投稿元:
レビューを見る
青空文庫で読了。
100ページにもみたないので、2時間かからないくらいでした。
空襲で生きるか死ぬか、その中での一瞬が描かれた作品。
主人公の男は社会で抑圧され、世情も戦時中というなかで鬱屈したものを抱えて生きている。
周りもまっとうな人間もいれば、風俗で生計してたり不倫していたり、口喧しい人やら、その中に白痴(敢えてこう表現します)がいる日常。
主人公もたまたま白痴の女から好かれ、空襲の被害にあったが命は助かった。女も疲れて隣で寝ている。
今を生きることで精一杯。
何ら今の時代と変わらない一瞬じゃないかと思う。
投稿元:
レビューを見る
「いずこへ」「白痴」「母の上京」まで。
今の精神状態で読むものではなかった。またの機会に。
※読んだのは昭和23年発行のもの。
投稿元:
レビューを見る
意外と面白みがあるけど、いまいちよく分からないという部分があり。
戦争や女性が絡む話は、かなり面白かった。
ただ読んでて続きが気になるって類の話ではないので、やや退屈。
投稿元:
レビューを見る
堕落と退廃の匂いのする情景。表題作の「白痴」は、生きることの限界を克明に描いた作品。いよいよ空襲が近づいて、逃げないと死ぬそんな時、練り歯磨きだの石鹸だのに気をとられている。そういうあべこべな描写が迫真に迫っている。
焼けた町を逃げ延びた男は、逃げ切ってなにもかも失う。何もかも。文字通り、寝床や歯磨き粉ばかりでなく感情までも根こそぎに。
紙屑を捨てるのさえ捨てる気力がいる、が、それすらない。と思うほどに。
戦争に巻き込まれ何もかも失ってしまう、だから戦争は酷いものだと読めばいいのか、いや、違う。
戦争ではなく、人間なのだ。描かれているのは。
絶望し、夜が明けないうちに物語は終わる。しかし男は「歩き出そう」と考えている。その一歩を、そのはるかな夜明けを読者に想像させる安吾の表現力が素晴らしい。
投稿元:
レビューを見る
読んだ。
共感できる内容だった。
ただ、語り口がやはり、戦時中。
没頭して読むという感覚はなかった
投稿元:
レビューを見る
「白痴」(坂口安吾)読了。短編集。「いずこへ」「白痴」「母の上京」「外套と青空」「私は海をだきしめていたい」「戦争と一人の女」「青鬼の褌を洗う女」の7編。これらの持つ雰囲気(堕ちていく感じとか露悪的なところとかです)が私の苦手な太宰と似てはいるけれど同じではない。
坂口安吾は初めて読んだのですが、しかし例えば「いずこへ」の『私はそのころ耳を澄ますようにして生きていた。』とはまたなんとも素敵な書き出しではないか!この一文を読むだけでわたしは坂口安吾という作家が好きになってしまう。
坂口安吾の日本文学史における立ち位置については知らないけれどこれらの短編を読む限りにおいて広く一般に受け入れられるものとは思えない。(たぶん一部の熱狂的な読者は存在し得るだろうけれど。)かつてもしそうであったのならそれはやはり「時代」の所為なんだろうな。
極限下(戦争中)における倒錯した幸福感や欲望等々について戦後生まれのわたしとしては理解しがたいところもあるのですが、あるいはよりむき出しの人間的普遍的本能的なものが露わになるのかもしれないとも思う。しかし読み終わるのにずいぶん時間がかかってしまったな。
投稿元:
レビューを見る
白痴に出てくるヒロインはどれも淫売ではあるが清潔である。
男にとっての女の理想的な部分を集めた様でもある。
そうして、可愛いのである。
ただ、それも外から見ているから思うことであろう。
いずこへの文章のリズムにやられ、
母の上京のオチで笑い、
外套と青空のキミ子に恋をする。
投稿元:
レビューを見る
戦時中における空襲の描写が、何故か一番頭に残っています。生きていること、の意味を考えさせられました。
安吾の独特の文体には、人を引きつける力があるように思えます。
投稿元:
レビューを見る
青空文庫にて「白痴」読了。白痴の女性に対して、いつ死んでもいいが、自らの手では殺める度胸がないから空襲で亡くなることを期待していた主人公が実際にとった行動が非常に人間らしい。
