紙の本
奥深いピアノの世界
2018/06/11 10:52
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投稿者:L - この投稿者のレビュー一覧を見る
熊谷達也さんの小説『調律師』を読んで興味を持ったので読みました。調律にとどまらず、スタインウェイ発展の歴史などがとても興味深かったです。
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スタンウェイのピアノが運ばれているのを見たことがある。
知る人には分かる、端正で洗練された、あの美しいロゴマークの描かれた大型のトラックがホールの通用口に横付けされ、巨大なコンサートグランドが2台、縦型に収まっているのを見て、すべてのホールがスタンウェイを所有しているわけではなく、こうして運ばれているということ知った。
それはさておき、スタンウェイ万歳の調律師さんの自己顕示欲満載の本。プロ意識を持った仕事は本来素晴らしいものであるはずなのに、残念ながら鼻につくような内容であるのは、まるで日経新聞裏の「私の履歴書」みたいな感じ。自分の仕事に誇りを持つのはよいけれども、そうじゃない側のひとびとを貶すような書き方はいただけない。
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調律師=崇高な精神で心清らかに、というこれまでの自分の勝手なイメージを覆し、現場(=コンサートやライブ会場)で時にはとっさの対応をして、ピアノやピアニストと熱く関わる人間臭い職人、と思わせてくれた作品。
外見は同じグランドピアノでも1台1台音色が違う。保存状態、特に湿度によって調律の具合は変わり、逆によく保存されていれば、振動には強く、遠くまで運んでもほとんど狂わない。高級なピアノであればあるほど、崇められるかのように、あまり触れずに弾かれない、というのはよくありそうと思ったが、実際は逆で、どんどん弾かないとダメになると。勝手のわかった自前のスタインウェイを準備して、全国のコンサート会場に運ぶというスタイルが、多くの演奏家の信頼を得て今に至るという。
後半は、業界にまつわる人々の話。調律師の見分け方、関わり方からわかるよいピアニストの見分け方など。特に地方で見られる調律師周りの権威主義的扱われ方や、バブル時代のホール乱立で、手入れの行き届かないホールやピアノが残ってしまっている現状などを憂える文章が続き、強い思い入れがあるのだなと感じた。
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本書を読むまで、調律師は各家庭のピアノのメンテナンスが仕事ってだけしか
浮かばなかった。(そもそも生活において、調律師を思い浮かべることがない)
しかし、ピアニストの要望に応えてコンサートでのピアノの調整(これは予想がついた)
に加え、コンサートでのピアノ配置まで決めるということまでやるのか!と。
またひとつ知らない世界を垣間見ることができた。
これだから読書はやめらないね!
(正直感想がこれくらいしかないw)
<少し気になったこと>
この著書の中で、地方の調律師に対してダメ出しをしてる箇所があった。
また、自分がされてき成果に割いたページ数が多いためか、
アマゾンレビューのを見てると、かなり評価が極端だ。
まあ、この人の人間性なんて知らないんで何ともいえないけれども、
地方の調律師に大して言ってる事はそこそこ的を得ていると思うけどなぁ。
【言ってる事】
地方の調律(地方のコンサートホールのピアノ)は地方の特定の楽器店の
独占となっている。そこに東京から来たこの著者が調律をすると地方の
調律師が難癖をつけてくる。(独占状態を崩されたくないためか?)
