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第一線での捜査に熱意と執念を持ち、自ら望んで機動捜査隊へ異動した女性刑事、クロハ。応援要請を受け急行した案件で、レンタルコンテナ内から14体もの冷凍された死体を発見する。
第12回日本ミステリー大賞新人賞受賞作品。
ハードボイルド風の硬質で独特の文体に最後まで慣れることが出来なかった。
パトロール主体の自動車警羅隊から現場捜査主体の機動捜査隊へ異動したクロハだったが、男性優位の縦割り構造のため思うように行動出来ずにいる。
生活相談窓口でもある警務課の案件、未払いレンタルコンテナの内容確認立会いに回された彼女はコンテナの中から14体の冷凍死体を発見する。
典型的な集団自殺と決めつけてしまう捜査本部に、自動送信された自殺者からの遺書と不可解なテキストファイルが届く。
SF嗜好の強い著者の作品は登場人物名がカタカナ表記。
これが個人的に感情移入を阻んでしまったのかもしれない。
読みづらく、記号的であり、キャラクターを解かりづらくしている気がする。
捜査関係者の登場人物が多く、その中でメインキャストを際立たせるためか、管理官、班長など無名のキャストも登場するが、名のあるキャスト名がカガ、フタバ、イシイ、ハラ、タケダ、サトウという具合。
世界観、質感は「エヴァンゲリオン」「攻殻機動隊」だろうか。
それも終始一貫してくれれば良いものを、伝聞時にはカタカナで筆記、コンピューター入力時には漢字表記になってしまう者もいて紛らわしい。
また、生死、殺人を扱う作品であるだけに世間一般の氏名への配慮のためか、ムラカミを邑上、カネコを鉄古と捻っているがイシイは石井。
更に、3人称で構成された文章にも関わらずクロハの姉として登場する“姉さん”には名前がなく終始“姉さん”という表記。
上司がカガ、管理官となっているのに“姉さん”である。
セリフも「?」を排し「・・・」となっているため読みづらい。
など、個人的に気になってしまう文体で最後まで馴染めなかった。
内容に関しても、大勢の捜査陣の中で事件のロジックを解くのが常にクロハであったり、ネット上のセカンドライフに代表されるような仮想空間に主要人物が集結してしまっていたり、その空間が仕事に燃えるクロハの拠り所という設定であったり、自殺者の動機である社会背景が不明瞭なままであったり、唐突に出て来る性悪論の件が不自然であったりと、文体に馴染めない所為かこれも個人的なものだと思うが粗さが目立ってしまう。
メインプロットがネットを介した集団自殺というのも、数年前から桜井亜美の「チェルシー」など多数あるので既視感が否めなかった。
これに異常殺人事件の凄惨さ、仮想空間のポリゴン住人による忠告という匿名性、社会派ドラマとしての県警、本庁間の不毛な争い、哲学や思想を含む精神科医による善悪二元論的解釈、孤独からの家族愛とふんだんに盛りつけてしまったため、最終的に脅威的な数字に昇る集団自殺者の選んだ死の記念碑が黒幕の意図とは別に蔑ろにされてしまっているように見える。
肝心の黒幕もステレオタイプかつ多芸の���め、伏線として度々語られるクロハの能力と共にクライマックスで埋没してしまった。
現代の怪物として描くのであれば伊坂作品の「グラスホッパー」のように人物として掘り下げるか、電脳内での対峙としてSFとしてしまうかで見え方は違っていたかもしれない。
過去3回の「該当無し」を出した文学賞受賞作という先入観を持って悪い読み方をしたからだろうか。
あくまで個人的にだが、この作品にはタイトル以外に良いところを見つけられなかった。どうなんでしょう。
結城充考 その他の著書
・エコイック・メモリ
・奇蹟の表現
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書評ほどのインパクトがない。近未来感は出しているが、内容はさほどそれが感じられない。事件のインパクトも薄いし、スピード感があまりない。
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情報がたくさん盛り込まれているために、ひとつひとつの印象が薄くなっている感じは否めないと思います。
ですが、単純に面白かったです。
頭の中で映像化しやすいところも含めて、個人的には粗っぽい姫川シリーズみたいに感じました。
好みが別れる作品だと思います。
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警察小説の超新星という帯に興味を惹かれて購入したが、ちょっとなぁという評価。カタカナ名が読みにくいし、世界観もいまいちあわなかった。次作に期待だ。
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警察推理小説。男性社会の中でくすぶっている女性警官クロハが主人公。殺人事件の捜査を外され、レンタルコンテナの支払い遅延のための開庫立ち会いに駆り出される。そこで見たものは14体の凍死体。
テーマも面白いし、仮想空間を取り入れたりしたのも良かった。文体はちょっと読みにくいこともあったけど、慣れれば気にならないかな。
全体的にビジュアルを意識していて、すぐにもドラマや映画になりそうな感じがちょっと軽薄な感じがしたかなー。
同じ主人公の次回作もでたようなので、そちらも楽しみ。
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先ずは掴み所のない作品だったってのが率直な感想かと。。
舞台は京浜地区の埋立地で雨が降る夜のシーンが多いコト、そして登場人物のほとんどがカタカナ表記になってる等で全体的に無機質でダークな独自の世界観が創り上げられている。なんとも言えぬ不快な空気を醸し出す表現力だったり特異な事件性には惹かれるものがあったのだが、どこか現実離れした感じが否めない上に人物描写が浅かったりで、人間心理の深い部分に触れてる割には重みが感じられずに何だかボヤけたままだったしで…
のっけから14体の冷凍された遺体が出てくる事件性や、この世界観だったりには確かにインパクトがあった!!
