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圧巻の悪漢小説……という駄洒落。
このたびのロシアのウクライナ侵攻にかこつけて、積読にしていた本書に手を伸ばしてみた。
以前ドストエフスキーを読んでいたとき、作中人物の多くがフランスの話をしていて、ロシアはヨーロッパの端っこという意識があるんだなと知った。
そんなロシアのそのまた隅っこにウクライナが位置して、しかも東ヨーロッパとロシアの間にあるものだから、東西からの引っ張り合いに苦しめられる。
ロシア革命で帝政ロシアが崩壊したとき、割を食って混沌に陥ったのが、20世紀初頭のウクライナだったというのが本書。
しかしそんな歴史だとか事実だとか丁寧に書き込むことなく、ただ悪漢が、ごろつき、のらくらが、道徳も倫理もぶっ飛ばしていく。
大きな歴史の大きさなど考慮に入れず、隅っこのほうで転落しながらどんちゃん騒ぎをしていく。
というか、倫理を踏み越え……てしまいそうな、人間性を失っ……てしまいそうな、カオスに偶然いてしまった者が、語り手ヴァシリだ。
この人、頭はいいが根が甘やかされたお坊ちゃん。
それこそドストエフスキーが描いた(決して富んでいない)地主の小倅で、本来ならロシアのペテルブルグやフランスのパリに遊学して文化を持ち帰る人だったんだろうけれど、否応なく地獄巡りせざるをえなくなった。
国家や時代の趨勢の中で叩き込まれた地獄巡りの中で、しかし橇、列車、そしてタチャンカ(機関銃を取り付けた無蓋馬車)、複葉機、と乗り換えながらウクライナの平野を行ったり来たりする、その逞しさというか狡さというかヘタレっぷりというかいけ好かなさというか……。
おそらく本来はこの残酷性こそが人間の本質であって、平和ぶりっこは虚飾、一枚剥がせばこんなものよ、ということか?
個人的にはあまりの非道さに、痛快! とも思えず、陰惨さに同情、もできず、もやもやが残る読後感。
もちろんそこに意義があるのだが。
皆川博子は心底から好きなのに対して、この作者は凄さは判るが手離しで好きと言い切れない、もやもやするけれど中毒になってしまう感じ。
SNS上での厳しさ・苛烈さ・峻厳さをちらちら見聞きしているのもあるのかもしれない。
カバーイラストは素敵。
タチャンカと空と小麦畑と。
その空は黄昏れ。
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これも方々で絶賛されているので。あと、佐藤亜紀作品をとりあえずどれか読んでみないと、ってことで。そもそも舞台設定がロシア方面だからではあるんだけど、まるで外文を読んでいるような荘厳な語り。会話も地の文のまま、物語はひたすらに突き進む。凄惨なバトルシーンも織り交ぜて、敵味方問わず、どんどん死んでいく。あとどうしても触れておきたいのが、装丁の美しさ。この表紙、素晴らしいです。内容ともバッチリ合っていて、本作の魅力を存分に伝えてくれている。凄い作品でした。
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なんだかわからないうちに読み切った。
面白いかそうでないかもわからない、圧倒的な読後感。
アゴタ・クリストフの悪童日記をおもいだした。
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解説で、それこそ詳しく解説しているが、解説を読まなきゃ内容を理解できないくらいだったら、それはもう、読む価値がないというか。
一言で言えば、ついていけない世界だ、ということか。
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ウクライナ、帝政ロシア末期というマイナーな時代、舞台に生きた子悪党の一生と当時の騒乱の様子が生き生きと描写されています
英雄譚やピカレスクではありません
そういうには主人公はあまりにも小物すぎます
この作品はあまり好みませんが、他の作品をぜひ読んでみたいと思います
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悪漢小説は今まであまり読んでこなかったですが、スピード感がとてもありました。圧倒されます。
溜まっていく鬱屈、倒しても次から次にわいてくる問題。暴力の連鎖ですが、革命や戦争が起こったときに、中心ではなくその周辺の世界はこうなるのかもしれません。
舞台がウクライナなので登場人物がほぼロシア人で、親しみのない名前ばかりでしたがあまり混乱はしませんでした。呆気ない最期です。
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どこかに面白いと書いてあったので図書館で借りてみた。
あまり面白くなかったが、つまらないというほどでもない、なんとも微妙な読後感。