またはピアノがよくない状態で置かれているとか。
競争原理が働かず何の努力もしなくても収入があるってことは、
空気が滞り、腐敗の温床にしかならない。調律師云々に限らず、
こんなのはどこでも同じだよなーと。
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ピアノを習っていたため、調律師は小さい頃から身近な存在ではありましたが、彼らがどんな風にピアノを調律しているのか、その仕組みはさっぱり分からないままだったので、調律師による本に興味を持って読んでみました。
音の出る仕組みの解説が、写真付きで掲載されていました。
ピアノの鍵盤は、普通は88鍵ですが、弦は200数十本あり、その一つ一つを合わせていく作業となります。
3本のペダルの名前を知らないまま、これまで使っていました。
ダンパーペダル(右)響きを持続、音を持続、ソステヌートペダル(中)音を持続、ソフトペダル(左)音量を減らす、となっているとのことです。
スタインウェイはカーネギーホールで音がよく通る楽器として有名になったと知りました。
普通の楽器であるならば、演奏家が自分のものを自分で調律しますが、ピアノは運べないため、毎回調律が必要になります。
プロの演奏は、ホール・楽器・ピアニストの3点のバランスが揃ってこそ。
調律師の責任は重大です。
著者は、一度に6台の連弾用ピアノを調律したことがあるそうです。
全てのピアノの音色をぴったり合わせるのは、並大抵のことではありませんね。
調律師は、日本に3万人おり、コンサートチューナーとして名が知られる人は20人程度だとのこと。
狭き門です。
また、コンサート会場は、一番ピアノの音響が良くなる温度25度、湿度50%に保たれているとのこと。
繊細な世界だなと改めて感じます。
そんなプロの調律してある著者も、会場を間違えたり、調律道具を忘れたりと、いろいろな失敗談もあったと紹介されていました。
自分の能力頼みの調律師。奥の深い仕事だなと、改めて感じました。
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調律(特にコンサートホールやレコーディング)の世界をちょろっと垣間見れる本。もうちょっと技術的な内容について踏み込んでたら面白いのになぁ、というのも後半からはほとんどドヤァな話だったから。でもステージでのピアノを置く位置など、プロの演奏する音にすごい責任を背負う仕事で面白そう。著者は松涛でピアノサロンやってる。スタインウェイの持ち込みを始めた人。
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筆者はピアノ調律師。一般向けの調律のほか、コンサートやレコーディングの際にプロ演奏家のための調律を行っている。プロ向けに、自社で管理するスタインウェイのピアノの貸出も行っている。
プロの矜恃を強く感じさせる1冊である。
ピアノの貸出事業は以下のような経緯で始めたものだという。プロの音楽家はほとんどが自分の楽器を持ち歩くが、ピアノは重いためにホールに置かれているものを使うのが普通だ。保管状態が悪く、音程が狂っていたり弾きにくかったりするピアノも多く、短時間で調律師が手を入れ(時には「修理」し)、演奏家が状態を見極めつつ弾くことになるらしい。筆者はこれに疑問を持ち、自分で運搬装置を開発して、自社で完璧に管理したピアノをコンサート開催地まで運ぶ事業を行っている。
一流の演奏家は、音楽性豊かに弾くことを目的とするため、小さい音が美しく響くようにするなど、プロの要求にしたがって調律したピアノは、技量の落ちる人には必ずしも弾きやすいものとはならないのだそうだ。筆者は車に例えて、F1レースカーのようなものと言っている。テクニックがなければ魅力も引き出せないというわけだ。それを支える調律師にも相応の高い技術が必要とされるのだという。
その他、ピアノの構造や歴史、筆者の会社も所有・管理するスタインウェイのピアノの魅力、日本クラシック音楽界の今後の展望など、プロの裏方ならではの話が多く、興味深く読めた。
*作夏、スタインウェイのピアノに触れる機会があった。娘と1曲連弾させてもらった(のだめで有名になったモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」を易しく編曲したもの)のだが、すてきな音色で弾きやすいピアノだった。筆者の言葉を借りれば、さしずめ、オートマ仕様に調律してあったのだろうけれど(^^;)。素人ながら、幸せな気分になりました。今でも思い出すとちょとほっこりする。すてきなピアノだったなぁ。
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「ハンブルク・スタインウェイ>ニューヨーク・スタインウェイって、ホント?」
「複数のピアノを同時に調律するプロセスは?」
「ステージにピアノを据える位置はどうやって決めるの?」
「クラシックとジャズ、それぞれの演奏や録音はどう違うの?」
たとえばそんな、コンサートの休憩時間やCDのライナーノートを眺めながらふと頭をよぎるような問いを、とても分かりやすく解いてみせてくれる本。
カーネギーホールとニューヨーク・スタインウェイの技術発展が密接に関係していたという話、ピアノをホールに持ち込んでから仕上げるまでの話、クラシックとジャズの演奏技法や録音の違い(ジャズの話がスルーされないだけでも嬉しい!)……
さらに「コンサートの途中に調律をしなおすということ」「小さい音をコントロールすることこそ至難」……「そうだったのか!」とか、「やっぱり!」とか、読みながらパズルのピースがパチパチ噛み合っていくような心地良さ。ピアノ好き、調律という仕事に憧れを持つ者としては、ワクワクせずにいられない。
前半部分、そして客観的に書かれた経験談は本当に面白い。読み終わるのが勿体無くて、数日かけてチビチビ読み進めていったくらい。
ただ、後半の経験談では、自慢めいた話や、その一方で他者を貶すような話が目立ってくる。そこがちょっとガッカリなので★-1。
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調律師を必要とされる場がこれほど広いものだとは、驚くばかりであった。まったく不明を恥ずるばかりであるが、それにしてもスタンウェイを何十台も、いつでも出前できるように調律してあるとは、まことに恐れ入りました。