投稿元:
レビューを見る
久々に読み応えのあるライトノベル。全9巻の最終巻にふさわしい物語だった。
ジゼットが自分の気持ちに気付く『眠れる望楼』
ラビサが無邪気な少女から一歩踏み出す『あざなわれし者』
お互いがお互いを大事に思うが故に離れてしまう『暗夜琉々』
自分の望みがなんであったか気付き、相手に想い焦がれる『鋼の旋律』
否応なく変革の波にさらわれていくジゼットとラビサが、お互いを想う気持ちを自覚したのもつかの間、そのためにすれ違い離れ離れになっていくのは読んでいてとても辛かったのだけれど、この『かさなる輝跡』ですべてが「かさなって」とても幸せな気持ちで読了した。
緊迫した状況の中の二人の再会。
ジゼットの胸で泣くラビサと、ラビサの胸で泣くジゼット。自分の想いを伝えて、お互いを受け止めあう二人の想いの深さに涙が止まらなかった。戦いのさなか、お互いに言葉を交わす時がなくても、目が合うだけで全てが分かりあえる二人にも。
ジゼットの戦いは本当に厳しいもので、戦いを終えたジゼットに待ち受けていた運命に、ラビサと一緒に絶望した。きっとこれがリードゥの言った「光が闇にのまれる」だったのかな。そんなラビサを守ったのはやっぱりジゼットだった。ジゼットがラビサを心から大切に想う気持ちがあふれていて、必死に運命に抗おうとする半狂乱のラビサにまた泣けてきて……
ぼろぼろ泣いていたところ、シムシムが登場したのにはちょっと驚いた(唐突な感じがあったので…)ラビサって"イフリート憑き"だけじゃなくて"シムシム憑き"でもあったのかしら、なんて失礼なことを考えて、二人とも助かるならまぁいいや♪と一気に涙が止まりました。
眠りから覚めたラビサとジゼットの「再会」は14歳で孤独な戦いに挑んだジゼットの本当の意味での「戦いの終わり」で、このシーンの為に描かれた物語だったんじゃないかと想うくらい、素敵だった。
ほんと、涙なしには読めなかった。
こんな読了後の気持ちのいい物語は久しぶりで、出会えたことに感謝です。
それにしても…最後に差し込まれた10年後の二人に、生殺し気分を味わっている人も少なくないに違いない!巡察使として、一緒に旅をする二人の物語を読みたいです。ライフワーク的な小説にしてくれないかなぁと希望します。
(ほら、ルルル大賞の審査委員である榎木洋子さんは、ずーっとリダーの世界を描いている訳ですし!なんて。。あくまで希望ですが)