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現時点(2013.4)では、アベノミクスは成功を収めつつあり、消費税増税の条件であるGDP年率2%を達成する勢いです。増税の判断は、2013.4-6月の四半期のデータで、参議院選挙後の2013.10になされるそうですから、GWを過ぎて選挙までは、久々に日本全体が良い雰囲気に包まれるような気がしています。
本屋さんの新刊本を見ても、アベノミクスを礼賛する本で満載です。その中で、行きつけの本屋さんで私が見るところでは、アベノミクスに明確に反対しているのは、この本だけのように思います。またその著者の増田氏は、この数年読み続けている方なので、目に飛び込んできました。
アベノミクスが成功したかどうかは、数年後には誰の眼にも明らかになりますが、現時点で判断するのはとても難しいです。タイムマシンの無い今の私には、両者の意見をよく聞いて自分なりに判断して行動するしかなさそうです。
長年低迷していた日本株価が昨年の総選挙後に急上昇したのは、私も実感しているところですが、バブルもかすかに記憶している私は、この状況がいつまでも続かないと確信しています。今後も、文字として残る本等の情報を頼りに日本の行く末を考えていきたいと思いました。
この本においても彼が強調しているのは、デフレ経済は庶民の味方、インフレは借金のできる富豪や大企業に有利である、というポイントです。インフレ経済が進むと、アメリカのように益々格差が進むとしています。世の中では、「デフレはダメ」という雰囲気ですが、果たしてどうなのでしょうか。
以下は気になったポイントです。
・インフレとは貸し手から借り手への所得や富の移転、貸し手から借り手へ「インフレでおカネの価値が目減りした分は、返却不要というメッセージ」である(p9)
・アメリカで平均以上の家計金融資産を持っているのは全人口のたった1.5%(p23)
・原油価格が上がったのではなく、米ドルの価値が下がっただけ、1000バーレルの原油を買うために必要な金の重さは、過去60年間にわたり、60-80トロイオンスである(p32)
・年率2%で上昇し続ければ、1世代という32年間でほぼ倍増する、2%成長を支持する人は、父母の世代より2倍の名目取得が稼げるという自信があるということ(p36)
・アメリカは学費の高さも貢献して、いまだに労働力人口の2-3割程度しか4年生大学卒業資格を持っていない、高卒者の大学進学率は7割だが、多くは2年生のコミュニティカレッジ(p39)
・貨幣の流通速度(世の中に出回っているお金を一定期間内にお金を一定期間に何回転させるか)は、個人や企業がいつ、どこで、どの程度お金を払うかで決まってくる、政府や中央銀行が管理できない、2009年の5.3回転から2012年の3.9回転へ減少(p56,110)
・日本のGDPに対する最終消費財のシェアはGDPの14-15%なので、輸出全体の15%程度なので、2.1%程度に過ぎない(p83)
・急激に進む円高の中で輸出増加を達成できた理由は、交易条件を低下させることができたから、だが輸入はまだ22%���か円決済になっていない(p93,139)
・円安は輸出振興というプラス効果よりも、輸入物質全ての値上がりで貿易赤字を拡大するというマイナス効果が大きいという事実を指摘する人は少ない(p121)
・アメリカでデフレが経済規模縮小につながった最大の理由は、ガリバー寡占企業のGMが自社だけの都合で自由に生産量を削減できたから(p164)
・2004-07の3年間でアメリカでは純資産中央値は、17.7%上昇して12.6万ドル、2010年には38.8%減少して、7.7万ドル(p194)
・アメリカ人のほぼ2人に1人は、政府の財政援助を受けている世帯に属している(p195)
・施行能力のない中小企業が名目だけの元請となって、実際の工事は大手建設業者に丸投げすることを「上請け」という(2012年で56.3%)、これは官公需法があるため(p220)
・新潟市が金沢市や富山市より人口が少なかったのは、江戸幕府が、大きな政治勢力が台頭しないように、意図的に天領と小藩領を入り乱れさせたから(p225)
・現在のアメリカの雇用者数は、4100万人分も低い、その乖離は1999年頃から始まっている(p247)
・アメリカの私立大学の学費が上がったのは仕方ないが、2002-10年の間に、公立大学の学費が、0.9→1.5万ドルになったのは金持ちしか大学へ行けなくなったのを意味する(p269)
・インドで問題が深刻化したのは、1750年代にイギリスがフランスとの植民地獲得戦争に勝った結果として、イギリス東インド会社がムガール帝国からベンガル地方一帯の徴税権を獲得してから、住民は租税負担が4倍となり、住民の3分の1が餓死した(p303)
・生まれた子供がほぼ全員成人する国だったら、合計特殊出生率:4ということは、1世代毎に人工が倍増するはず(p311)
・インドでは発電された電力が消費者につくまでに、送電・配電線網の30%以上が消えてなくなる(p340)
・鉱石運搬用の超大型ダンプトラックを完全無人化に成功したのは、コマツが世界で初めて、この部品は国内工場(小山・大阪・栗津)から供給される(p377)
2013年4月28日作成
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アベノミクスを中心とする、経済に関する、お決まりとされていて殆ど議論されない7つの前提について、豊富な資料・統計・図表を駆使してユーモラスではあるが、危機感と怒りを持って反証していく経済解説書。
具体的には、
1. 「インフレ」は貸し手(一般国民の貯蓄)に不利で、借り手(国・一流企業・金融機関)に有利。
2. 「円安」は、支払額は増えて、買えるモノやサービスは減少し、貿易赤字拡大と日本経済の縮小均衡を招く。
3. 「マネタリスト」は、歴史的事実を入れ替えて理論を構築している。
4. 「ケインズ政策、ケインジアン」のエリート意識と、「有効需要」の中の利権配分システムの危険性。
5. 「労働市場自由化」という改革論者の誤謬をアメリカの分析から検証。
6. 「少子高齢化」は経済成長を促進する社会で、若い人口が多いとよしとされる国の悲惨な実態と展望。
7. 「独占や寡占」への産業構造への変換の利権構造と危うさ。
と言った具合に、現在、ほぼ定説とされている事項に反論・反証を加えている。
個々の判断は、読者にゆだねられるが、顛末は近い将来歴史が証明することになる。
果たして結果は・・・。
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この本は簡単に言ってしまえば、インフレは貧乏人から資産家への富の移転であり、増税と一緒。円安は今の日本の貿易収支から見れば、一部の輸出大企業だけが得をして、殆どの国民は損。人口ボーナスが期待される国には若者が大人になる前に死んでしまう国が多く、単純に若年層が多いから投資妙味があるわけではない。というもので、アベノミクスを明確に否定している。しかし、7月21日の参院選でも自民党の大勝利となり、インフレ・円安政策は支持を受けている。もうどうすることも出来ない。
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アベノミクスの欺瞞を暴く本。著者の言っている内容は理解できるが、では、普通の人たちがデフレで納得いくかというと、そうではないような気がする。著者の主張が一般の人たちに分らせるようにするには、どうしたらいいか?なかなか困難であると思われる。