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太田光の巻末解説を読めるのはこの2009年新装版のほう
2010/10/16 12:09
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
大富豪マラカイ・コンスタントは、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードの恣意によって、地球から火星、水星からタイタンへと、漂流の一生を送らされる。しかも記憶を拭いとられ、アンクという別の名の男として…。
TBS系列のドキュメンタリー番組『情熱大陸』が爆笑問題を取りあげた時のこと。太田光がこの『タイタンの妖女』を指さして絶賛していました。私は太田の著作が好きでこれまでいくつか手にしてきましたが、その彼が賞揚するSF小説とは一体いかなるものなのか、大いに興味をそそられたのです。
しかし、この小説は実にとっつきにくい小説です。50頁目まで読んでも、物語があまりにとっちらかっていて、どこへ読者をいざなうのかさっぱり見えてきません。
おもわず読書を中断して、太田光の解説へと巻末まで頁を繰り飛ばしてみました。
ですが太田の解説も物語の最後にたどりつく前に読んでみたところで理解が進みません。
ここで読書を投げ出すべきかいなか悩みました。結局、太田の「理解しにくいと感じるかもしれない。こう言うと変かもしれないが、そのことをあまり気にしないでほしい」という言葉を信じ、最後まで読み通す決心をしたのです。
読み終わったところで、物語がさまざまな断片的エピソードの寄せ集めだという印象がぬぐえたわけではありません。しかし、太田の解説を再読すると不思議なことに、どこか胃の腑に落ちる思いがするのです。
太田が解説で何を書いているのか、ここでは詳述しませんが、ヴォネガットがこの小説に込めた思いを実に的確に言い当てていると強く感じます。ひょっとしたら『タイタンの妖女』はこの太田光という異才が介在することで、日本の多くの読者が楽しむことのできる作品となっているのではないか。そんな気がしてくる、見事な解説なのです。
この太田の解説を味わうために450頁の奇妙なほら話を読む価値があるように感じられるのです。
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▼…この本を、爆笑問題太田の帯につられて読んだ人は、一体どういうふうな感想を持ったか知りたい。▼私は…そうだなあ、好き嫌いはともかく、いい話だと思った。
▼人の運命や命はびっくりするほど軽いけど、その軽さは、絶望にも希望にも繋がっているんだってふうに読みました。運命って、不思議で凄くおかしみのあるものだよね。
▼発売日に買ったけど、すごくゆっくり、いろんなことを考えながら、三週間くらいかけて読んだ。そういう読み方が一番適した本だと思う。(09/3/18読了)
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これってSF?ファンタジー?
不思議なお話でした。当時の社会に対しての皮肉なり批判なりが入っているんだと思います。
たしかに神様がいるとしたら、それはあらゆるものに無関心な存在なのだと思います。
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「時間等曲率漏斗」(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)に飛び込むことにより、
波動現象となって、過去・現在・未来を行き来する存在となったラムフォード。
特殊な存在であるラムフォードは、火星に地球人を送りこみ、そして地球に対して自滅的な戦争を仕掛けさせ、
「徹底的に無関心な神の教会」の下に、地球を結束させる。
しかし、人類の歴史は、遭難した一人のトラルファマドール星人に壊れた宇宙船のパーツを届けるためだけに操作されており、
ラムフォードの力によって、何がなされるわけでもなかった。
久々に、古典的SFを読んだ。
1959年作、ということだが今読んでも新しさを失わないというのは凄いことだ。
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最後の最後まで夢中で読みました。
この本の中での人間の存在理由のオチにとてもびっくり。
こんな理由で私生かされたのか?と思うと、人間なんて本当にちっぽけな存在だと感じた。
でも、そんなちっぽけな私でも生きていていいんだと著者は言ってくれている気がした。
かれの作品、もっと読も。
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前半は話が飛んで飛んで、しかも意味わからん予言や軍隊の話だけど、
その断片的なエピソードがだんだんつながって一つの大きな話になってくのがたまらない。
もう一回読み直す。
忙しかったので、あいた時間にちょっとづつ読んでいたのですが、
これは一気に読んだ方が絶対面白い。
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爆笑問題・太田 光さんの所属事務所<タイタン>は
本作に由来しているそうです(って有名な話ですね。。)
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実に皮肉というか、まさしく物語中の用語で言うなら「トラルファマドール的な」物語である。
解説にも書かれている通り、すべてのことは同時に起こっている。
この物語を読み終えた読者には、ぜひスローターハウス5も読んでいただきたい。
ラムファードとビリーの、時間の中に解き放たれてからの生き方の違いを比較するのも一興だろう。
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SFを読むときは展開への期待と恐怖感があって、そして読んだあとにはいつもちょっとだけ切なくなります。論理の組み立て方が独特で楽しかった!あとがきにある通り、おじいさんに面白くてちょっと怖い話を語ってもらうような気持ちになりました。
この本を読んだせいで火星人にさらわれる夢をみた。
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小説と一緒に、地球から火星・水星・タイタン、そして地球に帰ってきた。
最後の最後の「天がおまえを…」のくだりで、もう全て良しって感じでした!
爆笑の太田のあとがきに、読み終わった時にその小説が思い出の一部になるって 、そんな本です。
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アメリカSFの古典中の古典。
何だか軽妙で滑稽で、テンポよく展開される、大風呂敷のようで大風呂敷ではない小咄。
時間等曲率漏斗なるものに突入して、様々な時空間に偏在することになったラムファード氏は、人類救済のための大掛かりな野望に取り組む。
その道具となった、とある大富豪の遍歴の物語でもある。
さて、人類を救済するには結局何が必要なのか。ラムファード氏の野望は上手くいくのか?
行われていることは壮大なのに、どこか珍妙で胡散臭い。それが読み手をウキウキさせるような珍妙さである。
それでいて、話の収束させ方が実に素朴。
一周回って・・・と言う感じである。
ウキウキしてしんみりする。非常に素晴らしい時間つぶしになる。確かに傑作だと思う。
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太田光の解説が親切で愛にあふれておる。私の知ってる太田光じゃない…
私たちの暮らす東京の街やなんかが、無作為に建てられているようでいて実は異星人からはるか土星へのメッセージなんて、そんなことを考えるとなんだか面白いようなわくわくするような。でもラムファードみたいな人にとってはむかつくんだろうなあ
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何も考えずに純粋にSFとして読んでも面白いが、物語の裏に隠された”人間社会への風刺”、“哲学的考察”などを感じながら物語を読み解くと、より一層楽しめることは間違いないだろう。
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ハヤカワのヴォネガットは全部読んだはずだけど、太田光の解説の版は読んでない。話も忘れてるし解説が読みたいので再読希望、と。
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人間は無力で物悲しく、笑いの要素は「愉快」ではなく「滑稽」。そういうものの中にある自分の小さな人生のこと思うと、普段の生活で悩むこととか、誰かを嫌いだと思うこととか、ばかばかしいのでやめようと思う。
マラカイの滅茶苦茶でくそったれな一生の中にも、ハーモニーやサロやタイタンつぐみやストーニィ・スティブンスンとの友情などの素晴らしく美しい要素がちりばめられている。
『人生の目的は、どこのだれがそれを操っているにしろ、手近にいて愛されるのを待っているだれかを愛することだ』