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インテリジェンスの眼から世界を語る60話
2007/07/06 14:37
8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:としりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、日刊経済紙「フジサンケイ ビジネスアイ」の連載コラム60回分を纏めたものである。
ロシア外交、対中国外交、対北外交から、在上海日本総領事館員自殺事件、北方領土、竹島、中東外交、自爆テロなど、2006年から2007年初頭までに起こった様々な案件について、インテリジェンスの専門家・佐藤優が分析し解説を加えているのである。
リトビネンコ氏暗殺事件についても語っている。リトビネンコ氏はモスクワの連続テロ爆破事件がチェチェン武装勢力の仕業ではなくロシア諜報機関の自作自演だとする本を出版した。この本がもとで暗殺されたとも噂される。ところが、著者によれば、この本の内容が事実でないことはインテリジェンス業界の定説になっている、というから驚きだ。では、著者の分析によれば事件の真相は意外?なところに・・・。
日朝秘密交渉によって拉致問題に風穴を開けたのは田中均氏である。彼は客観的に見て外交実績を上げたにもかかわらず、マスコミに交渉の細部を突かれ猛烈なバッシングを受けた。著者は田中均氏の能力を理解し同情を示しつつも、彼の外交姿勢に批判を加えている。が、田中均バッシングが外務省の不作為体質を蔓延させたとする分析に注目したい。
さらに、著者は現在の北朝鮮情勢とイラン情勢との絡みをも解説している。東アジアという地域的視点から北朝鮮情勢を見るのでなく、グローバルな視点が大変重要ということである。
さて、本書には日本外交の最前線に立つ政府・外務省高官も登場する。麻生太郎外相や谷内正太郎外務次官は、インテリジェンスの点からも著者にその能力を高く評価されている。その一方で、自己保身ばかりで無能な外交官も少なくない。その筆頭が某事務次官経験者(本書中では実名)だ。彼の在任中の日本外交は散々であり、外務省の基礎体力も低下してしまった。
ところで、ちょうど今、産経新聞がアメリカ議会の慰安婦問題の背後で暗躍するアジア系人物をレポートしている。彼ら反日アジア系米国人の急増は日本にとって脅威だ。そんな彼が、「ところで日本の諜報部隊はなにをしているのだ。ここに来たことはないな。」と冷ややかに言い放ったという。勝ち誇った気分なのかも知れない。極めて印象的なレポートである。
インテリジェンス(諜報)能力に欠ける国家は必ず衰退する。いや、悲惨な憂き目に遭う、と言ってもいい。インテリジェンスを扱ったノンフィクション「戦争広告代理店」は衝撃的な書である。
だが、佐藤優は、日本にはインテリジェンスの資質がある、と言う。悲観すべきではないのだが、まずは国民の意識の向上が不可欠である。
その点では、最近インテリジェンス関連の書籍が目立つようになったのは好ましいことだ。
本書は一話一話は簡潔なものだが、インテリジェンスの観点から世界を見る眼を養うには良書と言える。
こうした本が注目され、国民の意識が啓発されることによって、国家の諜報組織が強化されなければならない。それが将来の平和と繁栄への道なのである。
伯楽は常には有らず琴桜。
2007/08/20 07:11
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:和田浦海岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2007年の7月25日。
関脇琴光喜の大関昇進。その伝達式の様子がテレビに。佐渡ヶ嶽親方夫婦の真ん中で、使者に対し琴光喜は「いかなる時も力戦奮闘して相撲道に精進します」と口上を述べます。そこで気になったのが、口上を述べる琴光喜の背後に、椅子に腰かけている元佐渡ヶ嶽親方(元横綱琴桜)がいたことでした。
ちょうどその日の読売新聞夕刊では、「31歳3か月での新大関は、年6場所制では増位山の31歳2か月を抜いて最年長昇進となった」とあり。記事の最後に「元横綱琴桜の先代師匠は、『自分が昇進したときよりもうれしい。やめてしまえと言ったこともあったが、よくやった』と喜んでいた。」とあります。琴光喜を自ら育てた琴桜自身はといえば、横綱に昇進したのが32歳1か月のときで、これも年6場所制では、今でも最高齢として残っているそうです。
さて、それからひと月もたたない8月15日に、元横綱琴桜(66歳)の死去の記事。
ここに、産経新聞の小田島光氏の記事を引用してみます。
「・・・色紙には『前進』『努力』などの言葉を好み、一直線に突進する正攻法の相撲は『猛牛』の異名をとった。幕内優勝5度。華やかな横綱ではなかったが、現役を去ったあとも相撲一筋だった。周囲の親方も認めるスカウト名人。生まれ故郷である鳥取県をはじめ、全国津々浦々に足を運び、相撲を志す少年たちに声をかけた。相撲を全国に普及させた角界の貢献者といってもいい。指導者としての手腕も見事だった。琴風、琴錦、琴富士らを育て、一時は【七琴】を幕内に抱えたこともあった。・・・平成17年11月に定年退職。のちに部屋は娘婿となった琴ノ若に譲り、相談役となった。現役のときは腰やひざを痛め、親方時代には壊疽(えそ)により左足を足首から切断。故障や病とも戦った。厳しく、そして粘り強く。66歳。その相撲人生は、猛牛のごとくいちずだった。」
ちなみに、読売新聞の【評伝】では「先代佐渡ヶ嶽親方 感情豊かな名伯楽」と題しておりました。
伯楽といえば、漢文ですね。
「千里の馬は常には有れども、伯楽は常には有らず」という
名馬を見抜く伯楽はいつもいるとは限らないという韓愈の説。
その伯楽で、最近思い浮かぶ言葉というのがあります。
今回紹介する佐藤優著「地球を斬る」の中の
「日本のインテリジェンス能力」と題する文でした。こう始まります。
「インテリジェンス(情報)能力は当該国家の国力から著しく乖離(かいり)することはないというのが筆者の持論である。GDP(国内総生産)が世界第二位の経済力を誇る日本のインテリジェンス能力が極端に劣るはずはない。本来、インテリジェンスは国家の任務なので、国家機関がその能力を集約する必要がある。だが、現下日本の状況はそうなっていない。民間にインテリジェンスが埋れたままで、国益に直結しない事例を筆者は現役時代に多々見てきた。・・・」
ところで、読売新聞の【評伝】を引用するのを忘れておりました。それは同部屋の琴欧洲のことから書き始められておりました。その文の最後を引用して終ることにします。
「『欧洲、欧洲』とかわいがった当時、『あんなやつはもう忘れた』と琴光喜にわざと冷たく接した。あれから2年。31歳の琴光喜が名古屋で発奮、退職した師匠の思いをかなえた。場所前の言葉は『最後のチャンスだな。あいつが男になるのか、このまま終わってしまうのか。そっと見ていることにした』。名伯楽の目に涙が光っていた。」(三木修司)
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