投稿元:
レビューを見る
朝日新聞を初めとした各マスコミの姿勢には納得しがたいものがある。ただこの本はどうすべきだったかを離れて、現場で何が起こっていたかを現場のさまざまな人達からの視点で描かれていて、今回の震災の実態をある面から浮き彫りにしてくれていて大変参考になります。
マスコミとしてどうすべきだったのかという自己反省の部分について巧みに避けているというのは気になるが、だからこそ書けている部分もあるのかなあとも感じるものです。
投稿元:
レビューを見る
東京電力福島第一原発事故から2年経ち、本シリーズもとうとう4作目。
放射能汚染により故郷を奪われた被災者の悲劇と、事故直後のスリリングなエピソードの、両軸によって繰り広げられる。
今回の白眉は「日本への不信」。事故直後の東電任せの日本政府の対応に業を煮やしたアメリカ政府が「英雄的犠牲」を示唆するくだりに、あの頃のなんともいえない苛立ちが蘇る。そしてその状況が今も変わっていないことを思い、深く落胆。
投稿元:
レビューを見る
理不尽、不条理・・・
淡々とした語り口から、こんな言葉が心に浮かぶ。
正義とは何か。
厳しい判断をせまられているのは、私であり、あなたという「個人」だ。
投稿元:
レビューを見る
本書は朝日新聞紙上にて大反響を巻き起こした福島原発事故を追った連籍を書籍化した第4弾です。 被災地に残った人間達の葛藤や、米軍横須賀基地、更にはワシントンの混乱振りや日本への不振が記されております。
『3.11』の東日本大震災と時をほぼ同じくして発生した福島第一発電所の深刻な原発事故。その経過と地元である福島県の『その後』を追い続けた朝日新聞の連載企画第4弾です。
ここでは非難が困難であった障害を持った人に対する取材や、災害時の弱者を救うための個人情報の取り扱いに関する緊迫感あるやり取りが最初に収録されていて、この事件が残した教訓の重さを思い知らされました。
更には柏崎からさいたまに被災した人々やその行政側の混乱。複雑な思いに引き裂かれる被災者の心情は本当に痛切でございました。その一方でアメリカ側の日本に対する事故の対応への不信が本当にシビアで、
『事故が悪化すれば、東アジアの重要拠点である横須賀基地が使えなくなるかもしれない』
という考えの元に判断を下し、さすがはアメリカの核に関する危機管理がハンパじゃないなと思うとともに、彼らの思考が良くわかってとても面白かったです。
そして、事故を『収束』するために動いた自衛隊の専門部隊などの話もあり、『彼ら』の生々しい人間的な姿と、任務に対するその姿勢はとても印象に残っております。
投稿元:
レビューを見る
市図書館。
障がい者の避難について。行政がやらなければならないサービスの一環としての情報公開。ギリギリの状態で命を守ろうとして行動した彼らを誰が罰することができようか。火の粉がかからない場所では好きな事何でも言えるよな。
部下から“あなたのやっていることは条例違反だ。意義はあるとは思うが即刻中止すべきだ”と言われたそうだが、それを言っている本人でさえ意義があるとわかっているのに、なぜ情報公開を中止する?
