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数日前まで渦中の人だった細野豪志氏による、原発事故への対応の記録。出版は本人から鳥越氏に声をかけ、記録が必要だ、ということで作られたとのことですが、民主代表選の直前、解散が噂されるタイミングに出版されるあたりは、勘ぐりたくもなるではないですか。
この本では、事故直後の激務で頭が働かなかったこと、作業員への配慮、東電でのバツの悪さ、菅直人氏の性格や制止など、正直にかいてあるなという印象です。民間事故調の報告書よりも、現場の臨場感は伝わって来ました。
もちろん、政治家の言葉をすべて丸呑みできるほど、僕も人が良くはありませんが、出版意図はともかくとして、「言わされた」のではなく、「言った」のだから、なおの事、常に口にする「福島に寄り添って」という言葉は裏切ってほしくないし、原子力規制委員会の人事についても、現状の滅茶滅茶さを肯定してほしくない。さあ、続編が出せるかな?
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彼を知る者として、あの時何を考えてどのように行動したのか非常に興味深かった。
政治家としての覚悟•責任という発言が随所に出てくるが、プロ意識の高さに感銘を受けた。
自分が困難に立ち向かう時にこれだけの覚悟を持って臨めるのか… 深く考えさせられ、見習わなければいけないと強く感じさせられた。
また彼のインタビューの受け答えも非常に論理的かつ明解で、読み易かった。
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震災のとき官邸でどんなことが起きて、どんなやり取りがされていたのか?
細野氏の目線からだけなので全部が正しいとは限りませんが(思い違い、記憶違いもあるかもしれないですし)、ひとりの人の目線から語られていることでより詳細でわかりやすく理解することができました。
自分の記憶が風化する前に語りたいというのは、とてもよいことだと思いました。
私も震災で怖かった記憶が、日常に紛れていくうちにどんどん薄れていることを自覚しているので……。
官邸サイドのどこか幕越しにしか分からなかったことが、この本で身近に感じることができました。
当時の報道から、何もしてないように思えて不安でしたが細野さんの視点で菅元総理等いろいろ美化されてるのでは? と思うところもありましたが、思っていたより官邸サイドがまともな動きをしていたように感じました。
他に当時のことを語ってくれている政治家や現場の人はいるのでしょうか? あれば読んでいろいろ比較してみたいなぁ。
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細野氏は非常に律儀な方なのだ、というのが読んだ第一印象。
民主党の代表選について、「自分は政権の責任ある立場に居たものなので、その責任を取って今回は出ない」としたことが、なるほどと分かる。非常に道理をわきまえる部分があるので、人としての好感が高まる一冊。
リーダーというよりは名参謀になるべき方なのかもしれない。民主党自体には疑問符がついてしまったが、今後の立て直しに尽力されることを期待したい。
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「これからの自分の言動の一つ一つは、必ず歴史の法廷で裁かれるであろう。そして、間違いなく私は歴史の法廷の被告となる。」
「この本は、歴史の法廷における私の陳述書となったと思う。」
以上、“あとがき”よりの細野剛志の言葉である。
「この本は私の発案でできあがったものではない。本の基底になっている合計十時間以上に及ぶインタビューは、・・・当時総理大臣補佐官だった細野剛志衆議院議員からの依頼によってスタートした。」
以上、“まえがき”よりの鳥越俊太郎の言葉である。
細野氏の記憶とそれぞれのその時の思いを、鳥越氏が聞き出すというインタビュー記録である。細野氏の政治姿勢も分かるが、細野氏の立場から見た「福島原発事故対応」の様子が垣間見える。
私がこの本で新しい視点を持ったのは「今後の日本の原発」である。単に「なくしたほうが良い」と言うだけでは、日本の使命を果たしていけない、という細野氏の指摘だ。使用済み核燃料の最終処理の問題も含めた今後の原子力のあり方について、唯一の被爆国であり、核兵器を待たない原子力技術一流国として、日本と言う国は大いに世界に貢献していくことが使命ではないかと言う。
今後の政治家細野剛志を見守っていきたい。
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民主党政権で福島原発事故の収束を担当し、環境大臣でもあった著者と鳥越俊太郎の原発事故についての対談である。当時対策本部の中心メンバーであった細野氏の証言は、本を読むだけで戦慄を覚えるほど当時の緊迫感が伝わってくる。もちろん話せないことや色々あるだろうが、ほぼ正直な心情を述べたものであろう。細野氏は3月11日の2ヶ月前に首相補佐官に就任したのだが、その2ヶ月間に自分が何をしていたか全く覚えていないそうだ。それほどまでに福島原発への対応は筆舌に尽くしがたいものがあったのだろう。リアルに東日本全体を放棄するという事態も有り得た訳だから。次々と建屋が吹き飛び、原子炉に水が入らず、核燃料が溶け落ち、燃料棒貯蔵プールも崩壊の恐れが出る事態となり、東京電力が全面撤退(東電は否定するが事実を歪曲しているだろう)したら本当に日本が終わっていた。政府として東電の撤退はありえないという判断(東電社員に死をもたらそうとも)を即時に下したことは評価できる。しかし今なお福島第一原発の処理はなかなか進まない。最大限の努力はなされているのだろうけど・・・
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[歴史の被告の陳述書]震災時は首相補佐官、その後は原発事故担当大臣として福島第一原子力発電所における事故の対応に当たった細野豪志に、ジャーナリストである鳥越俊太郎が行ったインタビューをまとめた作品。事故時における緊迫した状況や、事故を経ての原発、エネルギー政策などに関するやり取りが記されています。
細野氏側がインタビューを鳥越氏に申し込んだという経緯があることもあり、どちらかと言えば「聞き書き」の部分が多くを占めているように思えました。他方、当時の政策決定者がどのように行動したか、または行動せざるを得なかったかということが覗けたのは非常に有意義。本書一冊で事故の全体像が描けるわけでは当然ありませんが、その一端を当事者自らが切り取ったということで有益なのではないでしょうか。
官邸内の当事者として職務に当たった細野氏だからこそ語れる今後のエネルギー政策、原子力発電政策についても読み応えがありました。特に原子力政策が表裏として安全保障政策の側面を有しているという指摘には、なるほどと目からウロコが出る思いでした。用語解説などもついていますので、日本のエネルギーについて学びたいという方が2010年代前半の状況を把握する上で便利な一冊なのではないかと思います。
〜本来、リスクはゼロか一ではないんです。リスクは相対的なものだし、さまざまなリスクがありうるわけだから、それらに対して冷静に備えるのが正しい危機管理なんです。でも、原発についてはそうなっていなかったんですね。原発は「安全だ」ということになっているから、それに縛られて、安全が脅かされた場合の実質的な備えができていなかった。〜
Amazonのレビューでは低評価でしたが☆5つ