タイトルや内容を含め、なかなか強烈な言い回しがある小説だが、当時の時勢や作者の自身が精神衰弱疾患者だったからこそ為せる作品か。
また、ここまで生死と向き合うことのない現代では、差し迫った環境の中で転がり込んできた女性に対しここまで命を張れる機会は無いと思う。いつ終わるかもしれぬ戦争とその時代を希望無く生きる主人公だからこそ、白痴に一握の期待を見出したのだろう。
投稿元:
レビューを見る
人間は「肉体」と「精神」の二つからできていて、精神の存在しない肉体(肉塊)だけの女は豚と変わらないし、豚にも劣る。しかしその豚にも劣る女は、いわゆる「普通の女」とどこが違うのだろう?と問いかける。戦争という、希望と絶望が交差する生活の中で、肉塊である女に対する感情も揺れ動く。
投稿元:
レビューを見る
「白痴」と「いずこへ」読了。
この人は生きていたかった人なんじゃないかなあ。
私はそのころ耳を澄ますように生きていた。
投稿元:
レビューを見る
表題作「白痴」を含む7篇が収められてゐます。
それにしても、何とまあ無気力な主人公たちでせうか。ここまでやる気が感じられないと笑つてしまふほどであります。
「いずこへ」の三文文士、「白痴」の伊沢、「母の上京」の夏川、「外套と青空」の太平など、一見志が低い、どうしやうもない奴等ではあります。
一種の理想主義者なのかも知れません。故意に情けない姿を見せてゐるのも、堕落してもいいぢやんとばかりに挑発してゐるやうに見えます。
常に戦争の影がちらつき、明日の生命も分からぬ当時の世相も関係があるのでせう。それでも適当に諧謔を交へて、それなりに逞しく生き抜く男女の姿は善悪を超えた存在として迫るのでした。
「戦争と一人の女」「青鬼の褌を洗う女」は女性の一人称で語られる作品。戦争を歓迎する発言などを、女性の立場からさせてゐます。これは計算づくか。
ちなみに「戦争と一人の女」は、元々男性の視点から書かれてゐたさうで、本書に収められてゐるのは、その後書き直されたもののやうです。元のやつも読んでみたいのですが、高価な全集版でないと載つてゐないのでせうね。
今風の小説に慣れた読者には、少し読み辛いかもしれませんが、今でも版を重ねてゐるのも事実。人によつて意見が分かれさうな作品群と申せませう。
http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-206.html
投稿元:
レビューを見る
果てしない自己循環
分別しきった精神世界の中で突き当たる自己矛盾
しかしそういったものを全てひっくるめて抱擁し、愛している
そういった人たちを描いている
肉慾の持つ崇高さと単純さ、同時に処世術を無智と蔑む魂の純粋さが『潔癖』と呼べるほどくっきりと繰り返し語られているように思う。
題も好い。
『私は海をだきしめていたい』『外套と青空』なんて素敵だろう。
戦争を描いた小説の中で、こんな視点を持つものがあるだろうか。
全ては美である、純粋である。
坂口安吾、素敵すぎる。
投稿元:
レビューを見る
全編を通してショッキングな内容に驚いた。
世間体や常識から考えると非難されるであろう不埒な浮気癖のある登場人物たち。恋愛に精神的な繋がりではなく、肉体的な欲求をもとめる。
純愛ラブストーリーとはかけ離れたものだけど、どこか納得してしまうところもある。人生、特に恋愛面で人間の「理知」がウザったくなるときってときたまあるよね。もっと単純に求め合うことが外見上野蛮に映るかもしれないけど、純潔だったりするものなのかな。
より理解を深めるために「堕落論」も読んでみたくなった。
投稿元:
レビューを見る
有名すぎるほどの表題作「白痴」を含む短編集。
私は「白痴」よりも「青鬼の褌を洗う女」が強烈に好きである。
私の好みはさておき、本書収録の短編はどれも
坂口安吾の優しさ、冷徹さ、知性が感じられて美しい。
表題作が強烈なイメージゆえに、本書を手に取らない人が
いるとしたら非常にもったいない。