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パナマ文書で世の中の関心が高まったとはいうもののG20でいくつかの対抗策が進められたことは成果だが、いっときのようだった。
しかし長い目で見ると経済のグローバル化の進行とともに規制も制限も国際協調として今後も進められていくのだろう。たとえすぐにピケティが唱える国際課税が出来なくとも。
そういう意味では本書が取り上げている多くの節税(脱税)エピソードも知識として知っておくべきだろう。ただ、できれば著者にはもう少し歴史を踏まえた大きな視点が欲しかった点には不満を感じた。
2017年5月読了。
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税金をどう合法的に回避するのか?
と考えるのは、個人であれ、企業であれ、必然である。
あまりにも、納めた税が、不具合な使われ方をしているからである。
企業のグローバル化のなかで、「税回避」は、
複雑で多様化し、小さな国や特殊な国などは、その優遇によって
税をかすめ取ろうとすることは、ありうることだ。
アメリカでは、州によって税金が違うというのも、面白いなぁ。
著者 志賀櫻氏は、税金の法制的な立場や税金のコントロールする立場に
身を置いたこともあり、何を問題にしているのかがよくわかっていい。
ここまで、書いていいのかという感じでもある。
所得税が、1億円がピークで、それより超えていくと減っていくという
富裕層の優遇制度があるのに、驚いた。累進課税と思っていたので。
タックスヘイブンの特徴
①まともな税制がない。
②固い秘密保持法制がある。
③金融規制やその他の法規制が欠如している。
それに対して、タックスヘイブンを利用するのは
①高額所得者や大企業による脱税・租税回避。
②マネーロンダリング、テロ資金への関与。
③巨額投機マネーによる政界経済の大規模な破壊。
本来納付すべき税金と実際に納付されている税金との差額をタックスギャップという。
アメリカでは、算出されているが、日本では算出されていない。
タックスヘイブンに逃れることについて、警鐘を鳴らし、
「税は文明の対価である」という言葉に、税の意味を集約させていく。
しかし、文明はそんなに成熟していないのである。
大きな企業ほど、税回避の方法論を徹底して研究し、実行している。
グローバル化すればするほど、その傾向が増長する。
この本は、よく 解明してあって、面白かった。
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タックスヘイブンにおいてどのような仕組みで租税回避ができるのか知りたくて本書を手
にした。
ただ技術的な手法の公開を期待していた場合、本書はその期待に答えることができない。そ
れを教示することは、新書の読書層には想定していないのだろうし、安易な情報公開を控え
ることで模倣するものを事前に阻止することになるのも理由なのだろう。
本書を読んで良かったことは、租税回避地の定義を知ることができたことだ。
私は、タックスヘイブンとは低率な税負担を課している地域であるとしか考えなかったが、
むしろそれよりも情報の秘匿性の方が租税回避地において重要であるという。
確かに考えてみれば当たり前の話で、汚いお金の出先がどこにあるか簡単に追跡できれば、
租税回避地にお金を流すことの動機は無くなるだろう。情報秘匿性の重要性を改めて知る
ことができて良かった。
後、タックスヘイブンは欧米、特に米英、並びにその支配権に点在していることが、そのこ
とが示唆していることは大きいと感じた。
本書は十年ほど前に書かれた本である。バイデン政権がタックスヘイブンに対して対策を打
つと以前聞いたので現在の状況とは異なるだろうが、タックスヘイブンの制度を採用しよ
うと思ったら、税吏の権力との関係上アメリカ、イギリスのような覇権国家側の方が実現し
やすいのかなと思った。実際にアメリカの税務当局は国家を跨ぎ強権を発している。
金融市場を牛耳り、繁栄を謳歌しているこのような国家が、タックスヘイブンの制度を利用
したテロ組織との間での無益な争いに終始している状況を当該政府はどのように考えてい
るのだろうか。現在のウクライナ戦争における、中露と欧米諸国の覇権争いを巡って生じて
いる第三国との関係性の変化に何か重なる印象を受けた。
余談であるが著者は官僚出身で例に漏れず、各地での武勇伝が随所に散りばめられている。
これも愛嬌の一つであり啓蒙書の本領発揮というところか。