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ゴシック小説。ドラブロウ婦人の住んでいた館に赴く主人公。その館は満ち潮のときに孤立する、湖沼地帯にある。ひいたときに通ることのできる(九死人の土手道)。館に現れる、黒衣の女。霧のイギリスのイメージが良く出ていた。味わい深い作品。最後の驚きもまた怖い。面白かったです。犬のスパイダーがいい味出してます。
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書類整理の仕事で古い館にやってきた若手弁護士の体験する恐怖を描くホラー。
雰囲気といい舞台設定といい周りの自然描写といいまさに正統派のホラーという感じがします。いい意味で古臭い感じがします。
たぶん雰囲気を格段に盛り上げてラストの章につなげたかったのだと思うのですが、オチが読めてしまったためあまり恐怖はなかったかなあ。もちろん先が読めていても「うわあ!やっぱり……」となる作品もあるのですが、読む前にハードルを上げすぎたためか、途中までの盛り上がりの場面でもあまり怖さを感じられず、それを最後まで引きずってしまった感じがありました。
でもやはり雰囲気作りは抜群だったので、フラットな目で見れば十分読み応えありだと思います。スプラッタやサイコキラーなんかとは一味違うとても格調高いホラーでした。
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外国のホラーというと、超常現象的な、因果のハッキリしないものが多いイメージだけれど、こちらは幽霊の身元(?)がはっきりしています。
ゾクゾクするような恐怖はないが、イギリス片田舎の陰鬱な雰囲気とともに、忍び寄るような怖さがある。
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ダニエル・ラドクリフが主演で映画をやっていたのでどんなものか興味があって読んでみたけど、みんなに見える亡霊なんて全く面白くも怖くもなんともない。もっとスリリングな展開があると思いきや肩透かしくらいました。がっかり。
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上質の英国ゴシックホラー小説。
描かれる世界は繊細で叙情的で、
凄惨な美しさが漂う。
そう、この物語をもとに、
いくつもの印象的な名画を生み出せそうな…。
ゴシックホラー好きにはたまらない、
いかにも、な設定を踏みつつも、
その「いかにも」の質が良いために、
かえって斬新な気持ちを抱かせてくれる。
ひたひたと迫る恐怖、
少しずつベールが剥がされていく謎、
主人公の感情の波、
そのどれを取っても申し分ない。
秀逸なのは、まずは、明と暗のコントラストの書き分け。
これ以上ないくらいに安心できるシチュエーションを用意しておきながら、
次の瞬間にどん底に叩き落とす手腕はたいしたもの。
全体に対してだけでなく、随所にその手法を発揮させていて、
その細かな積み重ねがじわじわと読者の心に恐怖感を伝染させる。
そして、場面設定の巧みさに脱帽。
潮が満ちると陸の孤島と化す古い館、
そこへ通ずる細い土手道、
もくもくと馬車を走らせる男…。
光景が浮かぶ。
浮かんだ瞬間、物語の持つ世界観に引きずりこまれる。
清々しい恐怖感、
という形容はなんだか奇妙だが、
正直に言えばそれがしっくりくる。
愛すべき一冊。
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日本のホラーとは根本的に「恐怖」の質が違う。風土や風習、信仰が違うせいなのか、描写そのものにはまったく怖さを感じなかった。映像で観た方が怖さを感じるかもしれない。ラストシーンは怖いというより「厭」な後味だった。このラストシーンに至るまでが物足りない分、最後の衝撃は大きい。
堂々と教会に出入りしたり別のエリアに出没したりと既存の幽霊枠に収まらない負のパワーは、教会も勝てずに未来永劫残りそう。あの後も続いたのだろうか?
