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アイルランドを舞台にした警察官エーレンディル・シリーズ第2弾。
レイキャヴィク郊外の住宅開発地で発見された古い人骨。埋葬されたものなのか、それとも事件の犠牲者なのか。捜査官エーレンディルの地道な捜査が、過去の陰惨な事件に光を当てる──。
ストーリーは、人骨を捜査するエーレンディルと部下たち、エーレンディルと娘エヴァ=リンドの関係、ある家庭のドメスティック・バイオレンスの三つの柱で構成される。
特にドメスティック・バイオレンスの描写は陰惨極まりなく、読んでいて本当に心が重かったのだが、同時にいかに邪悪なものであるかを強く胸に刻まれる。
本来暖かいはずの家庭が牢獄と化した時、その中でなにが行なわれているのか、部外者から窺い知ることは難しい。本書の舞台はアイルランドであるが、日本でも同じような状況の家庭があることは、想像するだけでも嫌になるが現実だろう。社会全体で取り組みべき課題であることを強く認識させられた。
オススメできる社会派ミステリの一冊である。
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偶然見つかった古い人骨。
被害者の手がかりはなく。
捜査陣は当時を知るものを探し出し話を聞いていくが…。
『湿地』同様人間の痛みを描いているのだけれど、主に暴力のターゲットになるキャラクタが子供を守るという点において筋が一本通っている分だけこちらの方が好み。
どちらにしろ読んでいていい気持ちはしなかったけど。
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歴史と暴力、そして女性。インドリダソンがこの本の中で扱おうとしているのは、何も大衆的な受けを狙ったミステリーに限らない。人口30万人の北欧の平和な島国アイスランド。犯罪ミステリーにこれほどそぐわない場所はないと思われる舞台で繰り広げられるのは、今なお世界中で苦しむ人たちがいるドメスティックバイオレンスの問題を生々しくえぐる一つの事件。読んでいて心苦しいがページを追うその手を休められない。今年読んだ本の中でも間違いなく読む価値のあった一冊。
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評価の高いアイスランドのミステリ。
ある女性の過去の人生がさしはさまれ、捜査官エーレンデュルの人生にもある転機が訪れる。
印象深い作品です。
首都レイキャビクの郊外にある住宅建設地で、古い骨が発見された。
現場近くにはかって古いサマーハウスがあり、第二次世界大戦の終わる頃には、イギリスやアメリカの軍人が住むバラックもあったという。
捜査に当たるエーレンデュルらは、緑色の服を着た女性がたびたびその地に現れたという話を聞く。
一体何者なのか‥?
若い女性と幼い子供が夫に虐待される悲痛な現実が、挿入されていきます。
それがどこでどう事件と関わっていくのか‥?
あまり酷いので目を覆うばかりですが、作者が家庭内暴力を甘く見られがちなことに義憤を感じ、問題を明らかにしたかったようです。
暴力で命の危険にも晒されて、被害者は判断力を失ってしまう。拒否すればいいとか、家を出ればいいということで済むような問題ではないのだと。
エーレンデュル自身の幼い頃の悲劇と苦悩も明らかに。
若くして離婚、妻にはいまだに恨まれています。
そのいきさつと、音信普通だった間に壊れてしまった子供達の問題も。
娘エヴァ=リンドは妊娠していて、薬を減らそうと努力していましたが、家を飛び出します。必死に探す父親。エヴァ=リンドは危機に陥りますが‥
絶望的に見えた状況に奇跡が‥!
