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9つの短篇集。
中心人物と取り囲む情景が相変わらず読者を和ませてくれる。
うだつの上がらない人、不器用に生きている人の事件と悲哀、ふっと横切る幸福を感じる瞬間が良かった。
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9編の短編集。
最初の2,3作を読んで「何となくかたく、暗い?」と感じたので、初出一覧を見るといずれも昭和50年から53年の初期の作品だった。
「孫十の逆襲」は藤沢作品の中では変わった題材。
「泣くな、けい」はこちらまで泣きそうになった。
初期の作品であっても「人生の教科書」には変わりがない。
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下層の者がみせる意地、一瞬の煌めき、藤沢作品には欠かせない要素だと思う。この短編集の中では、「孫十の逆襲」「泣くな、けい」
孫十の最期とけいの涙が愛おしい。
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バランスのよい短編集。
「鬼気」
道場の高弟たちが、今の自分達に勝るものは城下に居ないと豪語する。そして細谷という武士が話題に上がり、その強さを確かめようと企む。それは悪意を感じさせぬ若さゆえの行動だったが、細谷の放つ鬼気に触れ逃げ帰る羽目に…。
「夜の橋」
民次とおきくは博奕が原因で離縁した。数年後、おきくが薬屋の番頭との縁談を相談に来る。民次はその男を賭場で見掛け…。話の雰囲気は暗いが結末は心地よい穏やかさ。
「裏切り」
研師の幸吉が家に戻ると妻のおつやが居なかった。翌日に死体として発見される。おつやを殺したのはいったい誰なのか。妻と友人には裏切られたが、親方の娘おまちという救いがあってよかった。
「一夢の敗北」
一刀流の達人、一夢を中心とした出来事。読んでいて退屈だった…。
「冬の足音」
お市は以前に家で働いていた職人、時次郎の存在が忘れられない。縁談を断り続け、ついには時次郎の元へと想いを告げに行く。恋は実らなかったが、幸せになれそうな結末でよかった。
「梅薫る」
武家物。嫁いだ娘、志津が度々実家に戻ってくる。原因は初めの縁談の相手が忘れられないため。父から破談となった理由、現在の夫が新たな縁談相手に選ばれた理由を聞く。
「孫十の逆襲」
関ヶ原の戦いの後。孫十の暮らす村の近くにの野伏せりが現れ狼藉を働く。いずれこの村にも来るだろうと、村で唯一、戦の経験がある孫十に相談が持ち込まれる。戦場で逃げ回るばかりだった孫十は頭を抱え、そして決断する。
「泣くな、けい」
相良波十郎は藩が所蔵している剣を研ぎに出した。その剣を死んだ妻に返却を任せていたが、蔵には戻されていないと知る。妻の裏切りと売られた剣の行方。女中のけいが主人の代わりとして剣を買い戻しに旅立つが…。手篭めにした女中を使いに出そうという発想が理解し難い。
「暗い鏡」
鏡職人の政五郎の元に姪のおきみが訪ねてきた。その姪が殺され、政五郎は姪がどんな生涯を送ってきたかを辿っていく。真っ当なお店に奉公していたはずのおきみが奈落へと転がり落ちていく様が描かれている。哀れでありながらも不思議と暗くはない。
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内容(「BOOK」データベースより)
博奕に溺れたせいで夫婦別れしたおきくが、半年ぶりに訪ねてきた。再婚話の相談で、もう自分には関係ないと一旦は突き放す民次だったが、相手がまぎれもないやくざ者と分かるや、危険を顧みず止めに出る…雪降る江戸深川の夜の橋を舞台に、すれ違う男女の心の機微を哀感こめて描いた表題作他八篇を収録。
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9つの短編。
武家物4作、市井物5作。
それぞれ人々の悲しみややるせなさを描きどうしようもない人間の業のようなものを感じさせるのだけれど、それらの話の先には辛い思いをした人々が前を向いて歩いて行けそうな光が見え、身の丈に合った心地よい生き方をしていくだろう事が読み取れ、私はホッとした。
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安定の内容。
兎に角文章が奇麗で心がいつも洗われる感じがする。
短い時間帯の時に読むのに最適の短編集。
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藤沢周平「夜の橋」、2011.7発行。夜の橋、梅薫る、孫十の逆襲、泣くなけいなど味わい深い9話が収録されています。2つ選ぶなら夜の橋と泣くなけい。一番のお気に入りは「泣くな、けい」です!
何度読んでも読み応えがあり、読むほどに味わいが増す、藤沢作品。「夜の橋」(1981.2刊行、1984.2文庫化)には、9話収録されています。タイトルになってる「夜の橋」は、博奕にのめり込んだ民次を、一旦別れてまでも目覚めさせた女房の物語。「泣くな、けい」は、読んでて私も泣けてきました。15で百姓娘から武家に奉公に来たけい。妻が病気で療養中に主の波十郎に襲われてしまう。妻は病死。妻の不祥事で、主の切羽詰まった一大事に、けいの取った一途でけなげな行動に読み手は感服致します。読んでて、心が起承転結しました!
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江戸時代の武家、商人、職人、農民の生活が取り上げられ、ちょっと悲しい結末のもの、希望を抱かせる爽やかなものと、バラエティに富んだ短編9編からなっている。
今回の話のテーマは、男と女のすれ違いから生じる心の機微が綴られている。
どの話にも哀感が漂い、これぞ藤沢周平の綴る素朴且つ素直な人間回帰のドラマを味わった。
特に心に沁みたのが『泣くな、けい』だった。
武家の相良波十郎は深酒をした夜、妻が湯治に出掛けて留守を良いことに、若き女中のけいを手籠にしてしまう。
事を済ませたすぐ後、当然のことながら波十郎は自分が犯した大きな過ちに心を痛めることになる。
そのような事があってまもなく、妻の麻乃は病が回復せずに亡くなる。
妻の死後、突然に生前の妻の行いが原因で波十郎は窮地に追い込まれ、場合によっては腹を召さねばならない事態を迎える。
その波十郎の窮地を、手籠にされたけいが身命を賭して救うことになる。
恨みこそすれ、憎き波十郎を救うけいがいじらしい。
また、自らの蛮行を悔いる波十郎にも、けいに対する強い呵責の念が宿り続けていた。