しかし、肝心の内容面では登場人物たちの人物像がとにかく捉えにくかった。人名のカタカナ表記を含めた世界観からくるものなのか作者の意図した描写によるものなのかは分からないが、作中に出てくる仮想空間と相成って、リアルよりもバーチャル世界の出来事としての印象を受けてしまい、クロハの抱える鬱屈や犯人の悪意すらも薄っぺらく感じて何か釈然としないものが残った。。
仮想空間を通じた人間関係の連鎖を捉えるなど、作風以外でも現代社会とマッチィングした要素が取り入れられたりして斬新さや独創性を感じられる作品ではあったが、インパクトある出足からのテンションを維持しきれなかったり、もう一歩の深堀ができていなかったのが残念。。
選考委員満場一致で日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞したって肩書が期待値を膨れさせる要因だったとは思うが、膨れた期待値を満足させるには少し物足りなかったかと…
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埋立地に置かれた冷凍コンテナから、14人の男女の凍死体。集団自殺と判明するも、まだまだ続きがあって、仮想世界と現実が次第にオーバーラップしてくる・・・
登場人物の名前がほとんどカタカナ表記であったので、最初から1/3くらいまでは、なかなか読み辛いものがあった。こういう表現にあんまり意味があったとも思えないんだが・・・
表題の意味も不明。でもまぁ、面白かったのでよし。
(2011/6/7)
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日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作ということと、単純に警察小説が好きだからという理由で手に取ってみました。
これは映像化しても面白い作品になると思います。
今までに感じたことがない雰囲気や強烈な緊迫感に凄く引き込まれたし、
主人公のクロハの心体的な傷みがリアルに伝わってくるような場面もあって、自分とこの作品が一体化しているような感覚に陥ったりもしました。
読みやすい文章だったし、行の空け方や書き方の工夫にも才能を感じました。
単純に面白い。新しい警察小説のように感じました。
今後の著者の活躍が非常に楽しみです。
他の作品も是非読んでみたい。
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帯の警察小説に偽り感が。SF感を出した割には中途半端で読みづらい。セカンドライフみたいな世界も半端すぎ。うーん誉めるところがない。結局色々やって失敗した作品にしか思えない。
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硬質な文章で綴られた警察小説。なるほどギブスンから影響を受けたというのがよくわかる。終盤加速度的にぶっ飛んでいった印象。作者の別の本も読んでみたいと思った。カガさんもうちょっと終盤に使いようがなかったんかいな?
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75冊目。
久々のミステリー小説でした。
日本ミステリー文学大賞新人賞とった作品だとか。
あんまりミステリーの世界は詳しく無いのだけど、
警察ものになるのかな?
女性刑事クロハが14体の凍死体を見つけるとこから
物語は始まります。
読んでてすごい臨場感。
文章読んでるのに、日曜サスペンス見てるような感じ。
後半は呼吸するの忘れそうになるくらい。
暗さ、冷たさ、無機質さが作品中に随所に描かれているのが
印象的だった。
名前がみんなカタカナで覚えずらいのと、
登場人物の深みが足りないような気がするんですが
ミステリーだとこんなもんなんですかねー。
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独特の世界観、感性、物語の運びを感じた。ドラマ化とかされそう。キャストとか妄想しても楽しいかもしれない。読んで「なんだこれーーもう!」と損した気分にはならないと思う(笑)
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全編で緊張した展開が続いて、続きが気になってどんどん読み進めてしまう。ラストの展開からがほんとに一気読み。おもしろかった。
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今風の作品なんだと思う。
ネットの世界に明るくない私には難しく感じる部分もあったが、後半は純粋に面白く読むことができた。
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雨の降りしきる港湾地区。埋立地に置かれた冷凍コンテナから、十四人の男女の凍死体が発見された! 睡眠薬を飲んだ上での集団自殺と判明するが、それは始まりに過ぎなかった--。機捜所属の女性刑事クロハは、想像を絶する悪意が巣喰う、事件の深部へと迫っていく。斬新な着想と圧倒的な構成力! 全選考委員の絶賛を浴びた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
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すばらしかった!
警察小説はあまり読んだことがないけれど、いままで読んだ中では僕の好みにいちばんぴったりきた。
繊細で叙情的な文章が不穏さと神聖さ、女刑事クロハの強さを強調させている。
登場人物の名前が「クロハ」「カガ」「タカハシ」という風にカタカナなのも、覚えやすいという効果に加えて、どこかしら先進的で近未来的な設定に合っている。
文章の上手さも効いて、物語全体に漂うのはじめっとした暗さであり、展開も重たくてライトな警察小説好きには向かないかもしれないが、これはたしかに傑作であると、僕は思う。
シリーズものなのだが、今作で主人公の身にあまりにも残酷な仕打ちがあったので、2作目からはなおのこと、じめっとして重たい雰囲気になってしまうかもしれない。
でもこのシリーズは、ずっと大切に読んでいこうと思う。
事件と捜査と解決、という単純な線で終わる小説ではない。
僕の読みたかった警察小説だな、と思った。