一筋の希望がともります。
この作品で、北欧ミステリの賞「ガラスの鍵」賞を連続受賞したばかりか、CWA賞ゴールドダガー賞も受賞しています。
邦訳2冊目ですが、シリーズとしてはもっと前から書き継がれているので、ずっと読んできた読者の感動はさぞかしと思わせます。
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アイスランドのミステリー。見つかった白骨遺体は誰なのか。時代をさかのぼって辿りついた真実と、鍵を握る緑衣の女。読むのがつらいほどDVのシーン、追い詰められる家族。でも読み終わって感じたのは母親の強さでした。前作、「湿地」よりも面白かった。
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ドイツに続いてアイスランドのミステリに挑戦。初アイスランドである。
人口30万、国土は日本の3分の1という平和な島国だそうだ。そのせいか?語り口はあくまで穏やか、淡々と…ながらに描き出しているDVのシーンは生々しすぎて訳者が訳すことをためらった、とあとがきで書くほど。
物語は、古い骨が建設現場で発見されたことから始まる。数十年も前のものらしい骨の主を警察官が捜して…。なにしろ事件は遠い昔の話なので、突然サイコパスが現れたり、あっと驚くどんでん返しが…ということもない。ドキドキハラハラがないのに、本当は何があったのか、どうしても知りたくなる。
けれど、警察官本人が送る悲しい人生(現在)と、数十年前の現場に住んでいた人々の人生(過去)が、骨がそっと土中から時間をかけて掘り返されていくのと並行して少しずつ明らかになっていく。
警察小説ということでミステリの範疇には入るのだろう。けれども単なる小説としても読ませる力のある作品だった。前作も読もうと思う。
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読み終わってからしばらく経ちますが、時たま本屋さんでこの本を目にすると悲しい気持ちが蘇ります。ミステリーというよりは一人の女性とその家族の悲しい物語です。読んでいて辛いという程ではないですが、それでもやっぱり悲しい気分になることは間違いないです・・・。
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2014/4 外国サスペンスは骨に執着するんだなぁ。日本の小説では人骨をこのような形で扱う小説は記憶にないけれど、外国小説やTVドラマでは骨にこだわる場面を何度か。
小説自身は重苦しいシーンが多くてあまり私の好みではありませんでした。
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決して同情できないと思えた怪物の様な人物の為に、泣いてしまった。一番哀れな存在だったようだ。
建設中の地中から発見された遺骨。数十年前の物語と現在とが交差していく。エーレンデュル捜査官の過去と現在も語られる。ゆっくりじっくり進んでいくけど、なぜかいらいらしないで読めた。一人一人の心に沿ってていねいに描かれているからだろうか。
一番弱々しいと思える緑衣の女性が、一番聡明で強かった。ラストのミッケリーナとシモン姉弟のスグリの実についての会話が、とっても胸に沁みた。
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女性や子供に対する暴力が、前作同様、あるいはそれ以上に生々しく残酷だった。そして、エーレンデュルの抱える家族の問題もまた根深い。
ストーリー全体を覆う残酷で痛ましい「家族」の在り方が、残された姉弟たちのラストシーンによって、わずかな希望を見る。主人公父娘の未来にもいつか救いがあって欲しいと願わずにはいられない。
真相を明らかにしていく作者の手法はなかなか上手い。一気に読ませられた。
でも、事件とは直接関係のなかった家族の扱い方や同僚警官(特にシグルデュル=オーリ)の駄目っぷりなど、アイスランド警察はこれでいいのか、と甚だ疑問。それとも、これがアイスランド的なのだろうか?
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北欧のミステリーは最近充実してますよね。
サクサク読める訳ではないけど、読み終えた後の感覚がなんとも言えない。
重かったけど、読んで良かった~って感じ。
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ミステリ好きが時間をつぶすにはいいけど、お薦めするほどではない。北欧ものには今昔並行語りが多いんでしょうか。奏功してる作品と、ただまどろこしいのとがあるなあ。
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シリーズ第三作の湿地があまりにも感動的な内容だったため、否が応でも期待が高まる。本作も上質のミステリをじっくりと堪能できる秀作だった。
発見された白骨体。いつ、だれが、だれに、どんな方法で、何のために。終盤近くまで解明されない謎の呈示と、同時進行で進む家族の物語の絡ませ方が実に巧い。
極めて現代的なテーマであるドメスティックバイオレンスの描写はリアル且つ執拗で、女性の読者には辛いかもしれない。
悲痛なカタルシスを伴いつつ掘り起こされた真実は、またしても過去と現在を結ぶ哀しい宿命に呪縛されてはいるが、すでに誰にもその罪と罰を問えるものではなく、幼く脆い小さな骨とともに葬られていく。
静謐な語り口と的確な場面転換、優れた観察者のみが可能な人間描写、魅力的なプロローグと深い余韻を残すエピローグなど、褒め出したらきりがない。
第一作からの翻訳刊行を望む。
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北欧アイスランドのミステリ作家アーナルデュル・インドリダソンによるエーレンデュルシリーズの邦訳第二弾。
本作では恐るべき家庭内暴力とそれに翻弄される家族が生々しく描かれる。その一方で主人公エーレンデュルの過去も掘り下げられ、現在の境遇がどのようにして出来上がったのかが語られていく。
事件は現在起きたものではなく、戦前から戦中にかけての時代に起きていて、同僚たちは興味を示さないのにエーレンデュルは事件の真相解明にのめり込んでゆく。
遺骨を掘り出すにしてもすごく時間をかけて行われ、実際問題として、警察にそれほどの時間的余裕が与えられるのかという疑念も湧くが、物語の面白さでそんな些細なことは忘れてしまう。
凄惨な暴力シーンが繰り返し描かれているが、作者も述べているように、現実に目を向けるためにあえて描いているという。被害者がどんな心境に陥って行くのかまでも描かれていて目を背けたくなるが、世の中のどこかで実際にこのようなことが行われているかもしれないと思うとやりきれない。
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偶然発見された人骨から戦時中の暗い事件が現代に蘇る。レイキャビックが舞台であり、とっつきにくい人名や過去と現在が縦横無尽に交差して語られる形式に戸惑うが、真実が浮かび上がってくるにつれて見事に引き込まれる。