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紙の本
極上のミステリーを漫画で堪能
2012/05/30 11:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
BLで有名?な中村明日美子の初のサイコサスペンス。中村先生がサスペンスってどうなんだろう?と期待はあまりせずに読み始めた第一巻だった。
期待はうれしいことに大いに裏切ってくれて、続きが読みたい、気になる、と気をもんでいたのだが
これほどすばらしい作品に仕上げてくるとは思いもしなかった。
上質のミステリドラマを見ているような臨場感があるのに、中村氏のこのビアズリ的なモノトーンの絵柄のせいもあるのだろう、どこか非現実的でエロティックで、美しい。
そしてなにより・・・
作中の事件の発端となるのは、長く新作を書けずにいるかつての人気作家、溝呂木の新作「ウツボラ」の盗作およびゴーストライター疑惑なのだが。作中作「ウツボラ」同様、本作品そのものもゴーストライターか原作者がいるのではないかと思わずにはいられない、それほどすばらしい完成度でこの2巻の幕を降ろしている。
(無論、「それほどに」というだけで、私は露ほどにも疑っていないが。)
物語は謎の美少女「藤乃朱」の飛び降り自殺に始まる。彼女の携帯から有名作家溝呂木が捜査上に浮かび、彼は現場で遺体となった朱と瓜二つの、双子を名乗る少女・桜に出会う。
謎は二極化しつつも平行して進む。
一つは作家の盗作疑惑、そしてその「ウツボラ」は果たして誰が書いたものなのか?
原作を書いた「藤乃朱」なのか、桜なのか、それとも桜が朱なのか。そもそも彼女らは本当に「彼女ら」なのか。その謎は2巻で明かされるのだが、結局のところそこは・・・
どちらともとれる、しかしながらそれを曖昧とは思わせない高等な煙の巻き方(笑)で終わらせている。
主観的かつエロティックに、狂気的な展開をする溝呂木と「桜」の視点。
その一方、身元を隠すようにして自殺をした「藤乃朱」の謎と彼女の生前の足跡を追う刑事たちの現実的な展開も進む。彼女はいったい誰で、なぜこのようにして死んだのか。朱の携帯電話の契約者である秋山富士子という行方不明の女性と朱と桜は誰が「彼女」で、誰が死に、誰が生き、誰が「ウツボラ」の作者なのか。
そして盗作に気づき始めた溝呂木の往年のファンであり担当編集者である辻の葛藤も描かれる。
様々な人間の葛藤と、コンプレックスと、欲望と失望とが複雑に絡み合い・・・それでも時は進み、作品は「完結」し、彼ら彼女らの物語は続いて行く。
映画でも小説でもない漫画で、しかも原作のコミックス化などではなく、これほどの極上のミステリを堪能できるとは思わなかった。
中村明日美子の新境地!お見事である。
電子書籍
耽美
2018/06/04 12:01
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桜 - この投稿者のレビュー一覧を見る
美しい少女と謎めいた結果、読み終わった直後に読み直したくなる。浴びるように読みたくなる美しい作品でした