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みんなのレビュー88件

みんなの評価3.6

評価内訳

86 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

神に対して異議を唱え続ける精神

2010/07/10 18:54

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:analog純 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 『黄色い人』の冒頭に、前書きのような形で、筆者は短いお話を書いています。
 「童話」と紹介している、神様が人間を作った時のお話です。

 一人でいるのが淋しくなった神様は、パン粉で人間を作ろうとし、竈で焼きました。
 初め、五分で竈を開けた時にできた人間はまだ生焼けで真っ白だったので、「白人」と名付けました。今度はうんと時間を掛けて焼きましたが、時間を掛けすぎて真っ黒に焼けた人間ができあがりました。神様は「黒人」と名付けました。
 最後にほどよい時間で焼いた黄色い人間ができ、「黄色人」と名付けます。そして神様は、「何ごとも中庸がよろしい」と言って、うなずかれました。

 この話は何なのでしょうね。
 『黄色い人』の中に黒人は出てきませんので(『白い人』の中にも出てきません)、白人と黄色人種の比較と考え、そして、何を比較しているのかとさらに考えると、たぶん、「無信仰者の、信仰者に対する相対的優位」って事でしょうかね。
 『黄色い人』のテーマの一つはたぶんそんなところにありましょうか、しかし今更ながら、遠藤周作の純文学小説は、とても重たいです。

 『白い人』と『黄色い人』の二つの小説、どちらの出来がいいでしょうかね。
 一般的な評価がどうであるのか全く知らないですが、僕の感覚的なとらえ方では、うーん、やはり、『黄色い人』かな、……迷いますね。

 『白い人』は第二次世界大戦終盤のフランス(ナチスに占領されていましたが、解放直前のフランス)が舞台です。

 戦争と性的なるものの関係。ナチスドイツの人間性からの「ずり落ち」。そして、キリスト教とサディズムの関係。

 このあたりがテーマでしょうが、どの一つをとっても、とてもとても重苦しいですよねー。そう簡単に見やすい鳥瞰図ができようとは思えませんよねー。

 だから(「だから」かどうかはわかりませんが)、小説としては、少し図式的になったような気がします。
 登場人物が、筆者に操られている人形のような類型的な動きになり、ややリアリティに欠けたように感じます。

 人間が肉体的苦痛によって信念を曲げるということは、たぶん現在では、さほど意味のあるものではありません。そこに倫理的な、あるいは文学的な課題は、たぶんあまり残っていないと思います。
 そういう意味で言いますと、この小説に立てられたテーマは、少々古びかかっているとも思えそうです。

 一方『黄色い人』に描かれる、遠藤周作的宗教的二律背反テーマは、「全面的に神を信じることができないのに神の不在も恐れる」です、たぶん。

 しかし、筆者の持つ「背徳者意識」の強さは、いったい何なのでしょうねー。
 僕は、さほど根を詰めて遠藤周作を読んでいるわけではありませんが、この「自分はいつ神を裏切るかわからない」とでもいえそうな背徳への恐怖、そしてそれに伴う神の裁きへの恐怖(決して許してくれない神)は、とても強い形で、一貫して筆者の小説に流れていると思います。

   -----------------------

 ユダも、もし、あなたの弟子であったならば、そしてまた、その救いのためにあなたが十字架を背おい、鞭うたれ、死なねばならなかった人間の一人であったならば、あなたは、なぜ、彼を見捨てられたのだろう。
「ユダ、私はお前のためにも手をさしのべている。すべて許されぬ罪とは、私にはないのだから。なぜなら、私は無限の愛なのだから」あなたは決してそう言わなかった。聖書にはただ、怖ろしいこのあなたの言葉がしるされてあるだけなのです。
「生れざりしならば、寧ろ彼に取りて善かりしものを」

 キミコは、私にゆさぶられて乱れた髪をなおしながら呟いた。「なぜ、神さまのことや教会のことが忘れられへんの。忘れればええやないの。あんたは教会を捨てなはったんでしょう。ならどうしていつまでもその事ばかり気にかかりますの。なんまいだといえばそれで許してくれる仏さまの方がどれほどいいか、わからへん」

