投稿元:
レビューを見る
3月30日~4月4日
小樽での子守奉公で初めて都会の暮らしに触れたとわは知床に戻り、森のなかでアイヌの青年と偶然再会する。しかし彼への恋心は胸に秘めたまま嫁ぎ、母となる。やがて戦争の足音が…。まだ遠くない時代に、厳しくも美しい自然とともに生きてきた人の営みを鮮烈に描き出した感動巨編。中央公論文芸賞受賞作。
投稿元:
レビューを見る
大正から昭和にかけて、北海道 知床の開拓移民の子として生きた、一人の女性の人生が描かれている。
そんなに昔の話ではない。実際、私の祖父母と、この物語の主人公とわは、ほぼ同世代だ。そんな時代に、こんな過酷な環境で生きた人達が現実に多勢いたのだということに、驚きを感じた。今の自分の便利な生活につながる時間の糸のつい先にこういう生活があったのだと思うと、感慨深い。
主人公とわは、貧しい苦しい生活のなか、更に、開拓の失敗や父の死などの不幸に次々見舞われる。思い通りにならない人生。とわは、「何で生きるんだろう」「何のための人生なんだろう」と繰り返し自問しながら、それでも歯を食いしばって逆境に耐え、生き抜いていく。とわと同様、とわの母や周りの女性達もたくましく生きていて、勇気付られる。
投稿元:
レビューを見る
貧しい時代に、家族の為に必死にたくましく生きる女性の姿。現実にそうやって生き抜いた人たちがいるんですよね。
投稿元:
レビューを見る
北海道の開拓民の、苦労、苦労、苦労続きの人生。
読みながら、明るい方へ向かうのかと期待しては突き落とされ、
今度こそと祈っては諦めさせられ・・・
そう、こんなにも思うようにならないことばかりでも、人は生きていかなければならない。
何にも希望が持てなくても、人は生き続けなければならないのだという、作者の思いを
最果ての地で生きる「とわ」や関わる人々を描くことで伝えようとしているのだろう。
ただこの作品、受け止めながら読んでいくことが、胸に厳しくしんどい。
「面白かった」とは言えない重さが残る。
投稿元:
レビューを見る
必死に生きる。とにかく生きる。生きていくために丁稚奉公に行かされ、親の決めた顔も知らない相手と結婚する。そんな生活がたった100年前のこの日本にも確かにあったなんて信じられないくらい時代は変化してきた。自分の欲を出せるような状況が何一つなく、常に大自然の厳しい寒さと戦い続けなければならかった時代に生きたとわ。それでも私は、とわは幸せだったと思う。
投稿元:
レビューを見る
過去の日本にはこんな時代が本当にあったんだろうなぁとは思いますが……、後半はただひたすら生きていくことに一生懸命なだけで、諦めにも似た境地で、読んでいてしんどかった。
逆境でも前向きな心根で立ち向かって欲しかったかも。
方言を読ませるのは味わいあっていいのかもしれないけど、ちょっと読みづらかったです。
投稿元:
レビューを見る
自由をかなり制約され、生きるために生活するとわがとてももどかしく、せつない気分になった。
それと、この物語に出てくる男はなんでこんなにダメなの・・・。
全編をとおしてセリフが方言。おそらく、かなり忠実に方言を再現したのだろうと思う。
だけど、五十音で方言を表現するのって無理がある。方言は好きなんだけど、かなりセリフが読みにくく、文字から単語、単語から文章に変換してからセリフを読まなくてはならなかった。テンポよく読み進めることができなくて、それが残念。
投稿元:
レビューを見る
26.02.2014
上巻の一家の移動が想像しようとしてもしきれないほど気の遠くなるもので、読み終わった今も思い出す。荷車、汽車、船、そんなに昔じゃないのに途方もない移動をしていたのかと思うと胸が苦しくなるほど。
とわの生き方は強くて逞しくて、いつか幸せにと願ってしまう。きっとこんな女性がいたのだろう。
