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「優しいサヨクのための嬉遊曲」
愛する女の向こうに敵がいて
愛する女のためにそいつと和解する
ラブアンドピース、しかしそれによって押し殺された感情もあり
いつかゾンビのようによみがえってくるのかもしれない
その不安が、プロレタリアへの嫌悪ともなる
「亡命旅行者は叫び呟く」
努力すればかならず報われるという信仰があって
それゆえに貧乏人への嘲笑が正当性をもっていた時代
むなしい頑張りでむなしくすり減った人間性を回復させるため
休暇を利用して女を買おうとソ連に旅立つ日本人の話
当時の貧乏なモスクワ市民は
まさしくかつての日本人…エコノミックアニマルの群れだった
むしろそこに「私」を捨ててきた彼は
その罪深さを、追いかけてきた「私」に断罪されたあげく
結局、お茶漬けナショナリズムで癒されるという
「夢遊王国のための音楽」
無教養ではないが上昇志向が強く、無駄に気位の高い中流家庭に育ち
頭がおかしくなりかけている男の子の話
まだパソコン通信も一般的には認知されてない時代だが
「秘密結社」という形で、引きこもりの連帯を夢想している
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ストーカー男と彼が所属しているヘンテコなサヨクサークルの面々の話の「優しいサヨクのための喜遊曲」,日常から逃げ出したくてロシア旅行に行ったさえない公務員の話の(解説で東南アジアの買春ツアーに出かける日本人のカリカチュアとされている)「亡命力者は叫び呟く」,いつも監視されていると感じている,現実と妄想の区別が曖昧になっている外交官志望の男の話の「夢遊王国のための音楽」の3本立て.3本の中では「夢遊王国のための音楽」が一番よかった.
下巻はどうするかなー.
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島田雅彦氏の初期作品を読みたくて購入。
読み始め:2023/01/21
読み終わり:
本作品集には以下のものが収録されている:
1.優しいサヨクのための嬉遊曲
2.亡命旅行者は叫び呟く
3.夢遊王国のための音楽
これにまえがきと海猫沢めろんによる解説が付いている。
1は自身が東京外大在学中に現在の奥様をナンパしたときの体験をベースにしていると思われる作品。当時の「サヨク」の気分がうまく表現されている。
2はソ連に旅行した話