   -----------------------

 別々の二カ所から引用しましたが、後者の台詞などは、まさに日本人的・ほぼ無宗教的「気楽さ」で読めば、大いに納得できてしまいそうです。

 しかし筆者がこだわったもの(それについて僕が十分に理解できているとは思いませんが)、たぶんそれは、日本的宗教観の持つ、「人間の意志力に対する否定的感覚」めいたものではないかと思います。

 神(仏)が人間をすべてを許すとは、結局、神(仏)が人間をすべてを信じていないことに他ならないのではあるまいか。そしてそれに対して、人間として震えながらも「おおそれながら」と異議を唱え続ける精神。
 遠藤周作が最後までこだわったのは、たぶんそういったものであり、だからこそ、遠藤作品はとても重く、そして、いつまでも人を打ち続けるのだと思います。

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紙の本

「道」

2004/12/05 04:54

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:すなねずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る

「あまりに図式的でリアリティのない世界……善と悪、光と影、霊と肉、そんな二元論的思考?」

遠藤周作の小説は図式的だ、という批判がある。思想的なものが前面に押し出されすぎて小説としては完全に失敗しているケースが少なくない、というふうに。

でも、『白い人・黄色い人』(1955)『海と毒薬』(1958)『沈黙』(1966)『死海のほとり』(1973)『侍』(1980)『深い河』(1993)と七つの小説を続けざまに読んでみて思うのは、少なくとも『侍』や『深い河』のあまりに図式的な小説のつくりは、これは遠藤先生、わざとやってるな。

旧約聖書の「神」と新約聖書の「神」の違い。

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(村上春樹)の一角獣と『沈黙博物館』(小川洋子)のシロイワバイソン、聖性を帯びた動物(生贄)の死と引き換えに保たれる静けさ。生贄(犠牲)に支えられた旧約聖書的な世界には救いがないように見えるが、それゆえにこそ「神」とのつながりを感じることもできる。「律法」(きまりごと)を通してのつながり。

>(『キリストの誕生』1979)

人は誰も多かれ少なかれ図式的な形で世界を認識している。そしてそのことがさまざまな悲劇を生み出す。では、どうすればいいのか。遠藤周作はそれを「小説」という実践を通して探究する。

遠藤周作が母の死の翌年に書いた「白い人」(芥川賞受賞)という小説の図式。

放蕩的なフランス人の父と宗教的に厳格なドイツ人の母の間に生まれ、サディステッィクな性向とジャンセニスム思想(「人間はいかに、もがいても悪の深淵に落ちていく」)に囚われた「私」(斜視)は、ナチス占領下のリヨンでゲシュタポへの協力者となる。そして、戒律を厳格すぎるほどに守るカトリック司祭として、対独レジスタンスのメンバーを助けていたジャック・モンジュ(醜い男)を「自殺」へと追い込む。かつて大学時代にジャックを悪の味を知らしめるためだけに誘惑したその従妹マリー・テレーズを、ふたたび人質にして、彼女の貞潔と引き換えにレジスタンスのメンバーを密告するよう迫ることによって。

その図式は非常に明確である。単純である。見え透いている、と言ってもいい。私=悪魔(蛇)、ジャック・モンジュ=基督(アダム)、マリー・テレーズ=ユダ(イヴ)。

>

「白い人」のラスト近く、ジャックの自殺後に発せられる「私」のその言葉は、母の死後に聖ベルナール教会を訪れ、祭壇の上の十字架像を前に発せられる「私」の言葉に、あまりにあからさまに対応している。

>

死に囚われた「私」に、救いが訪れることはない。しかし、25年の歳月をかけて、『侍』という、これまた非常に図式的なつくりの小説のなかで、処刑を前にして、自らの信仰を貫いたがゆえにふたりの「侍」を死に追いやった「宣教師」は、こんな最期の言葉を発する。

>

その道のりの長さを思うと、気が遠くなるように、胸が熱くなる。

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紙の本

白い人

2001/07/27 10:55

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:193 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 傑作である。内容はここでは書かないが構成や文章や内容はすべて整っていて緊張した構築性をもっている。必ず一読の価値在り。

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2006/01/02 17:40

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2006/02/16 13:10

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2006/04/09 00:15

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2006/05/04 10:33

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2006/08/10 02:12

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2006/11/23 12:57

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2007/06/27 22:36

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2008/02/26 18:10

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2008/03/05 23:39

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2008/05/13 17:44

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2008/05/15 22:13

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2007/12/17 22:41

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