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橋から眺める道頓堀の光芒が目に映る様だった。朝陽を浴びた寂しげな街並み、ネオン輝く夜の歓楽街。川には歴史があり、そこで暮らす者にも人生がある。男の過去への後悔が川の濁りに似ている。歓楽街の光彩は過去を照らすが、決して未来は照らさない寂しさも孕んでいた。
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著者の初期を代表する「川三部作」の三作目。昭和42年、高度成長真っ只中の大阪道頓堀川が舞台。両親を亡くした大学生安岡邦彦は、喫茶店リバーで住み込みで働きながら大学に通っている。リバーのマスター武内鉄夫は、かつて玉突きに命を賭けていたが足を洗い、息子の政夫が玉突きにのめり込んでいるのを快く思っていない。玉突きで生計を立てていきたい政夫はかつて伝説の玉突き師だった父親に勝負を挑む。
「泥の河」では小学生、「螢川」では中学生の視点から世の中を見つめていたが、「道頓堀川」では主人公が大人で人生の悲喜こもごもの当事者になっている。
邦彦は大都市に暮らす人々をどこか覚めた目で見つめている。就職先を決める時期が近づいているものの現実には閉塞感が漂っている。全体的にモノトーンで淡々と日常の話は進行していくが、当時の時代や人々の息づかいが感じられるようにすっかり世界に引き込まれた。
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味わい深い作品でした。
邦彦の青春、武内鉄男の人生、二人を取り巻く道頓堀川界隈で生きる人々。
鉄男と息子政夫とのビリヤードでの対決。
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戦後間もない頃の昭和、大阪という土地柄を色濃く感じました。
道頓堀川の濁りのように、一人一人の人生にも何かしらの濁りがある。道頓堀川界隈に暮らす人たちの人生の営みが描かれていました。
歓楽街の猥雑でがちゃがちゃした感じは、うるさいのになぜかホッとする部分もあり、読みながら一人一人が抱える“苦難”や“人生の営み”みたいなのものを感じて、しんみりした気分になりました。
個人的に、ちょっと性的な描写が多いなぁという気がしたけど、それも含めてこの作品の味わいになっている。
喫茶店店主の武内、武内の息子・政夫、住み込みで働く邦彦。また、彼らに関わりのある人たち。
他作品でも感じたけど、宮本輝さんの作品で描かれている“人間臭さ”がいい。
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以前映画で観た作品なので、自分の頭で描く情景だけでなく映画のシーンが重なる。
それは自分の中での創造を邪魔するものではあるけれど読書の道案内的なサポートにもなるものだな。リバーでアルバイトをする邦彦のまわりの人間模様が哀愁を帯びて描かれるのだけれど彼らの不安定な生き様を俯瞰するように読み味わえるのは自分自身が彼らよりは安定した楽な状況にあるからだろうか。