の文字のみで構成されたカバー/帯ともに同じ質感。触った人なら誰しも「なんだこれは!?」と思うことでしょう。
これはカバー、帯ともに、通常の白いコート紙に墨と黄色を刷り、その上から「ベルベットPP」というフィルムをラミネート加工してある(実は最初触ったときは「スカッフフリーマット」というフィルムを貼ってあるのかと思ったら、少し別のフィルムのようでした)。
このフィルムは、ヌメッとした独特の質感がおもしろいのはもちろんなのですが、私がそれ以上にすばらしいと思う点が「傷がつきにくい」というところです。
本書のカバー(と帯)は文字以外のところがすべて真っ黒。通常、こうした真っ黒い印刷や紙の上にマットPP加工をすると、爪でちょっと触ったりするだけで、すぐに傷がつき目立ってしまいます。そうなるとカバーを交換して……という無駄な作業が多くなってしまいがちですが、このフィルムは傷がつきにくい(目立ちにくい)ので、その心配が軽減される。
「怖ろしい。あり得ない。しかも美しい―。あらゆる感情が味わえる37篇の掌の小説」という内容に合った「ヌメッとしたあり得ない質感」を実現し、かつ機能的にも配慮された加工。いやー、すばらしいデザインだと思いました。
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他の多くの方と同様、私も芥川賞の受賞インタビューで著者のことを知り、それで受賞作を読んでみた。
この掌篇集は、2008年10月から2012年1月まで、毎日新聞西部本社版に連載されたもの。
一篇が3頁前後、不思議でちょっと不穏な、ときにユーモラスな、そしてリリカルな掌篇が並ぶ。
私は存外、この本の全体が好きになってしまった。
「存外」というのは誉め言葉で、芥川賞受賞作から想像していたよりも、遥かに様々な色合いの、遥かに様々な想いを掻き立てられて、そしてそれが楽しかったのだ。
「あとがき」で著者は、「命を縮めて得た糧で、また命を延ばす。」と記すが、たしかにこれは、著者の内面の何かを削って書かれたものだと感じる。
見事な矜恃も感じられる。
遅ればせながら、他の作品も読んでみたい。
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一作品3ページの掌編小説集。
「共喰い」とともに手にしてみたのだが、星新一風あり、安部公房風あり、川端康成風あり、不条理あり、政治風刺あり(若干子供だましっぽくもあったが)で、ああ、こんなにいろいろなスタイルの作品も書ける人なんだと、少し意外だった。
飾り気がなくそっけないほどの簡素な文章は、それでいて現れてくる心象は巧みで、うまい、というよりはむしろ、技巧を徹底的に研究しつくした成果という印象すらある。
嫌いではない。
初めて著者の本を読むなら、芥川賞受賞作よりこっちかもしれない。
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初めて田中作品を読むのに短編だったらいいだろうと思って借りた。すごくよかったのでここのレビューを見て意外だった。とはいえ内容は覚えてない・・・。
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毎日新聞に掲載したショートショート集。一話3ページだから本当に短い。 毒がある内容や、時事ネタ、意味不明まで様々。
あとがきの、「私は図らずも、小説という絵空事に命を懸けてしまっています。命を縮めて得た糧で、また命を延ばす、この掌編集も、その結果であり、過程です。」 がしっかりブンガクしているようで、何か良かった。
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ゼミの課題図書でした。
手に取ったときの印象は「随分と短いな」ということ、それとカバーのするりとしたちょっと変わった感触。指紋がつきやすそうだなぁ、と。
読んでみての感想というか、読みながらの感想になるのですが。
タイトル通り「掌編小説」が「陳列」されている、全体としてそんな雰囲気の本でした。
好きな話とかを一つ一つ書き連ねるのも大変そうなので、大まかに思ったことを。
まず登場人物にほぼ名前がついていないことが気になりました。
もちろん「男たち(一幕)」は別ね。
なぜだろうか。
この掌編が毎日新聞に連載されていたものだと知って、あぁと思いました。
新聞に載っている記事ってノンフィクションじゃないですか。
それでも、自分の日常とは少しかけ離れた事件が記事になっているわけで。
そんな記事を見ながら、考える。
「なるほどそんなことがあったのか」
この時、新聞を読む人は別に事件現場に心を馳せているわけじゃなくて、心は自分の中に置いたままで目の前の文字を追いながら事件に向き合う。
