紙の本
日本語ってすごい
2015/09/03 20:12
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:湯川 - この投稿者のレビュー一覧を見る
筆者のほかの作品と同様、自伝的な小説です。
私はどくとるマンボウ航海記を読んでからこの本を読んだので、印象の違いに驚きました。
この本は、筆者が経験したことが言葉の限りを使って表現されています。
言葉では表せない感情を言葉で的確に表してしまう。北杜夫さんのその巧みさと、文の美しさに終始引き込まれていました。
こういう文は日本語だからこそ表現できるのか、と思うと日本語はすごいなと感じる作品でした。
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投稿者:ポンタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
叙情的で、初々しい幼年時代を思わせる作品。これは文章だけを追っていても美しいというか、なんというか安らかな気持ちになれる作品。時代を経てもなお、読み継がれるであろう傑作。
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実は北杜夫はこれと「怪盗ジバコ」しか読んだことがない(苦笑)もともと家にあった本だから、たぶん叔母か母が買ったものだと思うんだけど。中学生のとき読んでガツンと頭をぶったたかれたような気がしたのを覚えてます。
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初めて読んだのが中学生の頃だったから、私も大概ませた頭でっかちのガキだったんだろう。
「死」と「人生」と「生きる」ということを繊細に、しかも美しく書いた本書の内容を当時どれだけ理解していたか怪しいものだが、それから何回読み返しても変わらず切なく、哀愁を帯び、そうして愛しい話だ。
安易に論評を加えるのは控えるが、「これ、読んでみろ」と差し出したい本の一冊である。
著者の(ほぼ)処女作といっていい時代に書かれたものだというのに、こんなにクオリティが高いのも驚きの種。
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美しい文体で、美しいモチーフを用いて、記憶をめぐる物語を描き出す。紡ぎ出された物語もまた美しいのは必然とも言える。
昭和初期、幼い少年の記憶で幕を開け、敗戦前後の高校生の追憶を中心にこの物語は語られる。
非個性的な彼の感覚を通して淡々と描かれる現実と非現実の世界は幻想的でもある。
他人の心を理解することが不可能である以上、「難解である」という感想はとても生まれやすい小説だと思います。山場もありません。それでも、その世界の美しさに、心を動かされます。きれいな文章です。
耽美よりの方、和風好きでかつ洋物に心惹かれるという方なんかにおすすめです。(H19.04.30)
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【本書より】「ママがそう言ったわ。気の毒な人にだけ、幽霊が住み込んじゃうんだって。あなたは気の毒な人だって」
彼女はまた笑った。まるで誰かに喉かなんぞをくすぐられたときのように笑ってみせた。
「僕も幽霊を見るよ」
「そう?」
少女はまじまじと、つぶらな、まだすこし虹彩のあおみがかった目を瞠いて、こちらを見上げた。どことなく、気の毒そうに。
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9月、図書館。
幻想としての死の美しさとか
暗闇の中でそっと息をひそめる若い魂の揺らぎとか震えとか
自然に対する息苦しいくらいの情熱と恍惚とか
1ページ1ページの観念の波に溺れそうになる…
没入して読んで、
自分の輪郭さえ曖昧になった。融けてしまう。
物語のほうから自分のほうに手が伸ばされて、
頬を包まれたり首すじの血管をそっと押されたりするような感覚。
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『楡家の人々』を一度挫折するも北杜夫に再挑戦して功を奏した一冊。
綺麗な文法と透明感のある文章に、時間はかかるも噛み締め噛み締め読む読むしました。大満足。
ライトで読みやすい本もよいですけど、ちょっとずつでもいいから味わいつつ読む小説も良い経験になるですよ。
少年の話なのにメロウってのが素晴らしい。これで100円!北杜夫鉄板。
後日、中央公論社S45年初版を斎藤茂吉と併せて買いました。
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辻邦生が、その柔らかい瑞々しい文体、文章に嫉妬した様に、やはり静かなその世界は彼(北杜夫)の最高傑作かもしれない。
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北杜夫さんも全集を、しかもうっかり愛蔵版を買ってしまったくらい好きです。
なにか一冊ならどれを選ぶでしょう。
「航海記」?
「楡家」?
「少年」?
いろいろ考えた結果、これだろうと。
身につまされるというかボクにとって追体験しやすい内容だったから。
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企画コーナー「追悼- Steve Jobs・北杜夫」(2Fカウンター前)にて展示中です。どうぞご覧下さい。
展示期間中の貸出利用は本学在学生および教職員に限られます。【展示期間:2011/11/1-12/22まで】
湘南OPAC : http://sopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1519482
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“ぼく”というある人間の心の中にある神話を語る、追憶の物語。彼の語る言葉は彼自身のものであって、決して読み手のものにはならない。繰り広げられるイメージも漂う匂いも手触りも、彼がありったけの言葉を以て伝えようとしているもの全て、似通っている所はあるとしても決して読み手の中の神話とは重なり得ない。けれど人が自分の記憶の奥底に沈む“何か”を追い求めようとするその衝動自体は、きっと誰しもが見覚えのある感情であるはずだ。大抵の人はその衝動を形として認識することはないし、その”何か”にたどり着く前に忘れ去ってしまう。しかし”ぼく”は手を緩めることなくその何かを追い求めついには手にするに至る。その全過程が、ここには執拗なまでに詳細に言語化されて刻まれている。
人の心を過去の記憶へと突き動かす感情の形を初めて知ったと思えた。この世のものは、名前を見つけて初めて人の眼前に立ち現れる。
個人の心の中の神話、それは決して過ぎ去った幸福の絵図などではない。それはただなぜか、その陰影のひとつひとつ、手触り、温度のようなもの全てをそのままどこかに刻印しておかなければと苦しい程に思い詰めずにはいられない、そういう言いようもない“何か”だ。人がその姿を捉えようともがく時、名前を付けることは出来ずとも、せめてその輪郭を何かに焼き付けようとして生まれる物語がこの世には多くある。そういうものを書く人、求める人の無意識の意識の流れを、この物語を通して初めて知ることができたと思えた。
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3日で読了。神話や昆虫の下りは若干読みにくい。
文章が情景的で美しい。幼き時の記憶は情景として朧げに浮かぶのだろう。
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(2002.12.28読了)(2002.03.17購入)
或る幼年と青春の物語
内容紹介 amazon
大自然との交感の中に、激しくよみがえる幼時の記憶、母への慕情、少女への思慕――青年期のみずみずしい心情を綴った処女長編。
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物語後半、主人公は少年期の記憶を思い出す。そのとき、読者も自分自身の少年期の記憶を思い出す、そんな美しい体験をもたらす、美しい小説です。