「げに深きは母の愛」か「凄まじき女の執念」か…。
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沼地に孤立した館で遺産整理にあたる青年を襲う恐怖を描く、英国ホラーの名作。昔語りの設定は今では目新しくもないけど、いい味ですな。ラドクリフ主演で映画化するそうなので読みなおしてみますた。
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正統派イギリスホラーのお手本のようなストーリー運び。王道のド真ん中を行きすぎて、先が読めてしまうのだが、それでも言葉による雰囲気作りは超一級・・・ストーリーのプロットそのものに新鮮味はないけれど、丁寧な情景描写と心理描写の積み重ねで、ゆっくりと読み手に恐怖を味わわせる。
訳者は英文学翻訳の世界では大御所の河野一郎先生。あとがきも研究者ならではの考察がなされていて一読すべし。
・・・犬のスパイダーが可愛かったです(笑
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舞台をみて、本も読んでみる。舞台→本の順なので、文章を読んでいても舞台の場面が目に浮かぶ。夏に読むにはちょうどよく、すうっと体温が下がるような怖さ。
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好きな俳優さんがこちらが原作のお芝居をすると言う事で購入。結局お芝居は見に行く事は出来ませんでしたがどの様な舞台になるのか想像しながらじっとりとした気持ちで最後まで読みました。
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たいした心境の変化など無いのだが、最近はホラー/幻想小説に以前よりも手を伸ばすようになった。他のジャンルに比べてさほど読んでこなかったこともあるが、ラヴクラフトの箴言「最も起源が古く、 最も強烈な感情である恐怖」を主題とする小説の真髄に、あらためて触れておきたいという気持ちが強い。ただし、作家の技倆が如実に表れるジャンルのため、つまらない作品もひときわ目立つ。結局のところ、プロットよりも、単に文章/描写が駄目なことが多い。恐怖心を煽るためには、イメージを喚起する的確な語彙と優れた表現力が必要だ。
つまりは、語り口なのである。日本古来の伝承文学ともいえる怪談は、今も夏の風物詩として子どもから大人まで楽しんでいる訳だが、同じ題材でも話し手の技術によって、怖さがまるっきり違ってくることと同様である。
1983年発表の本作も、英国伝統のゴシックホラーを継承し、全編「ゾッとする恐い話を聞かせてあげよう」という怪談話のスタイルを貫く。作者は、構成からレトリックまで〝聞き手〟を強く意識した〝語り手〟に徹している。主人公の過去を朧気に伝える切り出しから、人生を大きく変えることとなる本筋への自然な流れ、徐々に恐怖心を植え付けていくエピソード、真相が明かされたあとの静かな小休止を経て、一気に戦慄の悲劇が訪れる幕引き。すべては、〝落ち〟となるエンディングで最大の効果が得られるよう綿密に練り込んでいる。
クリスマス・イヴ、古い屋敷に集った家族が順に怪談話を始める。子どもらが話し終えた後、父親の番となるが、どうしても口を開くことができない。かつて自らが体験した真に恐ろしい幽霊譚。決して忘れることができず、誰にも言えない記憶。男はひとり、回想というかたちで物語り始める。
舞台はロンドンから遠く離れた小さな市場町クライシン・ギフォード。まだ見習い同然だった若い弁護士アーサー・キップスは、所属事務所の古くからの顧客であったアリス・ドラブロウ夫人の遺産整理のために町に赴く。途中、夜汽車で偶然乗り合わせた紳士デイリーは、キップスの目的を聞き、妙な反応を示した。宿に着いた翌日、ドラブロウの代理人ジェロームとともに葬儀に参列するが、身寄りもなく長らく人との交流を絶っていた夫人を弔う町の人間はいない。ただひとり、青白く痩せ衰えた黒衣の女が、墓場の陰で見つめる以外は。夫人が住んでいた館に通じる路は、河口と沼地に面していた。砂地に造られた細い土手道は、潮の満ち引きよって、通行できる時間が限られていた。やがて、馬車に乗ったキップスの眼前に、荒涼とした丈の高い〈うなぎ沼の館〉が姿を現す。日が暮れ、孤立無援の地を深い霧が覆い尽くしていく。屋敷内の開かずの間から、響き始める異音。屋外から、霧の中を突き抜けて届く子どもの絶叫。呪われた館の長い一夜は、まだ序章に過ぎなかった。
本作は、或る女の凄まじい怨念を物語の主軸とし、プロット自体は古典的で捻りは無いものの、聞き手の心理を揺さぶる描写力には圧倒される。短く引き締まった構成、情動を鮮やかに表現した流麗な文体、細部までこだわった舞台設定。劇作や児童小説など幅広い分野で作品を発表し���いるヒルは、ホラー専門の作家ではないが、創作にあたり過去の作品をとことん研究した節があり、見事に自家薬籠中のものとしている。というよりも、英国人として慣れ親しんできた怪談を、よりモダンに洗練させて蘇らせたと言うべきか。
いずれにしても、血と暴力で染め上げたモダンホラーが主流となっている昨今、本作のような正統派ゴシック・ホラーは貴重であり、新たなメルクマールとなるだろう。
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構成がうまいなー。
まず、明るい
幸せな日常を描くことで
次にくる闇が余計に
暗く、深く、濃く感じる。
コントラストが効いている。
小さな恐怖の種を散りばめ
何かありそう
そうならないで欲しい
これだけじゃないはず
とあえて予感させ
展開を想像させることで
じわじわと締めつけてくる。
そして主人公と同様
恐怖の館の秘密へと
どんどん引き摺りこまれてしまう。