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第10回 時代小説大賞
「遠山の金さん」や「旗本退屈男」と聞いて、何を想像するだろうか?そう、あの人気テレビ番組である。これら高視聴率番組を知っている人は多いだろうが、その脚本家まで知っている人はどれほどいるだろうか。そして、これら番組の番組の脚本家と、本書の作者が同一人物であるということを知っている人となると、ほとんどゼロに近くなってしまうかもしれない。
しかし、である。
そういったことは知らなくても一向にかまわない。何の問題もないことである。それよりも何よりも、この「作品」自体を知ってもらいたいと思う。
本作品が受賞した時代小説大賞は、本作品の受賞をもってその幕を閉じた。2000年のことである。当時としては(現在でもそうだが・・・)異例の賞金1000万円という大金が支払われていたが、これは何より時代小説というジャンルの衰退を危惧し、かつての黄金時代を取り戻そうという趣旨のもと行われた文学賞であった。
さて本作。入墨者となってしまった源七を主人公に、町方同心・佐々木のもと十手捌きを身に着けていく。そこへ盗みの濡れ衣を着せられた娘・お菊が登場すると、その彼女を救うためにクールな町方同心・佐々木と熱血新人・源七が奔走する。
さすがに脚本家だけあって、その文章は生き生きとしていて躍動感にあふれている。そして構成や登場人物など、そのすべてが完璧に仕上がっていた。それはこの文学賞がいかに良質の作家を生み出しているかということにおいても証明されている。
ぜひともこれまで時代小説に興味のなかった人にも読んでもらいたい一冊である。
2003年3月/講談社/講談社文庫
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TV等の脚本家であった作者が時代小説を書いた。
主人公は結構ぐずぐずしています。
途中からやきもきしてきます。
長屋の人たちがあたたかく成長を見守る…という
あらすじ書きがありましたが、そんな描写には感じ取れません。
なんだか、いま流行の「時代モノ」と呼ばれる小説とはやっぱり
ちょっと時代が…作者の育った時代が違うのだなあ、と。
世知辛さとか、水臭い、とか、現実のどうしようもなさが
なんとなく文字の向こうに感じ取れる気がします。
「時代小説」と「時代モノ」はやっぱり違うと感じます。
どちらが好きかは、個人の好み。
ファンタジックな時代モノも嫌いではないですけど、
こんな無骨な時代小説もたまに読みたいと思います。
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さほど特色が有る訳ではないのですが、しっかり書き込まれた作品です。
主要な登場人物も、主人公の源七を始めとし、酸いも甘いも噛み分けた(一寸表現が変かな)格好良い同心の玄一郎や清楚な恋人・お菊も際立った「何か」があるわけでは無いのですが、しっかり描けています。
また、ストーリーもありがちな捕物なのですけど、破綻無く読ませられます。
あと一歩抜けたら、そんな期待を込めた星4つです。