あぁ、宮仕えのジレンマ。
投稿元:
レビューを見る
遠野の牧草にまで降り積もる放射能。双葉町の全村避難。自衛隊の奮闘、取り残される障害者。原発事故の様々な断面が辛い。
投稿元:
レビューを見る
第21シリーズ「遠野ショック」、第22シリーズ「また年を越す」
原発事故、広範な放射能汚染、その実像が被害を被ったひとりひとりの人生を見つめることで浮かび上がる。放射能汚染が覆った地域には、たくさんの人が人生をかけ情熱を注いで作り上げてきた家業や生活があった。畜産にしろ、食品加工にしろ、その土地の自然と結びついた生産活動だけにそのダメージは大きい。一つの事故がもたらす影響が余りにも甚大、そのリスクを抱えながらも私たちはまだ原発を持ち続けるのか。
第23シリーズ「日本への不信」
米国の危機感に答え、日本政府がこの事故の収束に向けて積極的に対処する姿勢をみせるために、あの自衛隊ヘリからの放水が行われたとしたら、被曝をさせられた自衛隊員はたまらない。本当にあの時点での原子炉の冷却に効果はあったのか。
1979年スリーマイル事故について、「そのとき、対応は事業者任せで最初の1週間ほど混乱した。米国はそれを教訓に危機管理を組み立て直した。日本も同じように改善するだろう」という元米国務省日本部長ラスト・デミングの言葉。汚染水流出問題に見ても、スリーマイルよりも深刻な事態にも関わらず、”事業者任せ”で汚染の拡散を止められずにいる。反省は活かされていない。
投稿元:
レビューを見る
福島原発事故のルポルタージュ第4弾。この巻でも事故後の様々な側面が描き出される。弱者ほど避難から取り残されること、また功罪の判断は難しいが町ごと埼玉県に避難した双葉町のことなど。もっとも生々しいのは自衛隊の中央即応連隊による一連の活動だろう。私たちはそもそもそういう部隊の存在すら知らなかったのだが。高濃度の放射線の中を偵察に向かった、中央特殊武器防護隊の6人が3号機の爆発に巻き込まれて負傷、被曝。またヘリ団による3号機への空中放水など、いずれもまさに「決死の覚悟」のもとに行われた。
投稿元:
レビューを見る
シリーズ第4弾。今回は障害者の避難、アメリカ・自衛隊の対応等がテーマ。自衛隊の苦労、頑張りがよくわかる。それにしてもやっぱり”情報”が大事。
投稿元:
レビューを見る
朝日新聞朝刊連載記事の、書籍化第4弾。
「はい、この地域は危険なので避難地域とします」と事前の連絡もなく
日本政府が決めた自治体だったが、避難出来ずに残った人たちが
いた。
それは心身に障害を抱えた人たちだった。どこだったか失念したが、
お子さんが障害を抱えており、一旦、避難所へ行ったものの周囲の人
へ迷惑をかけるからと危険と知りつつも自宅へもだった人がいた。
本書は避難出来なかった障害を持つ方や高齢者への支援及び
安否確認と、個人情報保護の問題を扱っている。人名か、個人
情報保護か。勿論、大事なのは人名であるのに間違いはないのだが、
それでも悪くすると条例の壁がある。
先般、激しい地吹雪のなかで子供を守って命を落とした父親がいた。
彼の携帯電話の位置情報が、もっと早く消防へ公開されていたら
どうだったのだろう。
原発から北へ200km。遠野市の畜産農家が直面した牧草地での
セシウム検出。自衛隊の空中放水と極秘に進められていた東電
社員救出作戦。そして、原発事故への日本政府の対応に不信感
を募らせるアメリカの動き。
本書のなかでも特筆なのは、原発立地自治体である福島県双葉町
の体験だ。町長は高齢者施設で避難を手伝っている時に原発の
爆発に遭遇し、「死の灰」を浴びた。
町民の命を守らなくてはいけない。より安全な所へと福島県を飛び
出し、埼玉県への全町避難を決める。役場機能も埼玉県の避難先
へと移した。だが、福島県内には様々な事情で留まることを余儀なく
なれた町民もいた。
「町に捨てられた」。残った町民の心情、町民を守る為に最善を
考えた町長。小さな歯車の狂いは、後々に大きな問題へと発展
する。原発の事故さえなければ、町や人の心が分断されること
もなかったろうにと思うとやるせない。
「この仮設住宅で死んでは駄目だ。私の人生の収束はここでは
できないと強く思っている」
浪江町から仮設住宅へ移った女性は、随想にそう記した。そうだよ、
仮設住宅で収束してはいけない。だが、この言葉を書いた女性は
2012年6月、膵臓癌を患い永眠した。故郷に帰ることなく。
悔しいよな、こんなのって。しかも膵臓癌が見つかった時、東電に
相談したら「既往症じゃないんですか?」と言われたそうだ。
また、「おわりに」に掲載されている飯館の区長のお孫さんへの
思いが切ない。この部分だけでも立ち読みして欲しいっ!
投稿元:
レビューを見る
軍隊としての自衛隊には反感を持つが、災害時の人命救助や原発の危機対応などでのプロフェッショナルな活動には頭が下がる。救助隊としての存在意義をもっと強調して、人材を育てていってほしい。
原発事故直後のアメリカの情報分析、判断は日本よりはるかに的確。責任を東電に取らせようとしてる時点で手遅れな訳だが、日本政府の足並みの悪さは保身からくるものか。