そんな新聞記事を読む姿勢と同じように、読めるように名前がついてないのかな、と。名前がつくと、いっきにフィクションくさくなるので。
小説を読むときって、主人公の生きがいをなぞる内に、感情がシンクロしたり、一緒に憤ったりすると思うんだけど、この作品にはそれがない。なんせ短いから、その暇がない。
じゃあ作者は読者に対して登場人物をどう表現しているのかというと、シンクロさせるのではなく、真正面に対座させている。『鏡の向こう』みたいなそんな雰囲気。
読者は話の外側にいられるから、取り立てて何か冒険があるわけではない話でも「おお、これは面白い」と読み切った瞬間に思う。読み切った瞬間っていうのは、つまり話のテーマを把握した瞬間と同じことである。
それぞれの話の本当に簡素、質素?な描写が個人的には大好きです。
文章自体に捻りが効いているわけじゃない。
だからこそ、トスッと一文が突き刺さる瞬間がある。
夾竹桃の「人々の無言を蝉の声が埋めた。」っていう表現とか、特に好き。
課題で呼んだ本ですけど、これは買って良かったな~~と思いました。
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何が言いたいのか分からない短編ばかり。
星新一のように思わずウマイ!と言ってしまう話もなく、読み終えて振り返っても印象に残る話もなかった。
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3ページほどのぴりっとした作品が並んでいる。初めて作品を読んだけど、丁寧な文体が印象的だった。ごう慢な感じはどこにもない。物を決して一面的に見ない視線は厳しくて温かい、じゃないかな。震災について書いた4作品が特に好き。やっぱり、目線は低く、事実を等身大で受け止めたことを言葉にしている。
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難しい。今の私に解釈は。
しかし美しい。
そよ風に吹かれながらさらっとよみたい感じ。
空にみたものでは、なぜか涙が流れました。
全編通して、あぁ、田中さんは温かい人なんだろうなぁって印象を受けた。
偏見?
でも好きー笑
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共喰い(に関しての他人の感想)のイメージから濃くてどにょりとしてるのかなと思ってたけど、そうでもなかった。
どれもほんの1枚程度の短編でサクサク読めてしまった。
現実と村上さん的境界線上の話(ファンタジー寄り)から、日常と非日常の話まで。
個人的には うどんにしよう、雨の牢獄、リレー、四丁目十番地、意志の力、悪魔、会話の中身、竹やぶ あたりが好きだな。(多)
いきなりいきなりな言葉が出てきたりして思わず何度も何度も読み返してみたりした。どん!と出して放置!みたいなのすごくいい。不穏な空気が一気にブワッと溢れてきてそれ以後は全て白く見ることができないw
日常と非日常に関しては小さいことなら自分にもよくあるよね。仕事でやらかす前と後とか。さすがに殺す前と後とか死ぬ前と後とかそんな経験はないけど。
ブンガクにありがちな、何かの比喩的な話は難しくてよくわからない。怪物 とか宇宙の起源とか。
でもなんでだろう、書いてることは普通のことなのに、何が書きたかったんだろう?って裏に何かあるのかと疑い、裏の裏の裏を見すぎてこれはコメディか?って感じるのが不思議だ。
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面白かった。少し寒気するような話、陰鬱な話。「男たち(一幕)」は声に出して笑ってしまった。
動作の描写が素晴らしいと思いました。
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新聞への連載用ということでか、これまでのものと比べれば格段に読みやすい。視点を変え品を変え、個性的で味わい深い37編が並ぶ。いずれも結末への期待感にそそられながら、するする読める。但し結末はない。ぶつ切り多すぎで、思わず「えっ終わりっ」を連発。気持ち悪さを残しながらも不思議な想像をかきたててくれた。
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『共喰い』第146回芥川賞受賞作家。氏の発言には賛否両論のようですが、本作品はまあ、短編集ということもありいたってシンプル。ちょっとした時間の隙間に、開いたところから読む。そんな本の持ち歩きもいいかも。個人的には、『共喰い』、も良かったです。
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とても面白かったです。
短い中に、ぎゅっとつまった感じがしました。
あとであれこれ想像して、もういちど楽しめました。