重いけど、読み応えのあるいい小説。
投稿元:
レビューを見る
オホーツク海、原生林に覆われた極寒の地・知床。
アイヌ語で「地のはて」と呼ばれたこの地に追われるようにやってきた開拓民の家族。そして少女とわの物語。
「とにかく生きる。生き抜くんだ」
生が凝縮された一冊。
投稿元:
レビューを見る
大正の初期に知床の地に入植した一家の娘「とわ」を主人公にした一代記。「おしん」のオンエアは見ていないが、さながら知床版「おしん」と言った感じの苦難の歴史。
これが私の父と10歳程度しか違わない世代の物語とは到底思えない。
「生きること」を真摯に問う長編小説。
投稿元:
レビューを見る
下巻も引き続き、
不運が続く。
ただ主人公が大人になってきたので、
子供のときのような周りに振り回されるだけではないから、ちょっと穏やかに感じる。
個人的にはアイヌの男性との恋物語が
気になったが、結末はなくても良かったような。想い出はそのままキレイであってほしい、私の願望か(苦笑)。
いい後味が残る大作でした。
投稿元:
レビューを見る
奉公から戻ったとわは、初恋の相手と再会するも嫁に行くことになる。
自分の気持ちも殺し、親の言うままに生きていかなくてはならない辛さや寂しさが伝わってきて切なくなる。
やがて母となり、更に強く強くなるとわ。
地のはてまでやってきた幼子の頃から母になるまでの壮絶な人生は、涙なしでは読み進むことが難しかった。
2015.2.2
投稿元:
レビューを見る
小樽への子守奉公、奉公先の破綻で知床に戻り、切ないアイヌの成年との恋、そして結婚。主人公のとわは、懸命に家計を支え、子供たちも育てていく。そのさなかにも、悲しい出来事は次から次へのとわを襲う。生きること、生き抜くことの辛さ、政府主導の北海道開拓の現実、そして戦争。
主人公とわと乃南アサ作品『ニサッタ、ニサッタ』が連続性があることを、巻末の「解説」を読んで知った。
投稿元:
レビューを見る
とわは12歳で小樽で洋品、雑貨、小物を卸す大きな商家の子守として奉公に出されるが、商売が傾き、16の時、実家に帰される。とわは三吉への思いを秘め、親の勧めるままに結婚するが、戦争に向かう不穏な時代が始まる。
アイヌの青年三吉との淡い恋と、その後の再会には胸がつぶれそうになる。これが現実。でも、三吉と結ばれていたとしても、幸せであったとは限らない。
戦争が、いかに人々の人生を翻弄してきたか、それに加えて北海道の自然の厳しさ。ときに自然は人々に恵みを与えてくれた。それを使って生きる術を教えてくれたのは、アイヌの人々だった。「地の果て」での暮らしは、人々が支え合わなければ生きて行けない、極限の環境であった。
とわはどのような試練にあっても、「生きなければならない」という計り知れぬ強さを持ち続けていた。子どものために、家族のためにと、こんなにも強くなれたのは、母つね、兄直人のおもいがあったからだろう。
「ニサッタ、ニサッタ」は、とわの孫にあたる青年の物語であるらしい。現代に至っても、男たちは女の強さに敵わないようだ。現在、北海道は豊かにみえる。私には、その影に人生に敗れていった多くの開拓移民の姿が見え隠れする。
投稿元:
レビューを見る
最後まで暗い内容だった。終章で幾分明るくなったが。
大正から昭和、第二次世界大戦まで、北海道東部への入植者の苦労が描かれている。
暗いけど、面白く一気に読んだ。以前、吉村昭の赤い人という北海道樺戸刑務所の囚人が北海道開拓に一役をなしたという小説があるが、時代は赤い人より後になるが寒さ厳しき北海道東部の開拓本当に大変だったと思う。人間のすごさを感じるととともにそのような環境の中で、少しのことで幸せを感じるということに感動した。