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紙の本
読み易い
2022/05/25 11:21
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投稿者:ないものねだり - この投稿者のレビュー一覧を見る
生物の自意識はとても強い。プライドの高い人は多い。あまりに高く、周囲を観察し状況を認識し客観的に判断したものとプライドがつり合わない時、傷つく事を恐れて表面に別の自分を作る人を多く見てきた。皮を被るという言葉をある(想定している状況は違う気もするけど)。筆者は正直に丁寧に描写しようとしていると思う。好感が持てる作品。
紙の本
自分のなかにひそむなにかと出会う時
2001/12/12 00:00
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投稿者:しっぽ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この人の作品は、古典的なものから題材をとっているものが多い。一番多いのは古代中国(あまりにもアバウトな区切り方だが)の伝承や史実に基づいたもの。で「山月記」の舞台は唐代の中国です。
李徴という、頭はきれるんだけどちょっと偏屈な男が役人になったものの、まわりといまいちうまくいかなくて、役人をやめて詩で身を立てようとするんだけど、それもどうもうまく行かない。しかたなくもう一度役人になるのだが、ある日出張の途中、突然気が狂って宿を飛び出しそのまま行方不明になる。
その翌年、李徴の友人だった袁惨(字がでない!)という役人が、やはり出張で李徴がいなくなったあたりを通りかかって、一匹の人喰虎に行き当たります。ところがこの虎、人間の言葉をしゃべります。袁惨はその声に聞き覚えが。その虎こそ李徴の変わりはてた姿だったのです。う〜ん、ファンタジーだったんだなあ。
国語の授業でこの作品を取り上げたのですが、うちの先生が、この「山月記」の下敷きになった中国の伝承を持ってきました。もちろんそっちは漢文なのですが、当時は今よりも漢文は読めたので(ううっ)ざっと目を通してみると、ストーリーまるっきりいっしょ。でも、中島敦の方が、「虎になった理由」についてより詳しく語っています。理由は正確にはわかりません。あたりまえだけどね。
でも、李徴は人間だった頃の自分を振り返って思うの。詩によって身を立てようとしながらも、師匠についたり同好の仲間と交わったりすることをしなかった。それでいながら、身近な人たちを才能の乏しい俗物だと軽蔑してつきあうことができなかった。「己の珠にあらざるをおそれるがゆえに、あえて刻苦して磨こうともせず、また、己の珠なるべきを半ば信ずるがゆえに、碌々として瓦に伍することもできなかった」と李徴は思う。そうやって自分の中に「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」を飼いふとらせ、友人や妻子や自分自身を裏切り傷つけてきたがゆえに、外見までも虎のようなみにくいものになってしまったのではないか。ここんところでぼくは参ってしまいました。なんか、自分のことをいわれてるみたいで。
物語の最後で、草むらに身を潜めていた李徴は遠ざかる袁惨の一向にその身をさらします。もう二度と袁惨が自分に会おうという気を起こさないために、あえて凶暴で醜悪な虎の姿で朝の空に浮かぶ月に向かって咆哮するの。
ずっと昔に読んだ本です。ぼくにはその時から分かってたはずです。自分の中にも李徴と同じ虎がいることに。でも「臆病な自尊心」は今でもぼくの心の中で眠っています。自分を変えるというのは、なんて難しいことなんだろうか。
紙の本
リズム感
2000/08/16 03:49
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投稿者:katokt - この投稿者のレビュー一覧を見る
山月記の文章は、特に最初の「性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、 賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。」から漢文独特のリズムにのり、流れるように進んでいく。特に虎になった主人公の独白部分は一気に読ませる。詳しくは